21話 ミスコン
21章 ミスコン
司会の人がどんどん順番に質問を何回か問いかけてくる。
そして、ついに北斗の番が来た。
「さぁ、次は25番!黒北 斗音さんです!」
司会のマイクを通した声が会場全体に響き渡る。
その声に反応して、待ってましたとでも言うように盛り上がった。
「さて、黒北さん。あなたは誰とここにきたんですか?」
司会をマイクをこちらに持ってくる。
「天羽くん、天羽 彗くんと来ました」
北斗はもの凄い演技で誰もこれが男だとは思わなくなった。
「天羽くん!この学校の中で1位2位を争うイケメン君だね!なら、君はどこの学校の子なんだい?」
司会はすごい笑顔で質問を仕掛けてくる。
「それは秘密です」
北斗は女子らしい仕草として、口の前に指でバツを作って言った。
「秘密ならしょうがない。じゃあ、天羽君とは付き合ってるの?」
司会は空気を読むなんて言葉を知らないかのようにどんどん質問をしている。
「フフッ、ご冗談を。付き合ってなんていませんよ」
北斗はさらりと言い放った。
その言葉に、観客の女子と男子両方が舞い上がった。
女子は「まだ天羽くんは付き合ってないんだ」という喜び。
男子は「あの子は誰とも付き合ってない」と言う喜び。
その後、投票が行われた。
もちろん、この第3グループの最優秀者は北斗となった。
北斗は帰れないと嘆いていたが、ミスコンはそのまま続く。
他グループの最優秀者が決まり、最終コンテストが始まった。
「さて、いよいよ最後となりました!このミスコンの優勝者は誰なのでしょうか!優勝者には、豪華賞品をプレゼント!」
司会のその言葉に観客は喜びが溢れる。
ミスコンの予選で勝ち残ったのは、5人だった。
その中の一人が北斗だった。
北斗はここまで自分が残るとは思っていなかった。
女ではない、男である自分が残るとは思わなかった。
そんなことを考えているうちに、質問が来た。
「趣味はなんですか?」
考えておらず、演技が少し抜けた。
「ゲームです」
少し焦り、そのままのことを言ってしまった。
まぁ、優勝する気がないため、どうでもいいが。
「ゲーム!印象に合わないですが、ゲーム好き女子は人気もありますね」
司会はすごい応用力で話を続けた。
そして、ミスコンの優勝者が決まった。
投票により、優勝は北斗となった。
投票は接戦でもなく、ただただ、ボロ勝ちだった。
その際、北斗はというと、思考を放棄し、諦めていた。
(あー、豪華賞品ってなんだろー。ゲーム関係だったらイイナー)
「それでは、優勝者の黒北 斗音さんと、パートナーの天羽 彗さん。ステージに上がってください!」
司会が今日一番の盛り上がりで話した。
その盛り上がりが移ったのか、観客も盛り上がっている。
「それでは、優勝者、黒北 斗音様にはミスコンのトロフィーと豪華賞品を献上します。豪華賞品は、5000円分の図書カードです」
その豪華賞品を聞いて、北斗はガッカリした。
本なんてそうそう読まないため、図書カードなんて使ったこともないのだ。
そもそも、お金に困らないため、図書カードなんていらないのだ。
その後、後夜祭が終わり、家に帰った。
「ただいま〜」
北斗は疲れた声で玄関を開けた。
「おかえり、兄さん」
搖斗は笑顔で言った。
その笑顔にはどこか満足そうな雰囲気が漂っていた。
「お邪魔します!親には言ってあるから!」
彗は自分の家には帰らずに、北斗と一緒に帰ってきた。
「どうしたの?彗兄」
搖斗は不思議そうに聞いた。
「いや、ちょっと面白いことが起きる予感がしたからさ、来ただけだよ」
彗はただ直感を頼りにして、来たらしい。
それもそれでどうなのだろうか。
「…すごいね、彗兄。僕さ、これから兄さんの写真撮影を始めようと思ってたんだよね」
搖斗はにっこりと笑って言った。
その瞬間、俺は搖斗の顔がどこか怪しく陰ったように見えた。
「ゆいと、?」
俺は顔を上げて名前を呼んだ。
「兄さん、じゃあ、こっちに来て」
搖斗は逆らえないような圧力をかけながら言った。
疲れている北斗は逆らえるわけもなく、おとなしくついていった。
ついていった先は、家の客間だった。
そこには、大量の女性物の服と写真撮影用の道具が並んでいた。
「搖斗?これ、本当に今からやるのか?明日じゃダメなのか?」
北斗は恐る恐る出入り口にいる搖斗を見た。
「本当だよ。兄さん、明日にしようとしてもやらないでしょ?」
搖斗はわかりきっているように言った。
「うっ、、」
北斗は図星すぎて何も言い返せなかった。
そこからはもう搖斗のターンだった。
何着も着せられ、写真をいろんなポーズで撮られ、3時間も続いた。
彗はその部屋の端でニマニマと笑いながら見ている。
ようやく終わり、北斗は疲れ果てていた。
「あれ?彗は?」
周りをみると、彗がいなくなっていた。
「彗兄はもう面白いの見れたからって帰ってったよ」
搖斗は写真を確認しながら言った。
「そうか、。それで、もう、寝ていい?」
北斗はもう眠たくて仕方なかった。
「いいけど、ちゃんと化粧を落として服を着替えて、風呂に入ってから寝てね」
搖斗は相変わらずのブラコンっぷりを見せた。
「わかった」
北斗は疲れ果てながらも、風呂に入り、眠った。