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魔将シュロウガー2

シュロウガは力を見せろといった。つまり、こちらを殺すつもりはないということだ。殺されないのなら負けても問題ない。冷静に分析すればそういうことだ。しかし――

(本当に殺されないのか?)

 生殺与奪は勝者の権利、敗者には何の権利もない。生き延びたいのなら常に勝ち続ける、悪魔にとっては常識だ。

 そのうえで問う、負けても本当に問題ないのかと。

(やはり悪手だ、ならば正体を明かすか?)

以前までなら何の問題もなかったが――

(いや、それもダメだ。遺物の存在が明らかになった以上、唯一の情報源を失うのは痛手過ぎる。どう考えても、魔王アトライアスより、シュヴェリアの方が遺物の情報は集めやすい)

 ――ならばどうする、勝ちに行くしかない。

 短い時間の中で答えを導き出すシュヴェリア。剣を抜き、仲間たちに支持を出す。

「カルナ、メル、魔術の準備を」

「え……オ、オーケー」

「マジですか、やるんですか!?」

 引きつる後衛2人、しかし、ちゃんと戦闘準備をしていることを確認し次に進む。

「ステラ、私と共に前衛だ。敵の気を引いてくれ、ただし、無理はするな。一撃受ければ致命傷だ」

 コクコクと頷くステラを確認し、目線をクレハに――

「クレハは自衛に専念してくれ」

「え?」

 キョトンとするクレハ。正直言いづらいことではあるのだが今回ははっきり言っておかなければ他の面々の命が危ない。

「シュロウガ相手に銃弾ではダメージが見込めない、下手に攻撃して危機に陥られても助けに行けないだろう。だから、そのリスクを失くすために自衛だ」

「――でも」

言葉を切り出したクレハの肩を優しく叩くステラ。自分たちに任せろ、目線がそう語っていた。

言葉を呑むクレハ。銃を握りしめたまま後ろへと下がる。

「では――行くぞ!!」

 シュヴェリアの掛け声で一行は駆けだす――




「――ナイトメアシンドローム」

 駆け出したシュヴェリアめがけて、魔術を放つシュロウガ。シュヴェリアは懐から出した瓶を割った。

シュヴェリアの周囲に魔法陣が刻まれ漆黒の闇に包まれる。

「シュヴェリア様!!」

 いきなりの事態に、魔術を回避しながら叫ぶステラの声が響く。

 魔術が発動し、シュヴェリアが闇に呑まれた。――直後。

「はぁああ!!」

 包まれた闇の中から飛び出し、シュロウガに向かい飛びかかるシュヴェリア。

「!? ダメージ覚悟デ近ヅイテ来タノカ!!」

(ご名答、私の装備ならある程度の闇抵抗がある。無効とまではいかないが、多少ダメージを負ってでも――)

