20話 ミスコン前になんだよ!
20章 ミスコン前になんだよ!
(はぁ、気が乗らない、。けど、これを終わらせないと帰れないんだよな)
北斗はため息をつきながら準備室へ向かった。
その時、廊下を防ぐように女の子たちが立っていた。
「少し、いいかしら」
女の子たちの中で一番偉そうな子が話し始めた。
「えーっと、なんでしょうか」
早く帰りたい北斗にとってそれは煩わしいものにしか思えなかった。
「あなた、どこの学校の子!?天羽くんの何!?_________」
その偉そうな子は質問攻めをしに来た。
他にも、周りにいる女の子も質問を投げかけてきて、最初以外はほとんど聞き取れなかった。
「どの学校かは言えません。プライバシーがあるので。け、天羽くんとは、幼馴染?みたいなものです。それで、来てくれって頼まれて、仕方なく来たんです」
北斗はちゃんと綺麗な女の子の演技をしながら話した。
「あらそう。でもね、邪魔なのよ。みんな天羽くんに選ばれるのを待ってた。けど、実際に選んだのはこの学校の生徒ではなく、後からひょっこり出てきたお前。許せるわけないでしょ」
その子はそう言って、高そうなバッグの中から液体を取り出した。
その液体は飲食コーナーにあったブドウジュースに似ていた。
北斗はその子が何をするかがわかり、少し後ずさった。
流石に液体を避けるのは至難の業だ。
しかも、北斗が今来ているドレスは汚れが目立つ白が中心になっている。
「あんたなんか、恥をかけばいいのよ!!」
そう言って、偉そうな子はその液体をぶちまけた。
液体が無造作に飛びかう。
北斗は全力で後ろに下がった。
廊下には赤い液体が飛び散り、殺人現場といっても過言ではない絵図だった。
北斗はというと、ギリギリのところで液体がかからなかった。
北斗は静かに立ち上がり、髪を整えた。
「もう、よろしいでしょうか」
北斗は顔には出さずに、圧力をだし、目だけで睨んだ。
その睨みに女の子たちは怯え、声も出ない様子だ。
北斗はそのまま準備室に向かった。
(はぁ、なんで俺がこんな目に、、)
北斗は準備室で順番を待ちながらため息をついた。
そして、どんどんと順番順に呼ばれていった。
(確か、俺は25番だっけ)
先ほど、20番まで呼ばれた。
つまり、次は俺の番というわけだ。
そう思い、北斗は立ち上がった。
北斗の予想通り、数分後に21番から30番までが呼ばれた。
北斗はミスコンに優勝する気もないが、このミスコンが終わらないと帰れないと言われたため、少し気合いが入っていた。
舞台のライトが眩しく輝き、その太陽のように眩しいライトに向かって歩いてゆく。
その眩しいライトに少し目が俯き、広い観客席が目に入った。
この光景は北斗にとって久しぶりのものだった。
高校からは通信制の学校で人前にほとんど出ず、中学は目立たぬように過ごしていたため、こんなにも多くの人の前に出るのは小学生以来であった。
(あぁ、懐かしい。この、自分が主人公だと思わせるようなステージ。自分に全て目が向いているのではないかと思うほどの気持ち良い緊張。まぁ、この感覚がこんな格好というのは少々、いや、なんとも言えないが、)
その時北斗は演技の笑顔ではなく、自然な微笑みを浮かべた。
その微笑みに観客のほとんどが魅了された。
化粧ではなく、自然にできた頬の赤み、白い肌にピンクのようにほんわりとした口紅、さらりと揺れる長い髪の毛、全てが相手を魅了する材料となった。
そして、その時だけ時が止まったかのように静かになった。
「で、では、始めます!第3グループでの最優秀者は!誰になるのでしょうか!」
司会者はやっと我に帰り、司会を始めた。
「皆様、ルールはご存知でしょうが、念のためルール説明をさせていただきます。
ルールは簡単!一番綺麗!美しい!可愛い!好みのタイプ!なんでもいいです!この10人の中から一人だけ選んで投票してください!
投票は個人個人のスマホに送られております!
ちなみに、僭越ながら私がこの10人の候補者たちに質問を投げかけます。
それが終わる頃には投票を終わらせておいてください。それでは、始めましょう!」
そうして、観客たちの嬉しさの声と拍手によって始まった。