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 その後、なんとかドロシーの力を借りて課題を終わらせた私は、校庭にいた。

 飛行魔法の授業は実技がメインになるため、基本外で行われる。

 校庭に出ると、既にハウル先生が待っていた。

 ハウル先生は漆黒のマントに身を包み、青白い顔と鋭い八重歯が印象的な鼻がたか~い女性の教師。

 ハウル先生が低く静かな声で、「整列しなさい」と言う。

 その一声に、それぞれほうきを持ったクラスメイトの魔女や魔法使いたちが整列する。

「みなさん、おはようございます。全員揃っていますか?」

「はーい!」

 ハウル先生の声に、私たち生徒は手を上げて元気よく返事をする。

「では、授業を始めましょう」

 今日の授業は、例の飛行魔法学から。

 飛行魔法学っていうのは、簡単に言うと、ほうきに上手に乗れるようになるための勉強。

「ほうきは魔女や魔法使いにとって、とっても大切なアイテムです。ほうきと相性が悪いと思うように空は飛べないし、雑に扱うと壊れてしまいいます。ほうきから落ちて怪我をするなんてこともあります。ほうきは誰よりも大切な相棒として、大切にしてあげましょうね」

「はぁ~い!」

「さて、今日は特別授業です! 二人一組で活動してもらいますよ。それぞれ好きなひとと組んでください。ペアが組めたら座ってくださいね」

 ハウル先生の言葉に、クラスメイトたちはそれぞれ仲のいい子とペアになっていく。

 私はもちろん、ドロシーとペアを組むつもり。いつも一緒だからね。

 きょろきょろとドロシーを探していると、人だかりが目に入った。中心にいるのは、ノアくんだ。

「ねぇねぇノアくん! 一緒にやらない!?」

「えっと……」

 穏やかに微笑むノアくんと、ノアくんを取り囲む女の子たち。

「ダメ~! ノアくんは私と組むのよ!」

 あーこれは……いつものやつきたな。

「ノアくんは私と組んでくれるよね! ねっ? ノアくん!!」

「ちょっと、みんな落ち着いて……?」

 ノアくんとペアになりたい女子が群がっているようだった。

 さすが、学校首席のアイドルは人気が違うね。

 ちょっと同情していると、困り顔をしたノアくんとパッと目が合った。

「あっ火花!」

 名前を呼ばれ、首を傾げる。

「な~に~?」

「ペア、一緒に……」

 うーん。

 周囲の喧騒で、ノアくんの声が全然聴こえない。

 声を張り上げる。

「え? なにー?」

 ノアくんはそれでもなにか言っているようだった。

 仕方ない。そばに行こうとしていると、向かいからドロシーがパタパタとほうきを抱えて近づいてきた。

「火花ちゃん!」

「あ、ドロシー」

「ペア組まない?」

「うんっ! 私も今ドロシー探してたとこ!」

「ほんとっ!?」

「一緒にやろう!」

 ノアくんの話はまた後で聞けばいっか。

 ペアを組むと、私はそのままドロシーと手を繋いでその場に座った。

 ちらっとノアくんを見る。

「…………」

「?」

 ……なんか、睨まれた気がする。なんで?

 ……あっちはまだ揉めているから、そのせいかな?

 なんて思っていると、隣に座っていたドロシーがぼそりと言った。

「あちゃ~ノアくんってばさすが! 人気者だね」

「まぁ、外面だけはいいからね、ノアくんって」

「火花ちゃんは淡白だなぁ……幼なじみが女の子に囲まれていやじゃないの?」

 ドロシーが苦笑する。

「え? 別に」

 いつものことだし。今さらだし。

「ふーん……じゃあ、もしノアくんがあの中の誰かと付き合っちゃったらどうする?」

「え、ノアくんが誰かと……?」

 ちら、とノアくんを見た。

 ノアくんが誰かひとりの女の子と……か。

 うーん、考えたこともなかったけれど……。

 イマイチ想像できないかも。

「わかんない!」

 素直に言うと、ドロシーはガクッと肩を落とした。

「火花ちゃんって、ホントバカ」

「ひどい! ドロシーって最近、ノアくんに似てきたよね……」

「そう? でもね、私、ノアくんが火花ちゃんに辛辣になる理由、分かるよ」

「え、うそ? なんでなんで? 教えて!」

 思わず前のめりになる。

 だって、私には全然分からないもん!

「火花ちゃんって、破天荒過ぎるっていうか……目が離せなくて安心できないから、いっそそばに置いておきたくなるっていうか」

 私は眉を寄せた。

 ……なんだそれ?

 ドロシーの言っている意味が分からない。

「でも、私的にはノアくんに火花ちゃんがとられなくてよかったけどね。私も火花ちゃんとペアになりたかったから」

 相変わらず素直なドロシーに、私はニヤける。

「えへへ、私もドロシーと一緒になれて嬉しい~」

「両想い?」

「両想い!」

 ころころとふたりでおでこを付き合わせて笑い合う。

 私、やっぱりドロシーと過ごすこの時間好きだなぁ。なんていうか、青春って感じがする。

「あ、決まったかな?」

 ドロシーとノアくんのパートナー決めの様子を眺めていると、ようやくひとりの女の子に決着が着いたようで、ノアくんはその場に座った。

「さぁ、それぞれペアになりましたね。それでは、今日はみなさんに自然に存在する星の原石を集めてきてもらいます」

「星の原石……? なにそれ?」

 ハウル先生の言葉に首を傾げていると、ドロシーが教えてくれた。

「星の原石は、星の欠片の原料だよ」

「……あぁ、星の欠片ね」

 星の欠片っていうのは、ロイヤルクロックを動かすための魔法の燃料みたいなもの。そういえば星の欠片って、星の原石を削ったものなんだっけ。

 って、ちょっと待てよ。

「えっ、それってつまり、頑張れば頑張ったぶんだけタダで星の欠片が手に入るってこと!?」

 思わず声が弾む。

 なにそれ! めちゃくちゃお得じゃない!?

「うっ……うん……? そうなるのかな? というか、なんでそんなテンション高いの?」

「だって、星の欠片ってめちゃくちゃ高いんだよ! それがタダで手に入っちゃうなんて夢みたいじゃない!!」

「まぁそうだけど……火花ちゃんち、お金持ちなのにそこ重要?」

「めちゃくちゃ重要!!」

「火花ちゃんって、ときどきものすごくがめついよね」

「おいこら。それ悪口だぞ」

「えへ。……あぁでも、自然に存在する星の原石なんて、そう簡単に持ってこられるのかな?」

 不安そうなドロシーの手を、バッと掴む。

「ふたりで力を合わせれば大丈夫だよ! ドロシー、頑張ろうね! 絶対絶対、星の原石手に入れようねっ!」

「う、うん……」

 私は気合を入れて、ほうきを握った。


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