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遺物探索ー3

遺物が封印されているだけあり、その空間は遺跡とは少しばかり違う場所だった。

「なんだか不思議な場所ですね、神聖な気分になります」

 クレハが呟くと深冬がそれに頷いた。

「なんだか世界樹に行った時のことを思い出しますね~」

 ステラまでそんなことを言いだす。

(神聖な気分か、悪魔にもそういう催しはなくはないが……)

 今一つ、神聖な気分というものには疎い、悪魔ゆえなのかもしれないが……

 そんなことを考えながら進んでいると道の突き当りまで来た、扉に手をかける。

 両開きの扉は限りなく重かった。

「…………」

「鍵がかかっているんでしょうか?」

「そんな話は聞いてませんが……」

 ステラを見ると、扉から距離を取っていた。

「流石だ、ステラ、同時に行くぞ!」

「は~い」

「え? ステラさん? シュヴェリアさん??」

 クレハが疑問を浮かべたときだった、シュヴェリアとステラが同時に駆けだす。

「ちょ、ちょっと2人とも!!」

 気付いた深冬が声を上げるがもう遅い。2人の飛び蹴りが扉に炸裂する。

「開きました~」

 強引に扉を開けたにも拘らずステラの様子はいつもの調子だった。

「ちょ、“開きました~”じゃないですよ!! どうするんですかこれ!」

 怒る深冬をシュヴェリアがなだめる。

「問題ない。遺物を回収したらここはもう用済みだ。誰も文句は言わんだろう」

「それはそうかもですが……」

 やはり深冬は真面目なタイプのようだ、このような攻略の仕方はお気に召さないらしい。

(だから黙ってやったのだが――)

 シュヴェリアは壊れた扉を押しのけると、奥に向かう。

「行くぞ、遺物を回収するのだろう?」

「っ~解りましたよ」

シュヴェリアが奥へといざなうと深冬は頭を抱える様な素振りをしてついて来た。

クレハが苦笑いをしていた。

「ここが目的地のようだな」

 壊れた扉の横をすり抜けると、そこには祭壇のようなものがあった。

「じゃあ、あそこに遺物が――」

 深冬が駆け寄る、たちまちその顔が驚愕に変わった。

「シュヴェリアさん、これって――」

 近づいたクレハと、ステラの表情も驚きに変わる。

「……これは」

 まさかの事態にシュヴェリアも言葉を失った。

 何かを祭るように作られた祭壇、その上には何かを置く用の台座が置いてあった。だが、その上に遺物ものはない。何かが置いてあった形跡はあるものの、遺物自体は何処にも見当たらなかったのだ。

「どういう……」

 言葉にならないのだろう、それだけ言ってこちらを向いた深冬に残酷な事実を突きつける。

「遅かったということだ、すでに何者かに回収された後だったということだろう」

「回収されたって、誰に! ここは封印されてたんですよ!?」

 ここに至るまでの仕掛けを見る限り、別の侵入方法やルートがあるとは考えにくい、となると最も高い可能性は――

「先代の勇者の子孫、もしくはその関係者だろうな」

「そんな、だったらなんで、リーダーがそのことを知らないんですか?」

「クロスさんのご祖先の目を盗んで奪取したからじゃないでしょうか?」

 真剣な面持ちでステラが口を開いた。

「長い歴史の中で私たちエルフの里でも同じようなことが起きています。貴重な物であればあるほど、利己的な考えをする者を引き寄せてしまいますから」

ステラの言葉に悔しそうにうつむく深冬。

シュヴェリアとしても残念な結果だ。折角、手に入れた情報が無駄になってしまったのだから。

(遺物の形状も解らないのでは探しようもないしな、どうしたものか――いや、まだクロスの方面からから情報を当たれるか)

 シュヴェリアの目的は遺物が魔王軍に向けられる前に回収することだ。魔王軍に遺物の力が向いていない以上目的は達成可能だ。

 なんにしても今は――

「用は済んだ、ここから脱出するぞ」

 相当ショックだったのか力なく頷く深冬とステラを連れて外に出る。

「ん? クレハ?」

 部屋の外に出て見回すとクレハの姿がなかった。何もしゃべらないものだからてっきり先に外に出たものだと思っていたが――

「クレハ? どうした、クレハ!」

 クレハは部屋の中にいた。祭壇を見てぼーっとしている。

「クレハ、どうしたのだ、しっかりしろ!!」

 シュヴェリアは駆け寄り、クレハの肩を掴み、声をかける。

 クレハはボーとしたままどこか虚ろに

「声が……聞こえる」

 と呟いた。

(これはまずい!)

 シュヴェリアはクレハを抱え上げると部屋の外まで運び出す。

「シュヴェリア様、どうしたんですか!?」

「解らん。だが、クレハの様子がおかしい。何かのトラップにかかったのかもしれん」

 クレハを横にするシュヴェリア、するとすぐにクレハは気が付いた。

「クレハ、大丈夫か」

「シュヴェリアさん、あれ私どうして部屋の外に?」

「覚えていないのか?」

「あの部屋の中で、祭壇を見ていたらなんだか意識が遠くなって……」

「声が聞こえると言っていたぞ?」

「ああ、そうですなんだか懐かしい声が聞こえて――」

 そのまま寝息を立て始めたクレハ。「てい」とステラがクレハの顔面にチョップを入れた。

「痛い、何するんですか!?」

「こんなところで寝るからでしょ、女の子がはしたない!」

 酒瓶抱えて寝るのはいいのか? 非常に大きな疑問が浮かんだが話がそれるので黙っておくことにした。

「なんにしても大丈夫そうだな、急いでここから出るぞ。空振りだった上に魔将にまで会っていたのでは冗談にもならん」

「はい」

「そうですね~」

「急ぎましょう」

急いでその場を後にするシュヴェリアたちは途中でメルとカルナと合流し、クロードの居場所を目指す。

「あ、いた。クロードく~ん」

 遺跡の出口付近まで来たシュヴェリア一行はクロードを見つけ、ステラが声をかけた。

 しかし――

「何か様子が変ですね?」

「もしかして、クロードの奴戦ってるのか?」

「だったら援護しないと、あの曲がり角の向こうに魔獣がいるんですよね」

 駆けだすステラ、それに続くクレハと深冬。数歩走り――

「!! 待て!!」

 シュヴェリアが叫ぶより先にクレハたち全員が重いプレッシャーのようなものを感じる。

「な、何?」

「足が震えて――」

「身体が動かない……」

 駆けだした3人は口々に立ち止る。

「ちぃ!!」

 シュヴェリアが振り返ると、カルナの顔色も悪くメルに至ってはフードを被り込んでうずくまっている。

「いる、絶対いる!!」

メルが悲鳴のような叫びを上げた。

よく見ればまだそれほどダメージを受けてないにも拘らずクロードの顔色もすこぶる悪い。

「どうやら最悪な展開みたいだよ、シュヴェリア君」

 シュヴェリアはついに選択を迫られた。そうこの先に居るのは――

 魔王アトライアス軍――魔将シュロウガ。


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