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リーゼロットの騎士ー4

「何者だ!」

 突然現れたシュヴェリアに向かい剣を構える帝国兵、剣を抜いてもいないシュヴェリアに対し切りかかる。

「待て!」

 リュークが止めるのも聞かず一刀――

 その刃はシュヴェリアの直前で停止し以降、どれだけ力を入れても動かない。

「な、なんだこれ、どうなってる!?」

 帝国兵は声を裏返しながら剣を持つ手を震わせていた。

「邪魔だ!」

「が――!!」

 シュヴェリアの声一つで吹き飛ぶ兵士、ただ者ではないことが一瞬でその場の全員に伝わった。

 リュークも抜刀し名乗りを上げる。

「私はリューク=ハイナン、サダムスト帝国――」

「結構、存じている」

 シュヴェリアがゆっくりと腰の鞘から剣を抜く。

 その時間を息を呑んで待つ一同。

「私の名乗りを期待しているのなら無駄だぞ、前来た奴にも言ったが、死にゆくものに名乗る趣味はない」

「やはり貴殿か、クレイモアが言っていたのは――」

 人知れずシュヴェリアを囲むように陣形を動かしながらリュークはシュヴェリアに対峙する。

「ほう、奴は無事国に戻ることができたか、運がいいものだ」

「死にもの狂いで帰って来たといっていたよ。言葉の綾かと思ったが、どうやらそうでもないようだ」

 陣形を整え、タイミングを見計らう。チャンスは一度、目の前の剣士から感じる気迫がそう言っていた。

「『刃技』――!」

 リュークの声と共に、シュヴェリアを囲む全員が何かしらのスキルを使用した斬撃を繰り出した。

 数多の剣撃が、シュヴェリアに襲い掛かる。

(よく統制されている。流石は国トップの兵士たちだこれまでの有象無象とは話が違う)

 だが――

 シュヴェリアはその剣撃すべての動きを見切り、刃の届かない場所へと身体を運ぶ。

「なめるなよ、こちらは人類屈指とやり合っている!!」

 剣撃全てを掻い潜ったシュヴェリアは剣を鞘に納めた。途端にリューク以外の帝国兵がその場に倒れた。

「な、馬鹿な……」

 何が起こったのか理解できずリュークの言葉がむなしく木霊する。

「今の陣を抜けただと? そんなこと出来るはずが……」

 ふと、リュークの頭を過去の記憶がよぎった。リーゼロットがサダムストに敗れた瞬間その時の記憶が――

(まさか、有り得ない。あの男と同じ領域の人間がもう一人いるというのか!?)

 震える腕を押さえて剣を握りなおすリューク。たった一人になっても引く気は無いようだった。

「ほう、まだ戦えるか、良いだろう」

 シュヴェリアも剣を抜きなおす。

「行くぞ――」

「『刃技』四光!」

「瞬刃!」

 1対1の闘いが始まり、2人の剣撃の音が周囲に木霊する。




「は、はは……すげぇな、兄ちゃん本当に賢者様だったんだな」

 対岸の様子を見て、ゲンは言葉をもらした。すぐ近くでは賢者カルナが帝国兵に猛威を振るっていた。

「あれ、信じてなかったの? 何度も言ったでしょ? 僕は賢者だって」

 飄々とした様子でそういうカルナは、言いながら帝国兵を吹き飛ばしていた。

「いや、旦那が言うんだ、信じてないてことはないけどな、それでも半信半疑だったんだ。だってそうだろう、いきなり現れて伝説上の存在ですって言われてもなぁ」

「まあ、確かにそうだねぇ」

 笑いながら敵を倒すその様子はさながら狂気を感じさせるものであった。

 クレハもおとなしく狙撃に徹しているがこれを見せられては内心穏やかではないだろう。

 ステラもそうだ。門の扉が破られたので飛び出したはいいがあまりの状況に橋を渡ることが出来ないでいた。

「作戦では私出てって戦わないとなんだけど……これ、出ていけないよね」

 呆然としていると、仕事を終えたメルがやって来た。彼女は黙ってステラの隣に立つと、そこからの光景を観察、しばらくして、ステラの服を引っ張ると、

「出て行かないんですか?」

「メルちゃん!?」

 満面の笑みでそんなことを言うものだからステラお姉さんは大層心を抉られたそうだ。

「さて、そろそろ、向こうも決着が着いたかな」

 カルナは魔法を使っていた手を止めると、敵陣の様子に目を凝らした。

 流石に、この惨状でまだ戦おうとするものは居ない。皆、後退に専念していた。

「後はシュヴェリア君次第かな」

 カルナは村人たちに終了の合図をだした。




「『刃技』一閃!」

「刃風」

「『刃技』両断!!」

「紅蓮!」

木々に囲まれた中で撃ち合う2人の剣士。一見すれば拮抗しているように見えるが、実際はリュークがかなり追い込まれていた。一撃一撃が重く、攻撃を受け流すのがやっと、たまに攻撃が入ってもダメージを与えている気配が微塵もない。精神も肉体も限界に来ていた。

「くそぉぉぉぉ!」

 最後のチャンス、渾身の力を込めて蹴り飛ばすが目の前の剣士はそれを腕で難なく払い、剣を振り下ろす。

「終わりだ」

 斬撃を剣で防いだ。防いだにもかかわらず、リュークの肉体は後方に吹き飛ばされる。

「ぐぅう」

 木にぶつかりどうにか止まる。もはや立ち上がる力すら残ってはいなかった。

「勝負ありだな」

 止めを刺すべく近づいて来る剣士、リュークは動けない。

「ぐ……」

これまでか、そう思ったときだった。

「た、隊長」

「隊長をお助けしろ!!」

 村から引き揚げて来た兵士たちが瀕死のリュークを発見した。すぐさま抜刀し、剣を構える兵士たち。

「やめろ……お前たち……」

 この男にはどれだけの兵が相手になろうと勝てない。それを伝えようとするが痛みで言葉が出てこない。このままでは全員――

 剣士はしばらくの間兵士たちと対峙すると剣を鞘に納めた。

「敵の力量も測れない愚か者たちなら殺しておくところだが――」

 兵たちの剣を指さす剣士、兵たちの剣を見ると微かに震えていた。

「自分達では勝てない相手と知りながら、お前を助けるために剣を抜いたようだ。お前は良い将のようだな」

その言葉を残し、剣士は兵の間を抜けて村へと戻っていく。

「待て――」

「勘違いするな、お前には伝えてもらわなければならないことがあるだから生かして帰すだけだ。お前のいや、この国の愚かな王に伝えろ、“この村は賢者の守る村”だとな」

再び歩き出した剣士はまたも足を止めると、振り返り一言、

「シュヴェリアだ」

 それだけ残して去って行った。

「シュヴェリア……」

「隊長!」

「隊長!!」

 それだけ呟いて、リュークは意識を手放した。

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