18話 なんの罰ゲームだよっ!!
18章 なんの罰ゲームだよっ!!
俺は、搖斗のためにも、未来のためにも、【クロア】を続けることにした。
搖斗の安全を守るためにはユーチューブを続けた方がいいし、将来のことを考えたら、金がいる。
それに、なんだかんだ言って、ハッカーを楽しんでいる自分がいる。
【クロア】を続けると決めた俺は毎日、搖斗と会う時間もたっぷり確保しながら、【クロア】として活動を続けていた。
暗い部屋にひたすらキーボードの音だけが響く。
集中力が高まっていた時、チャイムが鳴った。
すぐに防犯カメラで確認すると、彗だった。
全く嫌な予感しかない。
俺は仕方なく、玄関のところへ向かった。
「何しに来たんだよ、彗。丁度集中してたのに」
俺は少し拗ねた顔で出迎えた。
「ごめんって。でさ、ちょっと相談したいことがあるんだけど、」
彗が低姿勢で頼み事をしてきた。
そんな時は必ずめんどくさいことしかしない。
「うげっ。なんだよ、変なことじゃないだろうな」
俺は少し引き下がった。
「友達に対してうげっとはなんだ。頼むから、相談させろよ」
彗は変なことに対する答えを答えなかった。
これは確実に変なことだな。
とりあえず、本居の方に彗を招き入れた。
離れの方に入れないのは、少し、ほんの少しだけ散らかっているからだ。
「それで、なんの相談だよ」
俺はソファに腰掛けた。
「それがな、______」
彗が話し始めた。
学校の文化祭で、後夜祭があるんだけど、その後夜祭が俺の学校では少し特殊でさ。
男女1組になって、体育館を舞踏会みたいにして、持参でドレスを持っていくんだ。
それで、その男女の組み合わせは自分たちで決めないといけないんだ。
確かに、俺はモテるからすごく誘われるんだけど、一人だけ選んでしまうと、その子が他の女子に睨まれるだろ?
それでさ、考えて思い出したんだ。
学校外でも、片方が学校の生徒なら、男女の組み合わせを作れる。
でも、学校外でも女子の知り合いはいない。
それに俺一人っ子だし。
だから、身長も女子みたいで、線が細いお前に今相談してるんだ。
「ってことで、女装してくれない?」
彗がすごく軽いノリで頼んだ。
「はぁ?なんでだよ」
俺は意味がわからないとでも言うように、怒った。
「だってさ〜、俺が特定の女の子を選んだらかわいそうだろ?それに、お前しか頼む奴がいないんだよー」
彗がぶつくさ何か言っている。
すると、搖斗が飲み物を持って入ってきた。
「どうぞ」
搖斗が俺と彗の前に飲み物をゆっくりと音が鳴らないように置いた。
「搖斗、ありがとう」
俺は優しさが溢れ出てる搖斗を幸せそうに眺めた。
「え、搖斗くん?本当に?」
彗は驚いた。
まぁ、何年も前にしか会っていないしな。
「うん。久しぶり、彗兄」
搖斗が落ち着いた声で言った。
「すごいかっこよくなったな。北斗とは比べ物にならないくらい、」
彗は驚いて穴が開くほどに搖斗を見ていた。
「そうだろう!って、俺と比べ物にならないってなんだ」
搖斗を褒められて俺は舞い上がった。
けれど、その後の言葉にイラッときた。
「彗兄。兄さんは昔も今もかっこいいよ!」
搖斗は彗の言葉に反感した。
「そうだった、お前ら兄弟はどっちもブラコンなんだった、」
彗は思い出したようにため息をついた。
そして、何かを思いついたようで、表情がパッと明るくなった。
「搖斗、北斗の女装姿、見たくないか?」
彗はニヤリと怪しく笑った。
「え、見たい」
搖斗は真顔で答えた。
「なら、こんな感じの見た目はどうだ?」
「すごくいい!なら、こんなドレスは?」
搖斗と彗はどんどん話を進めていく。
「え、ちょっと?え?え?」
北斗は搖斗や彗を止めようとするも、何も聞こえていないみたいに止まらなかった。
「なんか、幽霊になったみたいだ」
俺はぼそっと言った。
そして、二人を止めるのを諦めた。
北斗は二人の話が終わるまで魂が抜けたように座って待った。