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第43話 可哀想なのは抜けないから

「どういうつもり……か。それはこっちのセリフなんだよね~」


 俺は荒崎さんの問いに答えずに、強引に会話の話題を俺本位に引っ張り込む。


 時間が経つと、絶賛レジャーシートとして俺のケツに敷かれている虎嶺の呼吸が回復してしまう。

 故に、時間稼ぎの無駄話をする気は一切無かった。


「先ほど、俺は学内で武装組織に襲撃された。寝室家の私兵だった」

「───っ⁉ な、なんで……」


「一方的に殲滅したけどね。いや~、学内に潜入したテロリストを秘密裏に潰して学内の平和を守るという、男の子の夢を叶えさせてくれてありがとう」


 なぜ?の質問に、俺は一方的に結果と、こちらのお気持ちだけを伝える。


 色々と説明できないしね。


 なお、学内に潜入したテロリスト云々は嫌味っぽく言ったけど、半分は本気である。

 まさか、俺にこんな力が……と、気分が高揚しなかったかと言われればウソになる。


 男の子だもん。


「…………」

「ちなみに寝室家や、荒崎家が念のために学校関係者に扮して詰めさせていた護衛の方たちは、ここには来ないよ。で、本題なんだけど、またこんな風に襲撃されちゃたまらんのよね。こちらとしてはとっとと事態を終わらせたいわけ」


 沈黙する荒崎さんを待ったりせずにドンドン追い込むノット紳士な俺。


 でも、この場では時間の経過は俺に味方しないので、直球ばかりを構わず投げ込む。


「だからさ。今、俺の下で伸びてるこいつのチ〇コを破壊しちゃえば、もうこちらに関わろうなんて気は起こさなくなるよね?」


「ひっ……」


 少し呼吸が戻って来たらしい虎嶺が、俺の下で顔面蒼白になっている。

 なお、まだ俺を押しのける程の力は戻って来てない模様。


 ここで、俺は話を一気に結論まで導くために、口撃の対象を虎嶺に変える。


「いいな~虎嶺。お前は名家の生まれで、自分のプライドを守ってくれるために、私兵を動かしてくれる心優しい親がいて、こんな可愛い婚約者もいてさ。羨ましいよ」


 ニッコリと笑う俺に対し、ひきつった顔を向ける虎嶺。

 その顔は恐怖に支配されていた。


「でもさ……。それって、お前がこの世界で貴重な男子だからだよね?」


 笑いながら俺は右足のつま先を支点にして、ゆっくりと虎嶺のイチモツを踏んづけた、かかとに荷重をかける。


 うえ~。靴越しだけど感触がキモい。


「やめ……」

「男じゃなくなったお前を、果たして周りは今みたいに大事にしてくれるかな?」


 酷薄な笑みを浮かべつつ問いかけるが、虎嶺はパクパクと口を酸欠の魚のように開け閉めする。どうやら人語を発する能力を喪失したようだ。


 まだ呼吸が整っていないからなのか、それとも恐怖で縮み上がっているからか。

 どちらが理由かは分からないが、喋れない事はこちらのせいではないので、処すための留保の時間を与える根拠とはならない。


 なので、そのまま俺は右足に荷重をかけ続けて。



「本当に……申し訳ありませんでした……橘様……」


 声を発したのは、今にも男のシンボルを踏みつぶされそうになっている野郎ではなく、声を震わせた少女だった。


 くぐもった声は聴きとりづらかった。

 それは、少女が地面に膝をつき、頭を芝生の上にこすりつけているからだった。


「此度の無礼……。荒崎家として、正式に謝罪させていただきます……。本当に申し訳ありません……」


「で?」


 振り絞るように謝罪の口上を述べる荒崎さんの頭上に容赦なく続きを促しつつも、俺は内心でヨシヨシとほくそ笑んでいた。


 別に、いたいけな少女を土下座させて悦に浸っているわけじゃなく、俺が思い描いたように話が進んでいるからだ。


 営業交渉の時にも、自分の望んだ結果へ進み始めた瞬間に脳内麻薬が出たもんだ。


「今後は絶対に虎嶺に……。いえ、寝室家に貴方様に手を出さないように、荒崎家が責任をもって言い含めます。なので、どうか……。どうか、ご容赦……」



『ふん、残念だな。この社会から貴重な男が一人減ってしまうなんてな』



 俺は無言で手元にあるスマホの音楽プレイヤーアプリを再生させる。


「マイナスがゼロになることを手打ちとするなら思い上がりも甚だしい。この世界で貴重な男に危害を加えることに、こいつは積極的に自分が関わっていることを示唆した。この点は、いかに名家の人間だろうと、世に出てしまえば醜聞として揉み消すのは無理だろうな」


