26:痛いじゃないのよ
後の事は教会の皆さんに任せて、家へと返って見ればニクス兄さんがゲッソリとしていた。
「どうしたの・・・」
「いや心配で眠れなかっただけだ・・・」
「なるほど・・・」
そんなに心配しなくてもいいと思うんだけどと思って居たらクィーンがコッソリ教えてくれた。
(寂しくて眠れなかったのよあれ・・・)
ぐはっ、寂しくて眠れないとかおこちゃまかっ!と思ったけど口にはしないよ?
寝袋持って厩で皆と寝ただなんて聞いたら、ねぇ?
バパールおじさん達は大丈夫だったのかな。
心配だけどさすがに様子を見に行く事は難しいからね。
きっと大丈夫だと信じよう。
その後は平穏な日々を過ごして居る。
ニクス兄さんがため込んでいた3日分の洗濯物を洗ったり、厩の掃除をしたり。
毛皮をなめして処理したり、爪や牙でアクセサリーを作ったり、交換で手に入れた木彫りの狼を磨いてみたり。
生活必需品ではないけどさ、狼って好きなのよね。
動物園でも何時間でも見て居られるくらいに好きだ。
実際に触れ合うとかは無理だし、じゃぁウルフドッグでも飼えればと思ったけどお高かったのよ!
アラスカンマラミュートは?と思ったらこちらもお高かったので諦めたのだけどね。
ここでならいつか飼えるかもと少し期待している。
そんなある日、目覚めたら枕元に手の平サイズの肖像画が5枚置かれていた。
私の両親、飼っていた猫、娘が抱いているのは・・・孫?
ぅわぁ、娘が赤ん坊の頃にそっくりだわ。女の子かな?
違った、七五三の絵は袴履いてた。最後の絵は成人式? え?これ孫の成人式?
え?え?えぇぇ・・・早くない?
『遅くなってしまい申し訳ありません。
描き上げる間にお孫様がどんどんと成長なさいまして
時間が掛かってしまいました。
この世界とでは時の流れ方が違うようです。
なるべく似せて書いたつもりではありますがこれが私の精一杯でした』
添えられていた手紙にはそう書いてあったが十分似てるし凄いと思う。
と言うか孫の成長見守って成長した絵を描いてくれたの?
アリェーニャ様ありがとうございます!とても嬉しいです。
きっと手の平サイズなのはイザって言う時に隠しやすいようになんだろう。
持ち運ぶにしてもこの大きさなら苦労せずに済むしね。
どこぞのアンポンタンとは大違いだよと気遣いに感謝する。
朝食後にニクスさんにも絵を見せる。
「こちらのお二人がご両親か。
縁があり私共と家族になりました。
見守り、共に過ごして行きますのでご安心ください」
律儀に挨拶してくれている。
両親共猫が好きだったけど猫アレルギーで飼えなかった。
きっと兄さん達を見たら大喜びだったんだろうな。
「これがリュンの娘と孫。似ているな。
ふふっ、目元などそっくりではないか。
ん? これが孫の成長した姿だと?! 成長が早いな。
リュンはその眼で孫の成長を見守りたかったのだろうな・・・」
「そうだね、見守りたかったかなぁ。
でもほら、アリェーニャ様が絵を描きながらも見守ってくれてた訳だし。
こうやって元気に成長した姿見せてくれたから、それで満足しておくよ」
「そうか・・・」
孫の姿なんて見れないと諦めていたからね。
ちゃんと額縁にまで入れてくれてたんだもの、心から感謝するわよ。
この絵は寝室に飾っておく事にした。
これで絵を見ながら語り掛ける事も出来る様になったし、両親や娘の顔を忘れる心配も無くなった。
春になったら教会へ行ってお礼を言わないとだね。
風も無く雪も降っていない比較的穏やかなこの日、とはいっても氷点下だけど!
私達は屋根の雪下ろしと煙突掃除をする事にした。
この町だと雪の量が多いから、何回かは雪下ろしをしておかないと屋根が傷んでしまうらしい。
煙突もこまめに掃除しないと煤が貯まってボヤ起こしたりするからね。
元の世界の義実家でボヤ起こした事があったのよ・・・
義祖母が亡くなってから煙突掃除したことがなかったらしい・・・
何やってんですかね姑さん!煙突掃除くらいしなさいよ!と思ったけど姑は他力本願な人だったからね・・・
ボヤの件からは薪ストーブ禁止でエアコンと灯油ストーブを併用するようにさせたけども。
まぁそうならないように、ちゃんと煙突掃除はしないとね。
この世界には灯油ストーブもエアコンも無い訳だしね。
屋根の雪下ろしとか煙突掃除って滑りそうで怖いと思ったのに、マクラクが優秀過ぎた。
滑らないのよ!凄いねこれ。 これなら雪道を歩くのも安心かも!
一応は命綱も付けてるわよ? 万が一にも滑ったら怖いからね。
骨折したって医者が居ないし、居たとしても添え木当てるだけとかな気がするんだよ・・・
だから予防策はしっかりとって怪我をしない事が一番だと思うんだ、油断大敵って言うしね!
雪下ろしをしているとすぐに体はポカポカと温かくなってくる。
上着を脱いで汗をかかない様にしなければ、すぐに汗が凍ってしまうからね。
アノガジェを脱いでパルカになる。
黙々と作業をしていれば ボフンッと音がして黒煙が上がる。
何事かと思えばマンガかコントの様に真っ黒な顔になったニクス兄さんが咽ている。
ぶふっ。何してるのニクス兄さん・・・
煙突の掃除ブラシが途中で引っかかって、思い切り引っ張ったらこうなったって?
笑わせないでもろて・・・
思い切り笑って空気吸い込むと肺が冷えて痛いんだからさ。
ニクス兄さんは雪で顔の煤を払っていたけど、冷たくないのかな・・・
興味本位で私も雪をすくって顔に当ててみる。
あれ?思ったほど冷たくな・・・
「◎&$&¥★〇△■◆●▼□#※★!」
キーンッってなった!痛いじゃないのよ!
あぶなっ、凍傷になったらどうするのよ、興味本位でやるんじゃなかったわよ。
屋根も煙突も掃除が終わった頃にはすっかり日が傾いていた。
腰を伸ばすとベキベキ音がする。
暖かい物を食べて夜はのんびりしようと思う・・・
極夜が始まった。
日が登らず24時間真っ暗な状態が2週間続くらしい。
真っ暗とは言え月や星は綺麗に見えるし、時々オーロラなんかも見える。
娘ー! おかん人生で初めて雄大なオーロラ見てるよ!
凄いよ、めっちゃ綺麗だよ!寒いけど!
おかんが今居る所ってさ、空気が綺麗だから星空もめっちゃ綺麗なんだよ!
きっとアンタも見たら感動するよ!寒いけど!
読んで下さりありがとうございます。
画像はAIイラストで作って見ました。