 一気にシュロウガの目前まで足を進めたシュヴェリアはストレングスアップの魔法をかけ、そのままスキルによる攻撃を放つ。

「――真・紅破」

 シュロウガの顔面にシュヴェリアの剣撃が炸裂する。その剣激は爆砕し、シュロウガの表皮を砕いた。

「!? 何ダト」

 驚くシュロウガをよそにシュヴェリアは叫ぶ、

「今だ! 叩き込め!!」

 遥か後方でその叫びを聞いたカルナとメルの魔術が火を噴く。

――ホーミングレーザー

――フレイムランス

 一直線に飛んだ魔法はシュロウガの抉れた外層をとらえた。

「ステラ!!」

 シュヴェリアの叫びにハッとしたステラがシュロウガの身体を駆けて登りだす。

「オノレ!!」

 シュロウガは目前のシュヴェリアに向けて手を伸ばすが、シュヴェリアは捕まらない。

 伸ばされたシュロウガの腕を足場にし、シュロウガの後頭部へと剣を向ける。ストレングスアップの効果が続いていることを確認し――

「――紅蓮!!」

 振りかぶった剣はシュロウガの頭を強く叩く。倒れる様に吹き飛んで行くシュロウガの頭部。

 そのまま落下していくシュヴェリア、途中でシュロウガの胴体を登っていくステラとすれ違った。

「使え!!」

 懐から取り出した瓶をステラに投げる。攻撃力を一時的に強化する魔法薬だ。

 ステラは走りながら受け取ると蓋を外し、一気に飲み干す。

「グウウ――」

 何も知らないシュロウガが身体を起こすと、そのタイミングでシュロウガの身体を登り切ったステラが大きくジャンプ、槍を構えた――

「――スキル――山茶花」

 遺跡の天井を蹴り、下方に槍を構えたステラが一直線にシュロウガに向かい落ちていく。

 狙うは一点、先ほどシュヴェリアが食い破った外皮の剥けた場所。

「グギャァァァァァァァ!!」

 一筋の閃光のように落ちたステラの槍はシュロウガの悲鳴を引き出した。

「ステラ、避けろ!!」

 続いて聞こえた叫びのままステラはその場を離れた。

 すぐさま2つの魔術がシュロウガの頭部を襲う、カルナとメルの魔術だった。

 大爆発がシュロウガの頭部を襲う。




「す、すごい――」

 シュヴェリアたちの戦闘を見ながらメルたちの背後で様子を見ていたクレハは声を上げた。

 あの魔将相手に一歩も引けを取らないシュヴェリアたちの連携。敵に攻撃を許さない戦い方にクレハは圧倒されていた。

 自分にも何か出来ないかと思いながらも、あの戦いに自分が加わることなどとても出来ないという思いがクレハの中で両立していた。

「これなら、魔将が相手でも――」

 倒せる、やはりシュヴェリアの力は本物だ、彼こそが待ち望まれた『勇者』なのだ。

 そんな願望にも似た思いを抱きながら彼らの闘いを見つめる。

 戦うことは出来なくても、何か皆のために出来ることを、そう思って銃を持つ手を握りしめる。

 皆が無事に勝てることを願って――




「人間ゴトキガ――!!」

 魔術の爆破をかき分け現れたシュロウガは両手を駆使し、シュヴェリアとステラに攻撃を謀る。

 自身のスピードを上げる魔法を駆使しその攻撃を避けるシュヴェリアとステラ。

 その隙に詠唱を始めるシュロウガ。

「いや、これは――」

「狙われてるんですけど!!」

 後衛を潰しに来たことを悟り取り乱す、カルナとメル。

「ぼ、防御魔法を――」

【詠唱を止めるな!!】 

慌てて詠唱を止めようとしたメルの脳裏に響くシュヴェリアの声。

思わず「ひぃ」と声を上げ、身体をびくつかせる。カルナが首を傾げた。

【奴の魔術はこちらで何とかする、お前たちは攻撃の詠唱を維持しろ!】

 んな無茶な、目の前に刃物持って走って来てる奴がいるのに無視しろとはどういうことやねん。

 メルの頭の中でそんな思考が回っていたが、無茶しなければ勝てる相手やないやんけ、と思い直し、叫ぶ。

「カルナさん、向こうの攻撃はシュヴェリアさんが責任持って止めてくれるそうです!!」

 多少希望的になったがシュヴェリアからの伝言をカルナへと伝えたメル。

「……オーケー、信用しよう!」

 カルナは少し楽しそうにそれに頷いた。

「――消エロ、ナイトメアシンドローム」

 シュロウガが詠唱を終え、魔術が発動する。

 メルと、カルナの周囲に魔法陣が浮き上がった。

「うわぁぁぁぁ、シュヴェリアさん、責任もって何とかしてくださいぃぃぃ!!」

 メルが涙目になりながらシュヴェリアに懇願する。カルナも暗い面持ちで詠唱を続けていた。

 魔法陣から闇が噴き出し、魔法発動寸前の状態へと移る。

「馬鹿! 嘘つき!! 何とかするって言ったのにぃ!!」

 メルが半狂乱で叫んでいた。それでも詠唱を止めないのは流石だ。

 パリン、とどこかでガラス瓶の割れた音がした。

シュロウガの大きな瞳がそれを捉える。シュヴェリアが何かの瓶を地面に投げて割っていた。

「――それなりに値の張る物だが、仕方あるまい」

 瞬間、発動仕掛けていたシュロウガの魔術が掻き消える。

「コレハ――!!」

「マジックディストラクション(魔法消滅魔法)を発動させるアイテムだ!」

 驚くシュロウガに言い放つシュヴェリア。

「シュヴェリアさーん!」と歓喜に満ちたメルの声が奥から響いて来た。全く騒がしい奴だ――まあ、嫌いではないが。

「クッ、コレホドノアイテムヲ……貴様一体――!」

「旅の剣士、シュヴェリアだ!!」

 シュヴェリアの一撃がシュロウガの腹部を捉えた。

「いただくぞ!!」

渾身の力を持って振られた剣はシュロウガの腹部の外皮が砕く。

「グオオ――!!」

「椿!!」

 すかさずその裂け目に向かいステラがスキルを叩き込む。再びシュロウガの叫びが響いた。

「シュロウガ、お前は強い。しかし、私以外を敵ではないと判断した、そこが敗因だ!!」

 初めの魔法でシュヴェリアだけではなく、ステラも狙っていたら、もしくはセオリー通り後衛を先に潰しに来ていれば戦況は全く逆だっただろう。だが、シュロウガはシュヴェリアのみを狙ったその瞬間、シュヴェリアには勝ち筋が見えていた。

「終わりだ、シュロウガ!!」

 叫ぶと同時に後方から風と炎、2つの魔法がレザーのようにシュロウガの腹部に打ち込まれる。

 その魔術を飛び避けたステラとシュヴェリアは魔法による攻撃が終ると同時にスキルを発動し、外皮の破けた腹部へと攻撃を仕掛けた。

 洞窟内にシュロウガの叫びが響き、地響きと共に戦闘は終了する。

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