8話 ボス討伐
8章 ボス討伐
最初に如月が囮となり、トカゲの大きさでも落ちるようなマグマの穴に誘導する。
「こっちだ。早く来い」
如月の声はトカゲには聞こえないのだが、まぁ、雰囲気というか気持ちというかみたいなのだろうか。
トカゲが動いた如月に向かって巨体を動かした。
巨体のせいか、足音が響く。
トカゲは舌で攻撃を繰り返す。
俺は、トカゲに見つからないようにトカゲの真後ろに着いて行く。
物陰や噴火マグマに隠れながら進む。
目標の地点まであともう少し。
如月は段々とスピードを上げた。
それに合わせてトカゲもスピードを上げる。
もう如月の目の前にはマグマ溜まりがある。
如月は自慢のスピードをフル活用して、マグマ溜まりの淵を走った。
その速さはトカゲには目が追いつかないものだった。
そのため、トカゲには如月がいつの間にかマグマの向こう岸にいるように見えるのだ。
それに、今トカゲは舌の先を千切られて怒りで判断が鈍くなって如月しか見えていない。
俺は、トカゲがマグマに触れる前にトカゲの頭上からキンキンに冷えた水を水魔法で落とした。
次に、鱗の表面の水だけを取った。
それにより、トカゲの体はうまく冷えている。
そんな中、極熱のマグマに浸かれば、ダメージは倍増する。
トカゲは勢いよくマグマに前半身の半分が浸かった。
トカゲは悲鳴を上げた。
そこをすかさず、剣、盾、自分達の体の重さを使って落として行く。
トカゲは、急激に冷えた体を極熱のマグマに浸ったため、鱗がひび割れ、その隙間からマグマが入った。
熱くてしょうがないトカゲは攻撃ではなく、マグマから出ようともがく。
だが、泳いだこともないトカゲはどんどん沈んでいく。
俺たちはトカゲを落とすために上から衝撃を与える。
トカゲの悲鳴は巨体の下半分が浸かったところで止まり、抵抗も弱くなった。
そして、ようやくトカゲが全て沈んだ。
「もう、終わった、よね。倒した、よね」
如月、それはフラグが立っているぞ。
まぁ、ゲームだからそのフラグが立つことはほとんどないがな。
「あぁ、たぶん」
あえて突っ込まない。雰囲気的にそうだし。
それに、倒したなら、表示が出てくるはずだ。
「「・・・」」
無言が続いた、、。
「ピロン♪」
のつうち音が響いた。
目の前にパソコンくらいの大きさの画面が出てきた。
「上級ダンジョン・火山ステージ、10階層目ファイアリザード討伐クリア!」
機械声のアナウンスが聞こえる。
「や、…やった、やったー!」
如月はものすごく嬉しそうに騒ぎ立てた。
本当に鼓膜が裂けそうだ。
なのに、俺はうっすらと笑みを浮かべていた。
説明しよう。
如月が立てた攻略法は、まず、如月自慢のスピードで囮になり、トカゲの走るスピードを上げる。
そして、マグマ溜まりにトカゲが入る前に俺の残りの魔力(偽)で水をかぶせる。
トカゲがマグマ溜まりに少しでも落ちたら、全力でトカゲを落とす。
まぁ単純な攻略法だな。
だが、水をかけるという方法は思いつかなかった。
「ファイアリザード、プレイヤー中初討伐。おめでとうございます。初討伐につき、特別報酬が上乗せさせられます」
感情のないセリフがまたもや流れる。
「特別報酬!あるって言われてたけど、まさか僕がもらえるなんて、」
先ほどから如月のテンションはぶち上がりだ。
たしか、このトカゲの初討伐の報酬は、熱耐性のブレスレットだった気がするな。
報酬欄を見ると、やっぱり熱耐性のブレスレットがあった。
この熱耐性ブレスレットがあると、熱耐性のポーションを買わずに済むのだ。
毎回買っていると経費がすごいことになってしまうからな。
如月は感動してて、早口だ。
早口すぎてもはや聞き取れない。
如月にはボス討伐の感動に浸る時間をあげようじゃないか。
うまく攻略できてよかった。
これで攻略達成だ。