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開戦ー3

 ――リーゼ村

 帝国兵の追撃から戻ったシュヴェリアは村人の歓声で迎え入れられた。

 それはそうだろう、あれだけいた帝国兵相手に少ない被害で勝利を収めたのだ。村人たちは勝利に酔いしれるはずだ。例え、見くびられた上での奇跡的な確率での勝利だったとしても。

「勝った、俺たちの勝だ!!」

「よっしゃあ!! 帝国の奴らざまあみろ!!」

「流石は剣士様だ! 剣士様万歳!!」

 村の至る所から歓喜が響いていた。

「すごい盛り上がりですね」

 隣にいたステラに話しかけられた。「そうだな」と返すと彼女はにっこりとした笑顔を向けてくる。少し、対応に困った。

「シュヴェリアさん」

 村の入り口でそんなやり取りをしていると、一人の少女が駆け寄って来た。クレハだ。

 彼女は息を切らして駆け寄って来ると、笑顔で「おかえりなさい」と声をかけて来た。またも対応に困るシュヴェリア。

「よう、旦那、やっぱり無事だったな」

 ゲンが現れ、村人たちが集まって来た。追撃したシュヴェリアたちを一応心配していたようだ。皆が無事な姿を見て安堵していた。

「シュヴェリア殿、帝国は?」

 一通り村人に声をかけられた後、メイアから帝国について尋ねられた。

「一部を残し殲滅した。生き残りも完全に撤退しただろう、今回の戦いは終了だ」

 あれだけしつこく追ったのだ生き残りを潜伏させようとは思わないだろう。索敵魔法にも引っ掛かりはない。村近辺からは完全に撤退している。

「そうか、それはよかった」

 シュヴェリアの言葉を聞き胸をなでおろすメイア。シュヴェリアの言葉聞くまでは安堵出来なかったのだろう、流石の冷静さだ。

「森を出たところに帝国のキャンプ跡がある。後で探索隊向かわせてくれ」

 シュヴェリアの言葉に頷く村人達。あまりいい方法とは言えないが敵が残した物資を回収するのは重要なことだ。死体から鎧を剥いででも装備をそろえなければ国相手の戦争など成立しない。戦争をすると決めて直後にシュヴェリアが村人に諭したことだ。領主の館も村の回収部隊が何度も往復し、物資を回収しつくした。村人が今使ってい武器や防具がそれである。

「死体はどうするんだ?」

 ゲンが問いかけて来た。どうするも何も放っておけばいいというのがシュヴェリアの意見だが……

「どうしたい?」

 シュヴェリアが聞き返すと、ゲンは周囲の村人たちと目を合わせた。

 やれやれだ、戦争相手のことまで面倒を見ている余裕は無いのだが……

(まあ、この村の者には見て見ぬふりというのは無理かもしれんな)

 シュヴェリアは息を吐くと、

「好きにするといい、ただし優先事項は村の防衛策だそれを忘れるな」

「ああ、解った」ゲンと共に村人たちが頷いた。クレハがそれを見てほほ笑んだが理由は不明だ。

まあ、計画に影響がなければどうでもいいことだ。今後の方針を軽く説明し、シュヴェリアはその場を離れた。




 交易都市、ハーペンでの魔族との戦闘後、シュヴェリアはクレハとステラを連れて一度宿に戻り荷物を整え、馬車を奪い、そのまま街を離れた。あれだけ騒ぎを起こしては情報収集どころではない。2人を連れて夜通し走り村へと帰還したわけだ。

 幸いなことに、クレハは崩落のショックで軽く気を失っていただけだった。帰る途中で目を覚ました。

ステラの方は村に帰っても目を覚まさずクレハの家で1週間ほど眠っていた。依り代にされた代償だったのだろう。だが、幸いにも目を覚まし、どうにか回復した。依り代にされていた時の記憶はない様だが、その方がいいだろう。後遺症もないらしくその後は元気に暮らしている。呪いは完全には解けていないようだが、それでもある程度の魔力は使えるらしく先の帝国との戦闘ではすさまじい戦いを見せてくれた。

 結局行き場のない彼女はこの村の一員として生きていくことを決めたようだ。思わぬ拾い物となったがおかげで村を護るのに必要な戦力を得ることが出来た。ハーペンでの情報収集は大成功したと言える。

 大成功といえば今回の作戦もだろう。実にうまくいった。正直もっと村にも被害が出ると思っていたのだが、あんなにもあっさり引いてくれるとは思わなかった。

「やはり魔獣の奇襲がよかったのだろうか?」

与えられているボロ小屋に戻り框に腰を下ろし呟いた。

昨日の襲撃はシュヴェリアの独断である。流石に帝国兵250を1人で撃退するのは目立ちすぎるそのため行ったのだがおかげで敵がすっかり弱気になってくれた。

予定よりもだいぶ早い撤退となってくれたわけだ。これならカエリウスも注目しないだろう。腕を組み満足そうに頷くシュヴェリア。

 しかし、ふと過ぎる。もしかしたら、昨日の襲撃の時点で実は計画の破綻の危機だったのではないかと。

 シュヴェリアは帝国が半数を失ってもかまわず進軍してくると考えていた。帝国の強引さを考えれば当然の回答だと思ったのだがもしかすると、大夫悩んだ上での進軍だったのかもしれない。そう考えるとずいぶん危なかった。撤退されれば次に来たときは250の兵を1人で相手にすることになったかもしれない。流石に2度も魔獣の襲撃などという手段は使えないからだ、何か他にいい手を用意しなければカエリウスに気付かれてしまう。

「……やはり早急に戦力強化を行う必要があるな」

 カエリウスの目をそらすために!!

