4話 俺にも友達が!?
4章 俺にも友達が!?
部屋には硬いキーボードの音が絶えることなく響いていた。
カーテンは金庫のように光を許さないと言わんばかりに閉められ、電気はパソコンのぼやけた光のみだった。
俺は、情報収集をしている真っ最中だった。
なぜなら、俺はユーチューブをしているからだ。
それも、暴露系ユーチューバーだ。
もちろん、【クロア】の名前でやっている。
居場所やアドレスなどがバレるとやばいため、色々としかけているが、罠に引っかかるやつは今のところいない。
暴露系ユーチューバーとは言っても、悪い政治家や悪い芸能人、犯罪者など、暴露されてもいいと思えるやつ、世間的に困らないやつしか暴露していない。
しかも、顔出しもせず、作ったキャラクターを載せて、声は機械にして標準語にして投稿している。
身バレなどあり得ない。
ちなみに、ユーチューブ登録者は100万人をこえる。
とても人気がある。
だが、このユーチューブは優先順位が2番目だ。
1番は何かというと、未解決事件やすぐに解決しなければいけない事件などを早く解決に向かわせるための情報を警察に与えることだ。
だが、今はユーチューブに投稿するための動画を作っている。
一週間に一度だけ、動画をアップするようにしているからだ。
そして、もうそろそろ動画制作が終わりそうなのだ。
今回もいい出来になりそうである。
動画制作が終わり、動画を投稿した。
すると、あっという間に何千人もの人が視聴した。
俺は、明日のためにパソコンの電源を落としてベットで寝た。
明日は学校に行かなければならないのだ。
通信制の学校は、ほとんど学校に行かなくてもいい。
だが、1ヶ月に一回、学校に行かないといけないのだ。
それと、課題を提出しなければならない。
そう、明日がその1ヶ月に一回の学校に行く日なのだ。
ちなみに、今の学校には友達はいない。
勘違いしないでほしい。友達がいないのではなくて作らないだけなのだ。
だって、1ヶ月に一回だけしか学校に行っていないのだから。
朝7時、うるさい音が聞こえ、重い瞼をこじ開けた。
俺は目覚ましのある場所に手を伸ばし、音を止めた。
すると、また音が響いてきた。
俺は仕方なく起き上がった。
俺は、朝が弱い。
だから、起きて、キッチンのある部屋のスイッチを押さないと目覚ましは止まらないようにしている。
俺はキッチンに向かい、スイッチを押した。
そして着替えて、常備してあるカロリーメイトとペットボトルの水をリュックの中に入れて外に出た。
闇を浄化するような朝日に焼かれながら、バス停に向かった。
まだ完全に目が覚めていない状態で数分経つと、バスが到着した。
バスの停車音で目が覚め、急いでバスに乗り込んだ。
バスに乗ると、用意していたカロリーメイトを食べながらスマホをいじった。
そして、ゲームをし始めた。
ちょうどカロリーメイト二本、食べ終わった後、学校に着いた。
バスから降りて、1ヶ月ぶりの学校の敷地内へと入った。
1ヶ月に一回でいいとは言っても、普通の学校のように通っている奴らの方が多い。
俺のようなパターンは珍しいのだ。
自分の教室に着くと、一番後ろの席に座った。
通信制の学校だからか、席は自由なのだそうだ。
俺は意地でも一番後ろの席がいいため、少し早く来ているのだ。
まだ先生が来るまで30分程度はある。
俺はスマホを取り出し、ゲームをし始めた。
少しずつ、生徒が増えている。
俺は気にせずにゲームを続けていた。
すると、誰かが近づいてきた。
「そのゲーム面白いよね」
ボブくらいの髪の長さでサラサラとした絹のような髪の女と間違えるくらいに可愛い、というか、美しい?
身長は160センチくらいだ。
だが、そいつは正真正銘男である。
なんせ、自己紹介で自分で言っていた。
「あぁ、面白い。…………如月だったか?」
俺はそいつの名前を思い出すのに時間がかかった。
「あ、うん」
なぜか、鳩が豆鉄砲をくらったような表情をしていた。
「如月もこのゲームしているのか?」
俺には友達が少ないが、普通に話せる。
それに、このゲームは俺が作ったからな。
このゲームをしているやつの意見を聞いてやるのは俺の役目だ。
「うん、してるよ。そもそも、このゲームをしてない人の方が少ないでしょ」
如月はちょっと笑いながら話した。
そうなのだ。
俺が作ったゲーム、〔オールワールド〕は今世界で最も流行っているゲームとなっている。
〔オールワールド〕はその名の通り、全ての世界という意味である。
由来は、適当につけたからない。
なぜか、短縮されて今は〔オワド〕と呼ばれている。
〔オワド〕は万能名ゲームだ。
採取、戦闘、生産、ストーリー、キャラクター育成、魔法、ファンタジー要素、団体戦闘など、様々なことができる。
色んなことができるおかげで、人々のストライクゾーンにものすごく当てはまる。
それに、このゲームをすると、ポイントが貯まり、タッチ決済の金へと変換できる。
そして、読み込みはものすごくはやい。
また、このゲームはスマホでもパソコンでもスイッチでもなんでもインストールができるのだ。
「確かに。それで、聞きたいんだけど、なんで俺のところに?他にもこのゲームしている奴らがいるだろ?」
そう、この教室ではオワドをしている奴らが片手で数える以上にはいるのだ。
「なぜって、君が一番オワドの上級者だと思ったからだよ」
如月は見定めるようなちょっと嫌な視線を俺に向けている。
その瞬間、俺は如月が勘のいい奴だと気づいた。
「そうか、徹夜して頑張った甲斐があるな」
本当は自分でこのゲームを最初に試したり、このゲームの攻略法を知っていたりしたからなのだが、こうでも言わないと如月には怪しまれるだろう。
「そうなんだ。ねぇ、フレンド登録しようよ」
フレンド登録とは、オワドにある、ラインみたいなものだ。
普通のラインでもいいが、それだと通知が邪魔だ。
そうして考えたのが、邪魔にならないようにフレンド登録という設定を作り出したのだ。
そして、フレンド登録をすると、アイテムを贈ることもできる。
だが、俺は制作者だ。
アイテムは全て持っているし、攻略法も全てわかっている。
別のアカウントを作ってもいいが、それだと、オワド自体に何かあった時の処置が遅れることになる。
そのため、フレンド登録はできないのだ。
「ごめん、俺、フレンド登録はしないようにしているんだ」
本当に申し訳ないが、仕方がない。
「そっかー。なら、ライン交換しようよ」
そう言って、スマホを取り出した。
まあ、ライン交換は問題ない。
「わかった」
俺は、オワドを閉じ、ラインを交換した。
その日、俺は心を弾ませながら帰った。