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ワガママ

「エイジさん大丈夫ですか?」

「……、っぁあ…」


__あの場所から離れる為、彼の体調を見ながら歩みを進めた。相変わらず景色は森だが幾分かは先へ進めたと、思う……

私には神殿の場所がわからないから後どのくらいかかるのか…

吐き気は治まったものの、横をみればまだふらついているエイジさんの足。


「…少し休みましょう」

「……、」


彼のことだ、休まなくても大丈夫だと無理に先へ進むかと思ったが以外にも「……そうだな、少し休む」と提案を受け入れてくれる。

まだ若干焦点があっておらず、たまに頭を押さえたりしているから休んで欲しい。

エイジさんをゆっくり木の根元に座らせて私は両膝をついて彼の顔を正面から覗き込んだ。


(顔の刺青から煙が出る気配は今の所ないみたいだけど……)


私は身体中の彼の傷に治癒魔法をかけながら問いかけた。


「まだ吐き気はありますか?」

「……いや、ない」

「刺青が痛んだりは?他に痛い所はありませんか?」

「……、」

「?」


不自然に会話が途切れたことに首を傾げる。

少しの間の後見上げたエイジさんと目線が絡む。

___あ、焦点が…戻って……


「これは……呪いのせいじゃない」

「え?」

「……急な視界の情報量に酔っただけだ」


そう言えば…エイジさんの目が…

キラキラと揺れる金色。出会った頃とは比べ物にならない程エイジさんの瞳には光が宿っていて思わず息を呑んでしまった。なんかっ……前にも増して美しさに磨きがっ……っと言うかまたじーっと見られている…!うぅ……イケメンに磨きがかかった今のエイジさんに見つめられるのは心臓に悪い。


__今度は何を伝えたいのだろう?


「視界全てに色が、ついている」

「…………え」


色がついてるって……


「……色が、見えるようになっている」


その言葉にキョトンとした後、私は驚き目を見開いた。


え、な、なんで、急に…!?いや、いやいやそんなことよりもっ……


「っっ本当ですか…!?」

「!」


嬉しさと驚きのあまり恥ずかしさを忘れて私は思い切り彼に詰め寄った。何がきっかけかは分からない。でも彼の世界が色付いた、それはとても嬉しいこと。


「空の色もわかりますか!?」

「ああ」

「木々の色もっ…!」

「ああ、わかる」

「私の色もわかりますか…!」

「__、」


ふっと力を抜いたように息を吐くとエイジさんは私の髪の毛をスルリとすくった。その手の動きが凄く丁寧で……まるで宝物をさわるような……

ゆっくりと視線が絡む。


「…ハッキリとわかる」


低い声に、ドキンと胸が高なった。


(ひ、ひぇ……っ)


エイジさん一体どうしちゃったんだ…!何だか急にボディータッチが多くなったような…っと言うか色気に耐えられないっ……!!


「っ、っ、ぅ、あ…な、何か食べますか?早く先へ進むためにも体力を沢山つけましょう!何か食べれる物がないか探してきますね……!」

「!」


あまりの恥ずかしさにバッっと立ち上がり駆け出そうとした私の腕を強く掴むエイジさん。


(……っえっ?)


「……あの、エイジさん?」

「…っ……」


何故か腕を掴んだエイジさんの方が驚いた顔をしていて私は更に驚いてしまった。


数秒見詰め合うも腕をキツく握ったまま動かない彼に戸惑う。離してくれないどころか掴む力がどんどん強くなる。と言うか……なんで掴んでいる方のエイジさんまで戸惑っているんだろう…?

一体どうしたと言うのか。


「……あの、もしかしてまだ体調良くありませんか……?」

「……いや、」


体調が悪い訳ではなさそう…?


……んん、もしかして私少しはしゃぎすぎてしまっただろうか。…いや、そうだよね…確かにエイジさんの視界に色がついたことは喜ばしいことだけど…

あの軍人の人だってまた追ってくるかもしれないし…エイジさんの顔にある奴隷の呪いだって…今は落ち着いてるけどまたいつ発動するかわからな「…ここに、いてくれないか」いし……って、



「……」

「……へ?」


言われた言葉を処理しきれずにキョトンとしていれば掴まれていた腕が引かれて、ストンとエイジさんの隣に座わらされる。


__っえ、何これ。


(ちっ、近い……)


