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遺物探索ー1

(やってしまった――)

 ウンブラの会議室を出たシュヴェリアは柱に手を当て苦悩する。

 本来、体よくリーゼ村のことを押し付けておさらばするはずだったのだが、とんだことに巻き込まれた。おまけに帝国を救う約束までしてしまった。これは完全に計算外だ。

(いや、しかし、このまま放って置いたら、我が軍に負担がかかるわけだし、その前に事前に私が動いて潰すのは何も悪いことではない。帝国がこんな状態ではリーゼ村を護るどころではないしな)

「良かったのかいシュヴェリア君」とニコニコしながら聞いて来るカルナに嫌気がさしながらもどうにか自分を説得し、立ち直る。

「シュヴェリアさん、すごいです。かっこよかったです!!」

「シュヴェリア様、私、感動しました~」

 羨望の眼差しを向けてくるクレハとステラ。本人に悪気はないのだろうがやらかしてしまった身としてはこの視線はつらい。

 ――ふと、メルと目が合った。

「フッ――」

 ざまあみろと言わんばかりのその視線に腹が立つ!

 ええーい、約束してしまったものは仕方がない。ささっと解決して戻るだけだ!!

未だ会議を続けるウンブラの面々に意識を向けた。




「……すごかったな、あの人」

「ええ、この状況を何とかするなんて普通言えないわよ。流石は英雄ってところね」

 会議室の中でも先ほどのシュヴェリアの振る舞いに談議が盛り上がっていた。

 大きく息を吐くクロス。

「しかし、まさか泣き出すとは思わなかった。君もなかなかだな」

「クロス、失礼なことを言わないでもらえますか? 私もただのお芝居であそこまで泣いたりできません」

「え? そうなんですか、てっきり、演技なのかと……」

 フェルティナの顔色が変わる。

「クロード、貴方――」

「すみません、私も演技だと思ってました」

「深冬まで――」

 フェルティナの目尻に涙が浮かぶ。

「皆さん、どれだけ私を腹黒だと思ってるんですか――!!」

 フェルティナの叫びが室内に木霊した。

「王女、聞こえるぞ、流石に」

 クロスの言葉に慌てて口をふさぐフェルティナ。

 クロードと、深冬が苦笑いをする。

「――で、シュヴェリア殿にはどこまで情報を開示するつもりだ」

 クロスが尋ねるとフェルティナは口元に手を運び。

「――全て開示しましょう」

 と告げた。

「「!!」」

 驚きの声を上げるクロードと深冬。

「いいのか?」

 クロスが尋ねると、フェルティナは静かに頷いた。

「こんな無茶な依頼を引き受けてくださった方です。こちらも信用しなければ、不義理というものでしょう。それに、そんなことを言ってる場合でもないですから」

 フェルティナの言葉はそのまま状況が切迫していることを示している。

「そうか、解った、ではさっそく例の件の調査を協力してもらう」

「魔将の存在が調査の邪魔をしていたという、あの件ですね。解りました」

「あの件に関わらせるってことは――」

「本気みたいね」

 フェルティナとクロスが段取りを整える隅で、クロードと深冬はフェルティナの発言の信憑性を確認しあっていた。

「深冬、クロード、例の件の調査を再開する。シュヴェリア殿たちもつれて行ってくれ」

「了解です」

「了解!」

「あ、待ってください、2人とも」

 部屋を出て行こうとするクロードたちを止めるフェルティナ。

「どうしました?」

「私がここで泣いたことは他の人には内緒ですよ?」

「そっちも了解っす」

 ウインクしながら唇の前に人差し指を立てるフェルティナにクロードたちは手を上げて返した。




「王女は腹黒なんですか?」

 部屋を出て来たクロードたちにメルが尋ねた第一声はそれだった。

「やっぱり聞こえてたか……」

 クロードが対処に困り、深冬に視線を送る。

「えーと、少なくとも今回のはお芝居じゃないみたいよ」

 膝に手をついて、メルの視線に合わせて話す深冬。

 メルは頷くと――

「だって、よかったですね、騙されたんじゃなくて」

 と、シュヴェリアの方を向く。

「私が聞かせた様に見えるからやめてくれるか?」

 シュヴェリアはうんざりしたように答えた。

 クロードと深冬が苦笑いを浮かべた。

「それで、我々は何をすればいい?」

 シュヴェリアが尋ねると、深冬が答えた。

「過去に存在したの遺物の調査です」

「遺物?」

ステラが首をかしげると、深冬が説明を始めた。

「今から100年前、女神がもたらしたとされる神器です」

 ――は? 思わず言葉を呑むシュヴェリア。今日ここに来て色々驚いた気がするが、今日一、いや、なんなら、人間の姿になって以来、一番驚いたといってもいいかもしれない言葉だった。

「今から100年前、イルミア大戦と呼ばれる、魔王軍と人類の存亡を賭けた戦いがあったのはご存じですよね」

「はい、勿論。歴史書の中での話ですが……

 あ、でも、ステラさんや、カルナさんは実際に体験されてるんですよね?」

「え、あ、はい……ま、まあ……」

「僕は戦いには参加してないけど、まあ話には聞いてるよ」

クレハの問いかけに答えるステラとカルナ。

スゲー、流石、エルフと賢者とクロードが呟いていた。

「その戦いで使われた人の武器はどれも女神の力を宿した、女神がもたらした武器でした。でも、全部とある1つの遺物の模造品だったんです」

「え、それって勇者アルビオの剣もですか?」

「はい、勿論、勇者の武器は特別製だったのは間違いないようですが、模造品だったのも間違いないようです」

(な、なんだ、その話は、初耳だぞ!?)

