第34話 何でもですって⁉
(キ~ンコ~ン♪カ~ンコ~ン♪)
さて、放課を告げるチャイムも鳴った事だし帰るかと思い、席を立つ俺。
今日も、放課後は俺以外のクラスメイト達はクラス入れ替え戦の練習や準備で忙しいので、俺は一人寂しく帰って。
「ちょっとお時間よろしいですか?橘君」
と思っていると、多々良浜さんから声がかけられた。
「うん、いいよ……。って、みんな顔が怖いんだけど……」
声をかけてきた多々良浜さんの後ろには、ずらりと2組女子が並んでいた。
って、エッちゃん先生もいるし。
皆、クラス対抗戦のために無理をしているのか、目の下にクマをつくっている。
なのに目だけはバキバキである。
あ……。俺、この目を知ってる。
前世の仕事で、炎上プロジェクトが佳境に入った時に妙にハイテンションだった時の同僚と同じ目だ。
明らかにこの元気は、寿命か何かを燃料にして燃やしている事で得ている物なんだよな……。
「橘君……。今日の昼休みに学食に行きましたね?」
思いつめたような多々良浜さんから問われる。
「え⁉ あ、うん……。ゴメンね、止められてたのに勝手に行っちゃって。でも、特にトラブルもなく何の問題も」
学食には、2組のクラスメイトは居なかったと思ったんだけど、もう情報が回って来てるのか。
以前に、男子の情報や噂話は直ぐに学内を駆け巡るって言ってたしな。
じゃあ、俺の軽挙な行いに対するお小言かな。
「そんな事はどうでもいいんです! 学食で一緒に居たという、謎の美少女って誰なんですか⁉」
あ、そっち?
まぁ、晴飛が悪ノリして俺と腕を組んだりしてたから目立ってたのか。
「ああ、そんな事か。あの子は……」
晴飛だよと言いかけて、俺は続く言葉を飲み込んだ。
女装については晴飛は、まだオープンにしていない。
晴飛は女装について後ろめたさを感じているみたいだったし、ここで俺が暴露をするのはマズい。
「その……。最近、仲良くなった他クラスの子だよ、うん」
よし。
ウソは言ってないよな。
だが、そんな答えで、すっかり社会の厳しさに染まり学生気分が完全に抜けきった3年目社会人みたいな目をした多々良浜さん達は納得はせず……。
「随分と仲睦まじく寄り添い合っていたとの報告を受けてるんだよ橘っち」」
「うう……。護衛の私が付いていかなかったばかりに、他の女に……」
「ピエロ……私は哀れなピエロ……」
笑顔だけど目が笑っていない三戸さんに追い詰められ、大きな身体でシクシクと泣く久留和さんにより罪悪感を刺激される。あと、エッちゃん先生はマジでゴメン。
でも、考えてみれば彼女たちが怒るのは当然だ。
皆が今、こんなに頑張っているのは、全てはクラス入れ替え戦で3組に勝つため。
いわば、俺のためな訳だ。
なのに、当の俺はのほほんと学食で別の女の子とイチャイチャして。
前世で例えれば、炎上プロジェクトで殺人的な残業を部下に課しながら、自分は定時で帰る部長みたいなもんか? うん、ギルティだわ。
これは即時飴を与えねば、このクラスは崩壊する。
「ゴメンねみんな……。でも、俺も皆に蚊帳の外にされて寂しかったんだ……。クラス対抗戦で俺だけ、何も出来ないから……」
ここは、ただ謝るだけでは結局は彼女たちに気を使わせてしまう。
ならば、このまま小悪魔ムーブで押し切るしかない。
「そ、それは……」
ここで多々良浜さんが俺の小悪魔ムーブにたじろぎトーンダウンする。
この世界での男のしおらしさは武器になるという俺の嫌らしい計算は正しかったようだ。
「でも応援すると邪魔になっちゃうって言うし……。あ、それならクラス対抗戦が終わったら、俺、何でもするよ?」
「「「「何でもですって⁉」」」」
炎上プロジェクトで、最後の最後まで走りきらせるためにはカンフル剤が必要だ。
生半可な物じゃダメだ。
打ち上げで高級焼肉くらいの身銭を切るくらいの覚悟と器の大きさが、リーダーには求められる。
「ちょっと橘君。これじゃあ、収拾がつかなくなって……」
「無理だよ、みな実っち……。こうなったら、もう……」
焦る多々良浜さんの肩を、諦念が顔ににじんだ三戸さんが叩く。
「何してもらう? 何してもらう?」
「私は耳元で橘君に愛を囁いてもらう」
「わ、私は腹筋触らせてもらったり」
「それ攻め過ぎじゃない? 私は二の腕の血管触らせてもらう」
「お触り系は流石にNGじゃない? やっぱここは、私自作の夢小説を橘君に朗読してもらって」
「私、この戦争が終わったら、結婚するんだ」
「お姫様抱っこ……」
どうやら効果は抜群だったようである。
それにしても皆、色々とニッチなプレイをお好みなんだな。
そんな中で、お姫様抱っこをご所望の久留和さんはやっぱり可愛いな。
「橘君……。また、そうやって誤魔化して……」
「ゴメンね多々良浜さん」
おかげで晴飛の秘密は守られた。
別に俺にとっては、女の子との絡みはご褒美なので、実質ノーダメだしこれでオーケイなのであった。
ふぅ……。切り抜けたな(フラグ)
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