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第六話 斬撃

「お、お、お、おい。わ、私が相手だ」


 緊張する……。魔法少女っぽいセリフで登場しようにも自信がなかった。足はまだガクガク震えている。


「お前はなんだ」


 ハサミマンが睨んでる! 怖いけど勇気を振り絞って答える。


「私はセイントブラック。街の平和を守るんだ!」


 そう言ってシュバルツを構える。街の人たちは端に避難し、私を見守ってくれていた。


「頑張れー! 魔法少女さん!」


 声援が私の背中を押す。本当に魔法少女になったって感じ。アニメでもよく出てくる。


「くらえ!」


 ハサミマンが刃を振り下ろしてくる。ヤバい、避けきれない!

 目の前を刃が通る。

 前髪切れちゃった……。なんて言っている場合ではない。次は本当に怪我するかも。大丈夫、シュバルツがある。反撃だ。


「やあっ!」


 シュバルツをハサミマンに振り下ろす。しかし、腕のハサミで受け止められてしまった。

 ダメか……。と思ったその時。

 激しい金属音と同時に、ハサミマンの刃は砕け散った。ハサミマンも、群衆も、そして一番驚いているのは私だ。シュバルツにこんな力があるなんて……。


「お、おのれえ! こうなったら本気を出してやる!」


 ハサミマンの残った右腕が巨大化した。私の身長の1.5倍くらいはある。今度こそ本当にやられるかも。シュバルツを構え直して相手の方をしっかりと見る。


「消え去れ!」


 ハサミマンが右腕を振り下ろす。

 大きくなった分だけ動きは遅かったため、先ほどよりは余裕を持って避けられた。刃は道路標識に当たり、真っ二つになった。

 敵に隙ができたところで、右腕の大きな刃にシュバルツを振り下ろす。


「えい!」


 刃の中央に命中。刃は真っ二つに折れて地面に刺さった。これで両腕のハサミはなくなり、素早い斬撃は繰り出せない。


「ぐっ……、こうなったら!」


 最後に悪あがきのごとく、頭のハサミで突撃を繰り出してきた。今までの攻撃を攻略してきた私にとって、もはや見切るまでもなかった。


「私の本気の一撃、くらえー!」


 心なしか勝気になる。シュバルツを大きく振りかぶって、ハサミマンに振り下ろす。


「グワアアアアアア!」


 断末魔とともに消滅。銀色の光はシュバルツに吸収された。


「やった……。私でも……、勝てた!」


 周りの人が見ているので飛び跳ねたいのを我慢しつつ、心の中ではその嬉しさを噛み締めた。

 群衆は私に拍手を送る。その中には、小さな女の子もいる。


「魔法少女ちゃん、ありがとう!」


 とても嬉しかった。人に認められることなんて、今までなかったから。自分にだってできることがあると分かったから。

 群衆に見守られながら道の端に寄り、買った魔法少女のフィギュアを持ってそそくさと一目のつかない場所に逃げた。注目されすぎて爆発しそう。


 ☆


「琴音! 大丈夫だった!?」


 家に帰るとヴァイスが心配して待っていた。なんで戦ったって知ってたのかな。


「ただいま、ヴァイス。なんとか勝てたよ。前髪切れちゃったけど……」

「通信装置に反応があってね。だけど間に合わなくて」

「いやいや、大丈夫だよ。これで魔法少女として一歩前進できたし」


 ステッキを見つめながら答える。


「そうか。よかったねえ」

「うん、私もっと頑張るよ!」


 新たな目標が私にはできた。強く、そして優しくなりたいと……。今回見た人たちの声援。それは私にとって忘れられない経験となった。まだまだ未熟だけど、もっと強くなって平和を守る!

 しばらくヴァイスと話していたところ、通信装置が鳴った。赤澤先輩からだった。


『琴音、魔物倒せたみたいだな! おめでとう!』

「あっ、どうも」

『それで、明日司令部に来てくれない? ちょっと話したいことがあるんだ』

「分かりました」

『じゃあ明日、司令部で!』


 通信は切れた。なんだろう、話って……。内容も伝えずに切るなんて、赤澤先輩らしく自由だ。いや、こちらからしたらやや迷惑だけど。

 とにかく、悪いことではなさそうなので楽しみにして明日を待つことにしよう。

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