 シュヴェリアは決意し、ある計画を実行に移すことにした。




「今度はどちらへ」

 シュヴェリアが出かける旨を伝えに行くとメイアからそんな返答が返ってきた。

 ゲンや村長、村の重鎮たちも心配そうにこちらを見ている、まあ、シュヴェリアは村の防衛の要を担っているのだその反応も理解できる。

「少々気になる情報を手に入れた。真相を探るため数日、村を開けたい」

 状況は戦時下といってもいい、どこに地雷が埋まっているかもわからない。村人たちの反感を買わぬように落ち着いた言葉を選び、話を進める。

「旦那のことだ、村のために一番いい選択をしてくれてるとは信じてるが……」

 ゲンがどこか落ち着かない様子で言う。

「いつ帝国の再侵攻があるかもわからない状況で剣士様が村を離れられるのは……」

 村長が申し訳なさそうに口を開いた。周りの村人もそれに賛同する様子だった。

 まあ、最もな心配だ。シュヴェリアは村人たちを安堵させるために冷静な分析を提示する。

「帝国の進行は問題ない。彼らは昨日来た兵団がまさか敗北して戻って来るとは考えていないはずだ。敗走した彼らが本国に伝達するまでは再侵攻など考えてもいないだろう。少なくとも彼らの連絡が届くまでこの村は安全だ」

 そこから部隊の再編、部隊の移動にどう考えても1週間以上時間がかかることを村人たちに伝える。

「先の領地襲撃の際よりは時間的感覚は短いが確実に安全な時間が一定時間ある。無論私が離れるのはその時間の中で確実と思える間だけだ。村の防衛には全く影響しないと胸を張って主張しよう」

 シュヴェリアの言葉にうなりを上げる村人たちどうにも不安がぬぐえないようだ。

 さて、次はどうしようか…… シュヴェリアが口元に手を当て思考していると――

「解りました」

 メイアが重い口を開いた。

 村人全員の視線がそちらに向かう。

「おい、ばあさん!」

 ゲンが声を上げた。なだめるような視線を向けるメイア。

「これまでわしらはシュヴェリア殿の言う通りにやって来た。――結果、事は順調に進んでおる」

「……それはそうだが……」

 万が一ということもある。周囲から意見が上がった。

「確かにそれはそうじゃ、だが、皆、失念しておらんか? ここでシュヴェリア殿を引き留めることで今後の状況が悪化するリスクもあるのじゃぞ?」

 はっきりと言い放つメイアに周囲がざわつく。

「シュヴェリア殿は我々のことを考え、常に最善の策を講じてくださっておる、それを疑うものはここにはおらんはずじゃ。

そのシュヴェリア殿がリスクを承知で村を離れたいというのならわしらは信じるしかあるまい」

 静まる村人たち。ぐうの音も出ないという感じだ。

ここまで信頼されているとは……、なんだか気恥ずかしくなりシュヴェリアは頬を掻いた。

「はぁーあ、解ったよ、ばあさん」

 最初に声を上げたのはゲンだった。

「あんたの言う通りだ。旦那が行きたいっていうなら止めるべきじゃねぇな。――行ってくれ旦那」

 信用してるぜ、といわんばかりに片目を閉じ、親指を立てるゲン。

 シュヴェリアはそれに頷くと村の入り口へと向き直る。すると――

「……ステラ?」

 当然のようについて来るステラに戸惑うシュヴェリア。

 見ると、彼女はにっこりと笑顔を向けている。

「……ついてくる気か?」

「はい」

 あまりの屈託のない笑顔に気後れするシュヴェリア。

「帝国が来ないのなら私が村に居ても仕方ないじゃないですか~」

 ならシュヴェリアさんと一緒に行きます。と、当然のように言い切るステラ。

 笑顔の圧に押される。う~む、唸っていると。

「そ、それなら」

 どこかから声が上がった。

「わ、私も一緒に!!」

 クレハだった。何やら焦った様子で手を上げる彼女、その様子はステラが行くなら自分も行くと訴えていた。

「…………」

 少し悩んだが帝国が攻めてくることはまずないと言い切った手前、2人に残るように説得する理由がない。結果、これ以上の同行者を付けない代わりに2人の同行を許可することにしたシュヴェリアだった。


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