3話 地獄の遊園地
3章 地獄の遊園地
俺は、久しぶりに学校以外で外に出かけていた。
しかも、真夏である。普段なら、冷房がしっかりとかかっているく暗い部屋でパソコンをいじっているところだ。
なぜ今外に出ているかと言うと、俺の数少ない友達である、天羽 彗と遊びの誘いが来たからだ。
だが、彗に俺は騙された。
遊びに出かけたのは、遊園地だったのだ。
遊園地は遊んでいる間、ほとんど外に出なければならない地獄の場所なのだ。
「彗、なぜこの場所を選んだんだ」
俺は汗だくになりながら天羽を睨んだ。
「そんなに睨むなよ、北斗。部屋に引きこもってるお前を楽しく運動させようと俺が必死に考えたんだぞ」
彗は汗だくになって不機嫌になっている俺を見ながらニヤニヤとしていた。
それに、彗はものすごく賢い。
普段の学校生活ではその能力を抑えているらしいが、俺は知っている。
なんせ、家が近く、中学までは同じ学校だったのだから。
つまり、幼馴染というやつだ。
彗は俺を定期的に運動させようと遊びに誘ってくる。
毎回そんなことをしていたら、予想できるのではないかと思うだろう?
毎回じゃないんだな、これが。
彗と遊びに行く時は、ものすごく楽しいところへ連れていってくれることもあるのだ。
だから、毎回断ると楽しいことを見逃すことになる。
ということで、こんな状況になってしまっている。
「北斗、何から乗ろうか」
彗はものすごく満点の笑みを浮かべて話しかけてきた。
こんな時は俺に決定権はない。
「どうせ、ジェットコースターだろ」
こんなにも彗が遊園地で笑顔になるなんて、ジェットコースターに乗ることが決定している時だけだ。
俺はものすごく嫌な顔で返事した。
俺は普段ほとんど動かないから、速い乗り物は苦手だ。
だが、体格的にも頭脳も運動神経も彗の方が上である。
抵抗しても、もっとひどくなる未来しか見えない。
「わかってんじゃん」
彗はそう言うと、俺の手を掴んでノリノリでジェットコースターに向かった。
そう言ってついたジェットコースターは、遊園地で一番怖いとされる、ホラーとジェットコースターが組み重なったものだった。
もちろん、怖いだけではなく、ジェットコースターも速く、360度回転が2回もある。
俺は毎回気絶しそうになるが、そのたびに彗に起こされる。
俺はホラーゲームはするものの、本物は嫌いだ。
存在しているのがものすごく怖い。
迫力が全く違うのだ。
心臓が止まってしまう。
彗はホラーが好きだ。
なので、このジェットコースターは彗のために作られたとしか思えない。
なんでこんなにも性格など諸々真反対の俺らが仲がいいのかはわからない。
そんなことを思っているうちに、ジェットコースターについてしまった。
この遊園地は家から車で30分ほどで着く。
だから、一年に一回はこの遊園地に来ている。
そして、毎回のことだがジェットコースターに強制的に乗らされる。
だが、このジェットコースターに何回乗っても慣れない。
そのため、俺は少し抵抗するもそんな抵抗なんてないものかのように引きづられてしまった。
ジェットコースターの順番を待っている間も、建物の絵柄が怖く、ホラーな音楽が流れていて、このジェットコースターの怖さを物語っている。
ついに、俺らの番が来てしまった。
ゾンビや幽霊、血や暗闇などが満遍なく描かれているジェットコースターに乗り込んだ。
まだここまでは平気だ。
だが、…。
ガタンと音が響いて、重そうな機体が動き始めた。
最初はゆっくりと動く。
さて、突然だが、このジェットコースターについて話をしよう。
このジェットコースターでは怖さを増すために最初に物語が話される。
簡単に説明しよう。
この遊園地ができた当初、ある女の子が親と一緒に来ていた。
そして、その女の子は好奇心で親が目を離しているうちに1人でこのジェットコースターに乗ってしまった。
当初、このジェットコースターは普通の速いだけのものだった。
その女の子はジェットコースターに乗ったことがなかった。
だから、ジェットコースターが進み始めようとした時に怖くなり、自分の体の小ささを利用して安全バーを抜け出してしまった。
その時だった、ジェットコースターのスピードが加速したのは。
当然幼い女の子がそのスピードに耐えれるわけもなく、ジェットコースターから振り落とされてしまった。
その落ちた場所は洞窟のように暗い場所だった。
女の子は暗くて怖くてしゃがみ込んでしまった。
そして、心の中で親に助けを求めていたそう。
当然親は助けに来ず、次のジェットコースターが出発してしまった。
そこからはすごく残酷なことが起こる。
なぜなら、女の子がしゃがんだ場所はジェットコースターのレール上だったからだ。
ジェットコースターはもちろん止まらない。
ジェットコースターはどんどん加速する。
女の子は近づいてくる音が恐怖でしかなく、動けずにいた。
そして、女の子はジェットコースターに粉々に引かれてしまった。
ジェットコースターが停車すると、期待にはべっとりと血が滴っていた。
その日から、ジェットコースターに乗っていると、助けが来なかった恨みを持った女の子が目から血を流して現れるそうだ。
その女の子は、ランダムで色んな所に現れる。
女の子の仕組みは立体画像だ。
だが、音や見た目はものすごくリアルだ。
動きの決まりはない。
つまり、ものすごく怖い。
ホラーゲームはパターンがあるし、小さい画面の中だからそこまでではない。
だが、立体感もあって本物っぽいのはダメだ。
ジェットコースターが加速し始めた。
速い、無理、降りたい。
「ぁあああああああああああああ!」
目の前に髪の毛がボサボサで目から血を流して、血まみれの服を着ている女の子が急に現れた。
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁ」
怖い!心臓止まる。
俺は大声を出していたようだ。
そこからは記憶がない。
起きてはいたようだが、魂でも抜けていたのだろうか。
ちゃんと頭が作動したのはジェットコースターが止まった時だった。
隣にいる彗が笑いを堪えているようだ。
だが、堪えられていない。
それに、一緒に乗っていた乗客も「すごい声だったね」とか「怖がりすぎだったな」とか話している。
俺のことだろうか。
俺は恥ずかしいという思いと苛立ちを込めて彗の鳩尾を殴った。
けれど、まともに体を動かしていない俺のパンチなど彗に聞くはずもなく、お化け屋敷に連行された。
遊園地の閉店時間に近づいた時、彗はようやく満足したようだった。
俺はというと、疲れすぎて座っていた。
すると、突然首らへんに冷たいものがくっついた。
後ろを振り向くと、彗が飲み物を持っていた。
「な、楽しく運動できただろ?」
彗はとても自慢げに言ってきた。
だが、俺にとってはここは地獄にしか思えない。
「あぁ、運動は、できたな」
は、という部分を強調して言った。
だが、そんな嫌味も通じるわけがなく、彗は楽しかったなどとほざいている。
早く自分の部屋に戻りたい。
俺は空を仰ぎながら彗の雑談に適当に相槌をうった。