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第45話 た~ち~ば~な~く~ん~!

「ご……ゴメンねみんな……。負けちゃった……」


 2組の選手控室は、さながら甲子園で敗れた学校の控室がごとき、地獄の様相を呈していた。

 人目を憚らず泣いて、ただただ謝罪の言葉を述べる2組の知力部門の選手たち。


「参謀なんて格好つけてたくせに、私……わたし……」

「大丈夫ですよ絵里奈ちゃん……」


 特に、知力部門の部門長を担っていた三戸さんは、すっかり憔悴しきって床にへたり込んでいる。

 それを、多々良浜さんが寄り添って慰めている。


 まるで、最後に痛恨の失投をしたエースピッチャーを主将が慰めてるみたいな……。


 って、そんなどうでもいい事を考えている場合じゃない。



「みんなゴメン! みんな、俺のために頑張ってくれてたのに、当の俺が台無しにしちゃって!」



 まさかだった。


 ただ観戦していただけで、選手たちがあんな事態になるなんて夢にも思わなかったが、そんなのは言い訳にもならない。


 でも、俺に責任がある以上、俺には90度以上に腰を折る深々とした謝罪くらいしか出来ることがなかった。


「橘君のせいじゃないよ……。ただ、私たちの精神修養が足りなかっただけで……」

「直前期に、自分たちを追い込むために橘君断ちしたのが仇になったか……」

「頭を上げて橘君。そんな、男の子が女の子に軽々しく頭を下げるもんじゃないよ」

「そういう所が橘君だよね」


「うん……」


 そして、決してこちらを責めてこない2組の女子たちに諭されて、俺は頭を上げる。


 男女比1:99で男にとことん甘い世界だからこそだが、この時ばかりは、その優しいだけの世界が痛かった。


「それにしても、3組の学級委員長の荒崎さんは凄かったね」

「あの状況で、あんな高得点を叩き出して」

「実質、彼女一人にやられたようなもんね……」


 発表された知力部門の採点結果が、控室のモニターに大写しされているのだが、1位はぶっちぎりで荒崎さんだった。


 本来、このクラス入れ替え戦での知力部門は、各クラス参加選手の上位5人の得点を合計したもので争われる。


 だが、今回は例の鼻血騒動のせいで、2組も3組も軒並み選手は血の海に沈んで、そもそも完答できた者は荒崎さんだけだったようだ。


「あんな状況でも、この点数……。正直、知力部門のエースの私が万全の状態でも勝てたか怪しいな……」


 ようやく泣き止んだ三戸さんが、開示された点数を眺めながら呻く。


「荒崎さんは3組男子の寝室君の婚約者で、敢えてクラスを落としていたとの噂です」

「実質2組の上位か、下手したら多々良浜委員長みたいに1組レベルの学力の持ち主だったか……。やられた……」

「だったら何で荒崎さんは、クラス入れ替え戦を本気で勝ちに行ったんだろう? 出場はしなきゃだけど、本当にクラス入れ替え戦で3組が勝っちゃったら、クラスの男子が変わっちゃって困ったことになるのにね」


 そこは俺も疑問なんだよな。

 前日に色々とあったからメンタル面だって万全には程遠い状態だったろうに。


 家からも何も言われていないのかな?


「とにかく、私らにはもう後がない。ここは勝ちを是が非でも取ってくる」

「よろしくお願いします久留和さん」


 体力部門の部門長の久留和さんが先陣を切って立ち上がる。


 長身の久留和さんは体操着姿でもカッコいいな。

 そして、この体操着だが……。



 ───あかん……。俺のせいで2組は崖っぷちなのに、どうしても目がいってしまう……。



 今は、バトル物で言えば非常に重要な局面である。

 勝って命をつなぐか、負ければ敗北者へ転落する瀬戸際だ。


 なのに、俺って奴は……。



 ───でも、ハニ学の体操着って本当にエロいんだよな。



 ハニ学の体操着は体操着と言うよりも、、むしろ下着に近い。

 前世で有名だった某セクシースポブラブランドのような形態で、肩や胸はもちろん、ヘソや腹筋も丸見え。


 そんなほぼ下着か水着みたいな格好に合わされる、防御力0の膝上ニーハイソックス。

 ちなみに、体操着とニーハイソックスの色はクラスカラーが決まっていて、2組はグレーである。


 1組はホワイトだけど、2組のグレーも人気あったよな……。


 前世の世界ではコスプレ会場で、某セクシースポブラブランドの下着姿のまま、『これはコスプレです!』と言い張ったけど、出禁喰らったとSNSで話題になっていたのだ。


「そ、そんなジッと見ないでくれ橘……」


「あ、ごめん。つい体操着姿がエ……可愛すぎて」


 久留和さんは長身で手足が長く、褐色肌がよりスポーティな印象を際立たせるので、本当にこのエチエチ体操着が似合っている。


 フィギュア化しないかな?


「この格好……好きなのか?」

「うん。出来れば、ベッドの上でも着て欲しい」


「キュ~ッ……」

「く、久留和さん! しっかり」


 久留和さんが急に強制シャットダウンみたいに膝から崩れ落ちそうになったので、慌ててその大きな身体を支える。


 うわ、生肌の所に触れちゃったよ。

 でも、露出の多い体操着だから仕方が無いよね。


「久留和の姉御⁉」

「し、死んでる……」

「早く酸素ボンベを! 蘇生を!」


 慌ただしくなる2組控室。


「た~ち~ば~な~く~ん~!」

「はわわ、ゴメン多々良浜さん。俺ってば、またとんでもない事を」


 多々良浜さんのお叱りに、俺はまたしてもやってしまったと我に返る。


 エッチな目で見てゴメンなさい。

 でも仕方がないんです! だって、男の子だもん……。


「ちょっと待って……。これって使えるかも」


 間もなく体力部門の競技が始まるという時に、エースがぶっ倒れる惨状を眺めながら、参謀の三戸さんが何やら思案にくれている。


 え? この状況からでも入れる保険があるんですか?


「何かいいアイデアでもあるの?三戸さん」

「うん。でも、そのためには橘君の協力が必須なんだけど……」


「俺に出来る事なら何でも手伝うよ。何でも言って!」

「だから、そういう子宮にキュンキュンくるような事を軽はずみに言わないでください橘君…」…


「いや、これまでの罪滅ぼしが出来るなら、俺は何だってやるよ!」


 やらかした失態は、すぐに取り返す。

 2組のクラス員として、これ以上皆のの足手まといになるのは御免だった。


「オーケイありがとう。じゃあ、作戦なんだけど」


 俺の言葉にニヤリと笑ったクラスの参謀の三戸さんは、先ほどの敗戦から立ち直り、悪だくみをするいい顔をしていた。

第1章完結まであと4話。


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― 新着の感想 ―
当たるを幸いと切り散らかしていく妖刀のように。 まあ辺りを血まみれにするのですね。
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