 本当は保険のための録音だったが、ここは徹底的に潰した方が、今後もこちらの言う事を聞くだろうと、俺はあえてカードの手札を晒した。


 体育の時間も着けてて良かった、スパイ用腕時計。録音機能もついてるぞ。お値段は不明。



「お怒り、ごもっともです……。今回の責任を取り、私、荒崎麻衣は罰として、子の産めぬ身体に医療処置を施します……。ですから、何卒、虎嶺の生殖器だけは……」


 絞り出すように、荒崎さんが頭を擦り付けて懇願する。


 おおう……。

 思った以上に重いペナルティを持ち出してきたぞ。


 俺としては、既にガキ同士じゃ話にならないから、親同士で話をつけて、念書をかわす程度で着地させるつもりだったんだが……。


 この男女比1:99のハニ学の世界での女性の最大の夢は、男との自然懐胎だ。


 通常は人工授精により妊娠する訳だが、男子が生まれる確率が自然懐胎の方が圧倒的に高いといった理由もあり、男を伴侶とすることは社会的ステータスも高いのだ。


 故に、こうして荒崎さんの家のような名家は男子を婚約者として囲っているわけだ。


 そして、荒崎さんはその最大の利点を、自ら手放すと言ってきているのだ。

 虎嶺を、そして家を護るために。


 それが、文字通り地面に這いつくばった彼女が差し出せる、精一杯の誠意だった。


「頭を上げてよ荒崎さん」


 俺がそう言うと、土下座した彼女は身体をビクッと震わせた後、恐る恐る頭を上げた。


「そんなのして貰っても俺は嬉しくないんだよね。却下だ」

「た……足りないというのでしたら、そちらが指定する医療機関で麻酔なしでの処置を!」


「いや、だから」


 そういう可哀想なのは抜けないから俺。

 女の子にはみんなハッピーでいて欲しいんだよ。


「あ、何でしたら橘様の手で行うのが御所望ですか? 私の身体の女の子の部分を破壊するのを」


 は?


「ハァハァ……。何を使いますか? 極太すりこぎですか? それとも、剪定ハサミを」


 いやいや、発想がグロいって、この子。

 名家って、こんなポンポン残忍な罰の方法を思いつくもんなの?


 っていうか荒崎さんも、何かハァハァ言ってるし……。

 あんな無表情だった子なのに、こんなんだっけ?


「だ~から、それだと俺が完全に悪者じゃん! 荒崎さんの家が色々と滅茶苦茶になるし恨まれちゃうから、そういうのは却下!」


「い、いいのですか……? 本当に」


「うんうん。実は既に、親同士で話をつけてるはずだから。罰は親から受けてね」


 あ~、焦った。

 話が予想もしていない方向に向かっていったから、つい焦って種明かしをしちゃった。


 寝室家と荒崎家は今後、このネタで脅されて搾り取られる算段になっていると母さんが言っていた。

 うちみたいなヤベェ組織と関わってしまって、御愁傷さまである。


「は……はい! ありがとうございます!」


 そう言って、荒崎さんはガバッとその場に再度土下座した。


 話がまとまって良かった。

 って、そうか!


 荒崎さんは性器破壊とか突飛な事を言って、俺を焦らせて上手く協議の主導権を握ったんだな。

 流石は名家の女の子だ。強かだな。



 そうだよね。

 まさか、荒崎さんがそういう秘めたる性的願望を、この土壇場で開花させた訳じゃないよね……。


 ね?

 ここは、能力系バトルゲームの世界じゃないんだから。


 ハハハッ。



「って訳だ。良かったな男としてのシンボルが無事で。献身的な婚約者のおかげなんだから感謝しろよ」


 話も終わったので、俺は虎嶺からどいた。


「…………」


 てっきり、チ〇コの無事が確認された途端に威勢よくこちらを罵ってくるかと思ったが、虎嶺は放心状態でこちらに無反応だ。


 これ、荒崎さんの生々しい発言のせいじゃねぇの?


「それじゃあね~」


 とはいえ、これにて一件落着だな。

 用は済んだし、とっとと帰ろう。


 後は、明日のクラス対抗戦で勝つだけだ。




「ああ……終わってしまった……。もっと、もっと罰を……」




 何か、後ろから聞こえた気がしたが、俺は無視して振り返らなかった。

おかしいな。シリアス回のはずだったのに。


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