第11話 その辺のか弱い女の子と一緒じゃん
「入っていいよ渚橋さん」
「あの……小職のような日陰者が男性様のプライベート空間に立ち入るなんて……。やはり、小職は軒先で」
俺の家の前で、まごまごする渚橋さん。
百戦錬磨の女傭兵なのに、いざ男の家に来たら怖気づくのカワイイ。
「ほらほら。これから採用面接なんだから、ちゃんとシャワー浴びて、服も洗濯しないと」
「そんな。傭兵稼業なら偵察行動のために、1か月風呂に入らないのは普通で」
モジモジしているお姉さん傭兵は、相変わらず常識が世間とズレているご様子である。
面接までそんなに時間が無いから、急がないと。
「はいはい。じゃあ、紹介者の俺の顔を潰さないように、綺麗キレイしましょうね」
「あ、そんな……」
やや強引だが、俺はまごつく女傭兵を家の中に連れ込んで、脱衣場に直行して服を脱がせる。
あくまで急いでるからだからね。
決して、俺がお姉さんを脱がしたい訳ではないからね。
あ、でも。風呂にお湯が貯まるまでは少し時間がかかるよね。
だったら、楽しまなきゃ。
「わぁ! 流石は軍人さん。鍛えこまれてるね」
先ほどから残念な発言の目立つ渚橋さんだが、流石は私設武装組織の現場リーダーを任されていただけあって、その身体は無駄のない筋肉に覆われていた。
スポーツタイプのブラとショーツから覗く上腕三頭筋や腹直筋、大腿四頭筋の筋は美しかった。
そして、その綺麗な身体には。
「あ……。お見苦しい物を見せてしまい、申し訳ありません……。傷だらけで……」
慌てて渚橋さんが、脱がされたブラウスで身体を隠して縮こまる。
彼女の身体は、至る所に、切り傷や銃創、火傷痕があった。
「ううん、見せて。紹介者として、こういう所もキチンと把握しておかなきゃいけないから」
「そ、そんな……」
「ほら、手をどけて」
無論、紹介者云々はウソである。
ただ俺が見たいだけである。
「うう……」
自身の身体を、舐めまわすように見られる俺の視線に耐えられないのか、渚橋さんが目をギュッとつぶってカタカタ震えている。
気丈なお姉さん軍人が怯えてる姿って、なかなかクルものがあるなぁ。
「この肩の傷はどこで負ったの?」
「あ……そこは……中東で偵察行動中に待ち伏せしていたゲリラの狙撃を受けて……」
「じゃあ、こっちの二の腕の傷は?」
「はふっ……! そ、その傷は、男性の警護中に鉈を振り回す暴漢から護るための防御創で」
「脇腹のこの火傷は?」
「ひゃっ♡ そ、それは拷問で……ひゃひっ♡ 指先でイジイジしないで♡」
「ふーん……」
次々に傷痕を指先でなぞり、よがる女傭兵の声は無視する俺。
脱衣場には換気扇の音と、女傭兵の上げる嬌声だけが響く。
そして、最後に首元にある傷には特別に。
(ペロッ)
「ワヒャッ⁉ そんな汚いですよ」
「ん~? 傭兵は任務のために1か月くらい風呂に入らないのは平気なんでしょ?」
「だからって、貴重な存在である男性がそんな、汚い女傭兵の身体を嘗めて……」
「口ではイヤイヤ言いながら、全然抵抗する力が弱いんだよな~。女傭兵のくせに、その辺のか弱い女の子と一緒じゃん」
「だって、こんな風に男の人に触られるのは初めてで……。それに、私の傷を見ても気味悪がらないだなんて……」
うん。
一人称の『小生』が取れて『私』になったな。
「だってカッコいいじゃない。この傷は、渚橋さんが誰かを護るために負った物だから。勲章みたいなものだよ」
「勲章……」
「そのキズを負った意味すら知らない奴のために闘い続けた渚橋さんはカッコイイよ」
「カッコイイ……」
「まぁ、こんなガキに弄り回されてトロけちゃうようじゃ、傭兵としてはまだまだだけどね。カワイイんだから」
「あ……♡」
ふむ。
反応を見るに、渚橋さんは、カッコいいと言われるよりはカワイイと言われる方が好きみたいだ。
今まで傭兵稼業で気が張ってた反動かな。
『お風呂が沸きました』
「ほら。俺がいっぱい舐めちゃったから、ちゃんと綺麗な身体になってきな」
「ふぁい……♡」
ようやく沸いたお風呂にとろけた女傭兵を送り出すと、俺は渚橋さんが着ていた服や下着たちを洗濯機に放り込んでスイッチを入れる。
これでヨシッと。
(ピンポ~ンッ♪)
ちょうど一仕事終えた所に、タイミングよく客が来たようである。
『ハァハァ……飛んで来ました。橘様』
マンションの玄関ロビーのカメラスピーカーに、荒い吐息がかかる。
「よしよし、イイ子だ。すぐに上がって来い」
「ブヒッ♡」
嬉しそうに鳴き声を上げたブタが、玄関ホールのロックを解錠したと同時に駆けていくのが、まだ切れていないインターホンのスピーカーから聞こえるのであった。
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