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その白い建物は緑の山の中で異様な程際立っていた。

獣類研究所 日本支部。

ここでは狂暴化した動物たちの研究が行われている。

それが公にされていなかったのは政府非公認の研究所であるからだ。


元々この研究所は野生動物など生態系の研究が行われおり、国際的に各国で研究が進んでいた。

それをアメリカの政府が発見し、動物の暴走を止めるための薬を作るよう依頼したのだ。


しかし、研究所は最初、それを拒否していたのだった。


アメリカ及び各国の政府は莫大な資金と最先端の技術を用意し、なんとか同意を得られた。

日本支部の居場所もとうとう突き止め、俺達は今、その内部の状態を把握するべく、”捜査”という形をとることになった。


車を降りると、自然の匂いの中に僅かに薬品の匂いが鼻を通った。


「なんか…不気味ですね。これだけ目立った建物がどうして今まで見つからなかったんでしょうか」

「…まあ、いろいろ怪しいからな」


建物の中に入ると1人の男が出迎えた。薄暗い建物内に痩せ細った白衣の男。

あまりの不気味さに思わず顔が強張ってしまう。


「…どうも。私は獣類研究所日本支部長の名塚(なづか)(みちる)と申します。わざわざ足をお運びくださり、ありがとうございます」


40代くらいに見える名塚は、丁寧に深々と頭を下げる。

それにつられて隣の柊も頭を下げていた。


「対獣類特別捜査班の瑞樹だ」

俺は挨拶もそこそこに警察手帳を見せつける。

慌てて柊も手帳を取り出した。

「柊です」

「日本での研究内容の把握と確認のため捜査に来た。早速だが、中を案内してもらってもいいか」

「は、はい。ではこちらへ」


男が通したのは支部長室と書かれたプレートが提げられた広めの部屋だった。

奥には名塚の仕事スペースであろうデスクと高級そうな椅子。

俺達は手前の低いテーブルとソファに促された。


「…研究室は見れないのか?」

「すみません…。研究内容は完全極秘であるので、お2人にはこの研究の概要を記した資料をご覧いただきます」

そう言って分厚い紙を綴じたファイルがテーブルの上に置かれた。


「聞いてた話と違うな」

俺は片眉を上げ、軽く名塚を睨む。


鋭い視線に怯んだ名塚は恐る恐る口を開いて話を始めた。

「本当に申し訳ありません。研究所の方針がつい最近変更されたのです…。これは全世界共通でして私にはどうにも…」

「…チッ」

頭を掻きながらクマのある目で申し訳なさそうに見つめる名塚に腹が立ち、仕事中だということを忘れて舌打ちをした。


聞くところによると、最近、研究所が政府の介入を拒否しだしたらしい。

今まで共有されていた研究内容などを研究所内部でのみ完結させるのだと。

これには世界主要国の政府も困惑していて、なんとか対応策を提案しているのだが、研究所がこれに応じなくなってしまった。


それにしても、日本の警察は情報伝達が遅い。


やり場のない怒りを飲み込み、取り敢えず勝木に報告しようとしたところで緊急の通報がスマホを震わせた。

「た、大変です、(しょう)先輩…!俺らも駆けつけた方がいいかもです」

「…近くだな。名塚さん、本日はお忙しい中時間をいただき感謝します」

俺は名塚の方を向き、建前の礼儀を示す。

「い、いえ、こちらこそすみませんでした。この資料は差し上げます」

俺は軽く頭を下げ、名塚から資料を受け取ると、柊と共に研究所を出た。

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