 わなわなと震えるシュヴェリア、聞いたこともない話にただただ驚愕していた。

「そのオリジナルである遺物はそれらの模造品の数十倍から数百倍の力を秘めているといわれているそうです。ですが何故か女神はその異物を使うことなく敗北し、遺物は地上に残されたままとなりました」

「ち、地上にだと!!」

 堪えきれなくなり深冬に食ってかかるシュヴェリア。突然のことに困惑する深冬。

「あ、いや、すまない。続けてくれ……」

 シュヴェリアが取り乱すなど珍しいため、周りから奇異の目が向けられたが、今は相手にしている余裕は無い。シュヴェリアは冷静に、心を落ち着ける。

「は、はい。恐らく、その遺物については魔王にも知られていないはずです。私たちが情報を独占しているといっていい。ですから、今のうちに手に入れたいのです」

「なるほど、それで、その遺物のある場所を探そうという訳ですね」

「ですが、1つ問題がありまして」

「な、なんだ?」

 きわめて平静を装って質問するシュヴェリア。今度は深冬も普通の反応で答える。

「その遺跡付近に魔将が居るのです。魔将シュロウガ、魔王軍の将です」

「魔将はかなり強い。だから今まで調べることが出来なかったんだ。

だが、シュヴェリア殿なら――」

(なるほど、私に、シュロウガの相手をさせようという訳か……)

 しかし、これは…… 普段なら確実に断る案件だ、だが、この話が事実だとするととんでもない問題だ。魔王軍の脅威となる存在がこの地上に眠っているのだから。無論、誰でも扱えるものではないが、扱えるものが出てくれば現在の支配体制に影響が出るかもしれない。

 どうすべきか思考するシュヴェリア。

「……魔将は強敵となるだろう、ゆえに聞いておきたい、この情報に命を懸ける価値はあるのか?」

「……信憑性ですね。おっしゃる通りだと思います。雲をつかむ様な話ですから、ですが真実だと思います」

「根拠は?」

 シュヴェリアが、深冬に詰め寄ると、深冬はクロードと目を合わせた。彼女たちは頷き合い、告げる。

「我々のリーダーであるクロスフォードは勇者アルビオの子孫にあたるからです」

「ええ!?」

「なんだと!!」

 驚く一同、クレハとシュヴェリアに関しては声まで出してしまっていた。

「クロスさんが勇者アルビオの……」

 ステラがどこか感慨深げにつぶやいた。

「勇者アルビオの家計だからこそこの情報が伝わっていたんです」

「な、なるほど……」

 言ったはいいがシュヴェリアは意識が半分どこかに行っていた。

 あいつ、子供いたのか、とか、なんか悪い事したな、とかそんな言葉ばかりがあふれてくる。

(いや、待て、あれは戦争だったのだ、あいつだって家の部下を何体も殺してくれた、条件は同じ――ちがーーーう!! そうではない。もっと、重要なことに思考を割け私!!)

 驚愕の事実をいくつもぶつけられ思考がこんがらがっていた。

 心を落ち着け平静を保つ、問題なのは遺物の存在の可否だ。もし、そんなものがあったとすれば放置するわけにはいかない何を置いても回収を優先すべきだ。魔装アクティムの出自を考えるとそれと同程度の力を持つ遺物が女神側にあってもおかしくはない。女神がそれを持って地上に来ていたかどうかは定かではないが可能性はゼロではない。今考えれば、あれ程大量の神聖の力を宿した武器を生み出せたのは、その原型オリジナルとなるものがあったからだろう。

(アクティムに匹敵する遺物、もし使いこなすものが現れれば現状をひっくり返す可能性は十分にある、我々(悪魔)にとって最優先すべきは――)

「――ヴェリアさん、シュヴェリアさん」

 ふと、名を呼ばれていることに気づき顔を上げる。クレハが心配そうに自分のことを覗き込んでいた。見回すと周囲も同じようにシュヴェリアの動向を伺っている。今度はどうやら考えることに集中していて周囲の話を聞いていなかったようだ。

「すまない、少し考え事をしていた……」

 思わぬ議題を放り込まれたとはいえ少し右往左往しすぎたと謝罪する。

「いえ、大丈夫です。唐突な話だとこちらも自覚しているので――、動揺されるのも無理はありません。――少しお時間を置きましょうか?」

「いや、大丈夫だ」

 深冬の言葉にそう返すと、シュヴェリアは口元に手を運んだ。

「シュロウガ――その魔将のいる場所の近くの遺跡か何かに遺物があるとして、魔王軍に発見される可能性はないのか?」

「ゼロとは言い切れないが、ほぼないと思うぜ、遺物は神聖な力で封印されている。リーダーが受け継いでいるこの秘石がなければその空間を開けることは不可能だ」

 クロードは言いながら手にした石を見せる。何らかの力を宿していると思われる水晶のような石を。

(なるほど、そんなものまで受け継がせているということは本当にその遺物とやらは残されているようだな)

 シュヴェリアは遺物の存在に確信を持つと、覚悟を決めた。

(部下と戦うなどもっての外だがこの件ばかりは仕方がない、彼らに協力し遺物入手後、どうにか遺物を奪取する!)

 ――最悪、何人かには手を下すことになるだろうがな……

 ウンブラの人間たちはまっとうな者が多いだろう、正直むやみに殺すのは避けたいところだが、事態が事態だ、そうもいっていられない。

部下と戦う決意までしたシュヴェリアが人間ごとき殺せないはずはなかった。

「いいだろう、その遺跡とやらに向かうとしよう」

 シュヴェリアの声に全員が頷き、出発準備を始める。

 

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