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第2話 女の子の雄叫びがやばい

「おら、席つけお前ら~。席は苗字の五十音順だからな~」


 入学式が終わり、1年2組の教室に連れられてくると、間髪入れずに担任の先生が席に着くよう促した。


「1年2組担任の大楠(おおぐす)悦子(えつこ)だ。よく生徒たちからはエッちゃん先生って呼ばれてるからよろしくな」


 エッちゃん先生は歳にして20代後半くらい。

 入学式だから、ビシッとしたパンツスーツを着こなしているカッコいい美人系の大人の女性だ。


 中身アラサーの自分としては、リアルにグッときます。


「た、橘君。席もお隣ですね」


 担任をいやらしい目で見ていると、不意に隣の席から声をかけられた。


「そうだね。よろしく多々良浜さん」


 さっき、エッちゃん先生が席は苗字の五十音順って言ってたもんな。

 多々良浜(たたらはま)(たちばな)なら、確かに五十音順なら隣同士になるか。


「あ~、こんな幸せでいいんでしょうか。男の子が隣の席なんて、こんなの夢小説みたいな展開ですよ」


 胸の高鳴りを抑えきれないとばかりに、多々良浜さんが


「俺も多々良浜さんみたいな美人さんが隣の席で幸せだよ」



「「「「ふぁ⁉」」」」



 いや、多々良浜さんはともかく、なんで周りの席の他のクラスメイトまで驚くの?



「橘くんだっけ……。めっちゃ普通に女の子と喋ってくれるね」

「あの、多々良浜って子が元々知り合いとかじゃないの?」

「いや、さっき入学式の時にはじめましての挨拶をめっちゃキョドりながらしてたから初対面っぽい」


「って、多々良浜さん固まってる」

「そりゃ、面と向かって美人さんなんて言われちゃね」

「あんなん、処女の妄想丸出しの夢小説展開やん」


 そうだった。

 この世界の男は基本的に、女の子には不信感や警戒感丸出しの塩対応なんだった。


 さながら俺は、無警戒で思わせぶりな事を言っちゃう小悪魔系女子だ。

 いや、俺は男なんだけど、元の世界で例えればね。


「ほら、男子を見てソワソワすんな小娘ども。じゃあ、まずは自己紹介だ。悪いが橘。トップバッター頼めるか?」


「え、俺からですか? こういうのって普通、苗字の五十音順の『あ』の人からじゃ?」


 不意にエッちゃん先生に水を向けられて、ちょっとたじろぐ。


「見ての通り、男が間近にいるのに慣れてなくてフワフワした空気になっちゃうから、とっとと済ませたい」

「あ~、なるほど分かりました」


 まぁ、みんな気になっちゃうよな。

 クラス唯一の白一点だもん。


 ゲームでもいきなり主人公から自己紹介するシーンがあったけど、あれはゲーム的に端を折ってるわけじゃなかったのな。


 今頃、1組にいる主人公の晴飛君もトップバッターで自己紹介してるんだろうな。


「え~。では、トップバッターなんで、拙い自己紹介でも許してくださいね」


 一応、予防線を張りつつ、俺は席を立って自己紹介を始める。


 クラスの皆の視線が俺に集まる。


「名前は橘知己です。周りが女の子ばかりでドキドキしてます。でも、ボクは女性との触れ合いは望む所なんで、対戦お願いします」


 こういう自己紹介は端的に述べるのが一番。

 けど、この男女比1対99の世界での俺のスタンスは早めに表明しとくのが良いだろう。


 俺は、この世界では例外だ。


 いや、この世界で超少数派の男ってだけで十分に例外なんだけど、その例外の中でも更なる異物だ。


 異なる世界の思想や倫理観に染まっている奴なんだから、今後色々と軋轢もあろう。


 なら、最初から変わり者だと表明しておいた方が、結果的に周囲に与える衝撃は小さくて済む。





「「「きゃあぁぁぁぁああああ!」」」




 って、あれぇぇ?



「マジか⁉ マジか! こんな夢みたいな事ってあるの⁉」

「男の子が登校してきてくれるだけじゃなくて、こんな気さくで」

「しかも、触れ合いオーケーって、それってお触りもって事ですか?」

「私のJK生活始まってるぅぅぅぅぅうううう!」

「ぶるああぁぁぁぁああああ!」


 雄たけびがヤバい。


 男子の人数が極小とは言え、ハニ学って一応共学校なんだから、そういう女子高ノリはやめた方がいいんじゃ。


 そんなはしゃいでると、エッちゃん先生から『入学初日からやかましいぞ!』って雷が。


 と思って、担任のエッちゃん先生を見やると。


「女性……それって、もしかして私も対象に……。って、ダメダメ。男子生徒を襲って、ようやく掴んだ共学校の教師の地位を台無しになんて出来ない……でも……」


 騒ぎまくるクラスの生徒たちを尻目に、何やらブツブツ独り言を言って自分の世界にトリップされている様子。


 こうして、軽く最初に一発かましとくかという俺の試みは、収拾のつかなくなったクラスの様子からして、どうやら成功したようである。


 しかし、主人公じゃなくても、男ってだけで影響力が凄いのなと思いつつ、俺はキャーキャー騒いでいるクラスメイトを見ながら苦笑いするしかなかった。


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