第2話 ボクと一緒に食べるのイヤ?
「よっす晴飛」
「あ、あれ? 知己くん。なんで昼休みに?」
男子専用ルームに入ると、一人でポツンと座ってバゲットサンドを齧っている晴飛が中に居た。
相変わらず、男にしては少食だな。
そんなパン一個で足りるのか? と思いつつ、俺は皆から持たされた弁当詰め合わせタッパーをテーブルに置いた。
「ああ。その予定だったんだけど、またもやクラス入替え戦を挑まれてな。そのせいで、また緊急会議ですわ」
「えぇ⁉」
晴飛も初耳だったらしく、昼食を摂りながらクラス入替え戦の要領改定と、またもやその準備のために2組の女の子たちの皆は鍛錬に余念がない事を話す。
「そうだったんだ……。でも、連戦で大変だね」
「まぁ、そこは今回は多々良浜さんが学園側に粘ってくれたみたいで、5組とのクラス入替え戦は、期間を空けてくれと交渉したみたいだ。具体的には、1年のクラスお泊り合宿の後に開催って事になったらしい」
学校側も、ルールを一方的に改定した直後だという所に多少の負い目を感じていたのか、この要望は聞き入れられたとのこと。
「そうなんだ」
「ちなみに、この交渉を学校側にする時に本来窓口になるべき我らがクラス担任のエッちゃん先生は、晴飛も御存知のとおり、先のクラス入替え戦の打上げのカラオケで、はしゃいで振り付きで歌った時にギックリ腰になったから、多々良浜さんが一人で交渉したらしい」
「ああ……」
エッちゃん先生がJK時代に流行ったアイドルの曲をノリノリで歌って踊って、場が最高潮に盛り上がった直後の惨状を思い出しているのか、晴飛も苦笑する。
しかし、多々良浜さんはカッケェよな。
急なルール改定に動揺せずに、一人で学園側と対峙して交渉して。
それに引き換えエッちゃん先生は……と言いたいところだが、ギックリ腰はマジで動けないからしょうがない。ああいうのは、日ごろの疲れや無理が蓄積してなるものだし。
後でお見舞いに行こう。
「という訳で、例によって俺を警護している余裕が無いという理由で、こうして昼休みは男子専用ルーム送りという訳さ」
「そういう事だったんだね。でも、ボクはこうして知己くんと一緒にまたお昼御飯が食べれて嬉しいな」
そう言って、晴飛が笑いかけてくる。
相変わらず女の子に見まがうようなカワイイ顔してるから、そうやって満面の笑みを向けられると、図らずもドキッとしちゃうんだよな。
「まぁ、ボッチ飯にならなくて嬉しいって事だな。うん」
「ううん。こうして、知己くんの事を独り占めできるのが嬉しいんだよ」
「そ、そう……」
茶化して躱そうとしたんだけど、晴飛に回り込まれて、真正面から言われちまった……。
何か最近、晴飛からの愛が重い気がするんだよな。
いや、男同士で何言ってんだって感じだろうけど、これは良くない傾向な気がする。
前世でもよくあるパターンだ。
ついつい、野郎友達同士で遊ぶのが楽しくて、彼女が出来ても放っときっぱなし。
休日にデートに行こうと誘われても、男友達と遊ぶ約束を優先。
『じゃあ、お前も一緒に来れば?』と男友達との遊びに彼女を連れて行くが、いざ遊びだしたら、彼女の事は放っておいて、男友達とばかり喋ったり遊んだりして愛想をつかされる。
はい。
前世の俺ですね……。
思い出すと、本当に当時の彼女には悪い事したなって思ってる。
だからこそ、晴飛には失敗してほしくないのだ。
「あのさ。晴飛はたまには1組の女の子とランチした方が……」
「……知己くんは、ボクと一緒に食べるのイヤ?」
途端に、晴飛の顔が曇る。
う……。
そんな捨て犬みたいな顔で見るなよ。
考えてみれば、この男女比1:99の世界においては、彼女を作るより男友達を作る方が難しいんだよな。
そういう意味では、ある程度は晴飛が俺に執着するのは分からんではない。
とは言え、このハニ学のゲームの世界で晴飛のフォローをして、ヒロイン達との仲を後押しするのが俺の役割である。
実は、銃器をいくつも隠し持たせているヤベェ家である橘知己の家からのプレッシャーもあるし……。
「イヤじゃないさ。だけど」
「じゃあ、良かった。さ、食べよ」
『もっと、クラスの女の子と仲良くしておかないと』と言いかけた所を、晴飛はこの話題は終わりとばかりに言葉を被せて、ランチ用のバゲットサンドを頬張り始めた。
うーん……。
1組の女の子たちは相変わらず、内紛続きなのかな。
だから、ホッと一息つきたい男専用ルームでは、晴飛は女の子の話をしたくないのかもしれない。
そういや、バゲットサンドしか食べてないけど、これもよく考えたらおかしい。
男は、クラスの女の子からお腹パンパンになるくらいお弁当を持たされるはずだが、このバゲットサンド、多分晴飛が自分で用意した奴だよな?
──うーん……。1組の内部事情は、俺が思った以上に悪いのかもしれない。ただ、これから、あの子が来るしな。
どうしたもんかなと悩んでいると。
「晴飛さま~! 観音崎晴飛さま~‼ いらっしゃいますか~!」
男専用ルームの自動施錠され、そこそこ防音処理が施された扉を貫通する、甲高い声が響いた。
──うわ、来ちゃったよ……。
扉の向こうに誰がいるのか、瞬時に分かった俺は、更に気が重くなるのであった。
花粉症しんどい。(特に更新する朝の起き抜け)
けど、やっぱり投稿って楽しい!
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