第12話 そっち方面の趣味も合うみたい
「それでは渚橋さん。自己PRをお願いします」
「はい。小生の軍歴は、正規軍で少尉として現場指揮をとった所から始まりました。除隊後は、傭兵稼業として中東やアジアの独立戦線等で従軍。歩兵から狙撃手、マシンガナー、破壊工作部隊まで一通り経験しています。帰国後は、主に男性警護を行ってきました。また、裏では敵対勢力への隠密の荒事も担ってきました。こちらが当時の写真記録です」
「なるほど。経歴としては十分ですね」
俺の家の学習机で、面接官よろしく座る荒崎さんが、履歴書と写真を手に考え込む。
なお、面接官は3組学級委員長の荒崎麻衣さん。
荒崎家は名門の家であり、前回、婚約者の家である寝室家が俺に対してやらかした時に、一緒に詰め腹を切らされた気の毒な家でもある。
つまり、荒崎家は俺の素性についてもある程度把握しているので、今回、渚橋さんの再就職先として斡旋したのである。
「あの……どうでしょうか?」
「正直、橘様から推薦されている時点で、合格以外の選択肢は無いのですが、中々どうして有能な人材ですね」
でしょ~。
正直、荒崎さんに押し付ける気満々だったんだけど、普通に渚橋さんが優秀なので問題なさそうだ。
「それでは渚橋さん。今日から、荒崎家の護衛の一員として働いていただけますか?」
「はい! ありがとうございます!」
荒崎さんと渚橋さんとの間で握手が交わされる。
よし。
これで渚橋さんについては一安心だ。
「それで、先ほどから気になっていたのですが、渚橋さんは、橘様の情婦なのですか?」
「ぶふっ⁉」
「ああ、正直に仰っていただいて結構です。私は橘様のブタなので、むしろその事実すら興奮材料といたしますので」
理路整然とブタの矜持を語る荒崎さん。
流石は、中身アラサーの俺と渡り合って、婚約者の大事な所を護っただけの事はあるな。
「そんなんじゃないって。あ、そういえば、渚橋さんは寝室家の元私兵だったんだけど、その点は荒崎家的には大丈夫なの?」
「寝室家? 知らないですね」
え?
「いやいや。荒崎さんの婚約者の家でしょ。寝室家が解雇した兵を雇うなら話を事前に通しておいた方が」
「私に婚約者なんて居ませんから、そんな必要はありません。お心遣いありがとうございます橘様」
「お、おう……」
土下座までして護った寝室家との婚約が無しになったというか、過去ごと無き物に……。
これぞ上流階級の闇というのを、荒崎さんの笑顔から垣間見る俺。
男の恋愛遍歴は名前を付けて個別ファイルで保存するけど、女の人の恋愛は上書き保存とはよく言ったものである。
「そういえば、橘様と渚橋さんはどういった馴れ初めで?」
「馴れ初めって……」
「恥ずかしながら、小生をなす術なく身動きできなくされた後に、下腹部に衝撃を与えられたのが馴れ初めです」
「だから、渚橋さん、言い方……」
いや、俺がやった事に違いは無いんだけどさ。
そんな事を言ったら流石に、荒崎さんも引いて。
「い、いいな~! え? 下腹部への衝撃ってやっぱりグーでですか?」
「いえ、銃の模擬弾を至近距離で受けて嘔吐しまして」
「銃で! な、何を準備すればいいんですか?」
「ええと。非殺傷用の弾丸と、薄手のアーマーを使って」
あ、あるぅぇぇぇぇえええ⁉
何かガールズトークが凄く盛り上がってるな~。
でも、話してる内容がちっとも可愛らしくないぞ。
「橘様、私には手を出さないのに、なんで渚橋さんには容赦ないんですか? プンプンッ!」
「うん……。取り敢えず、そっち方面の趣味も合うみたいだから、荒崎さんに渚橋さんを紹介した甲斐があったよ」
できればラブコメ的には、裸ワイシャツの女性が家に転がり込んで来てる所に嫉妬してくれた方が、可愛かったんだけどな……。
っていうか、女を殴らない事でお叱りを受けるんだ……。
つくづく、荒崎さんは手遅れだな。
まぁ、一先ず渚橋さんを押し付けることが出来て一安心。
でも、このペアを引き合わせたのは、果たして本当に正解だったのか……? とも思う俺であった。
出会ってしまった2人。
ブックマーク、★評価よろしくお願いします。
励みになっております。