真横で感じる体温にドキドキする胸を抑えていれば掴まれた腕に力が入る。

びくっと身体が反応してしまって恥ずかしい

……。チラリと横を見れば交わることのない瞳は伏せられていて、顔を俯かせている。


「…あ、あの……?」

「……っ、」


あきらかに様子がおかしい。

心配して俯く彼の顔を覗き込もうとすれば掴まれた手に力が入る。


「……!エ、イジさん…少し痛いです…」


身動ぎすれば更にぐっと強く腕を引かれる。

目線が絡めば___ゾクリ、まるで獲物を狙う獣のようなその金色の鋭い眼差しに本能的にビクリと身体を固めた。


「……何もいらない」

「…えっ、」

「もう少しこのまま」


そう言うとまた俯いて黙り込んでしまう。

繋がれた腕はずっと力が入ったまま。

い、今のは何…?なんで急にこんな…一体どうしたと言うのか、


__ふと、エイジさんが顔をあげた。


「…エイジさん?」

「………」


困惑しているような、何かと葛藤しているかのようなそんな表情だ。

出会った時よりも彼が感情を表に出せていることが嬉しくもあるけど…もしかしたら、今まで白黒だった世界が急に色ついて戸惑っているのかもしれない。

私達からしたら当たり前の世界の色、でも彼からしたらきっと今見ている物全てが初めてのような物だ。

まるで知らない世界に迷い込んだ子供のような…そんな感じなのだとしたら…


私は出来るだけ、優しく笑う。


「大丈夫です、私ここにいますよ」

「!」


エイジさんとは出会って間もないけど…少しの間共にして垣間見えた彼の不器用さ。もしそうなら…


不安、と言う気持ちに戸惑っているのかもしれない。

何だか少し可愛く思えてしまった。


「……今日は、ここで野宿しませんか?」

「……、ああ」


少し目を見開いた後、フッと顔が和らぐ。


(良かった…)


もし、もしそうであれば……そんな、彼の不安を少しでも和らげてあげたいと思った。







******








「エイジさん、火の準備ありがとうございます」


あのまま野宿の準備をした私達はお互いに向かい合うように座り、エイジさんが準備してくれた火を囲んだ。


「……レナ」

「!」


名前を呼ばれ、彼を見れば自分の隣りを手でポンポンと叩いた。


(……め、目線で訴えるんじゃなく行動で示してくれた…!?)


これはかなりの進歩じゃなかろうか…!?

出会った時と比べたらだいぶ打ち解けられたと言う事だろう。そう思うとすごく嬉しいけど、

ううっ……真顔でじっと見られると行きずらい…っ…だって綺麗な顔に穴が開くほど見られてるんだもん…!

多分私が行かなければずっと見られると言う羞恥心ループ……それに名前呼びも慣れないっ……!


(いや……)


今はエイジさんの不安を取り除いてあげることが最優先だ…!それに、こうして仲良くなれるのは純粋に嬉しい。

私は意を決して彼の隣りに座った。


「っし、失礼します……」

「……」


お互いに何かを話すわけでもなく、目の前の火をじっと見詰める。少し緊張はするものの、初めて会った時のような気まづさはない。


(…ふふ。そう考えると、本当に…ずいぶん仲良くなれた気がする)


最初のような警戒心はなくなったと……思う。名前呼びにまで昇格出来たのが何よりの証拠だ。


私一人じゃ絶対にここまで来れていないし、もし1人だったとしたら…きっと心細くて心が折れていたかもしれない。


彼が…何者であっても、私が出会ったエイジさんは凄く優しい人だ。嘘をつかない少し不器用だけど真っ直ぐな人。

私は、私が知っている彼を信じたい。

助けてくれた彼に私が出来ることはそれしかないのだから。


「……あ、」

「……」


月明かりに照らされたエイジさんの横顔は綺麗で。息が詰まった後、思わず声が出た。

…恥ずかしい。


「__昔からだった」

「え……?」


1人顔を赤くしていたら突然彼が話だした。

エイジさんから話し出すなんて中々ないことだったので面食らい驚いてしまった。

そんな私の反応を知ってか知らずか、エイジさんは構わず続ける。


「物心ついた時には何もなかった。…家族も、感情も色も何もかも。生きながらに死んでいたも同然だった。」

「だからこそ、いつ死んでもいいと……そう思っていた。だから俺はこの場所に来たんだ」


その言葉に私は眉を寄せた。


(やっぱり……彼はここを死に場所にするためにいたのか)


そうかもしれないと思っていた、だって彼自身ここを危険な場所と断言していたし…こんな所に用事があるだなんてそうとしか…

でも実際に本人から言われると凄く、悲しい。


いつの間にか自分の手を強く握っていたようで、そんな私の手にエイジさんが優しく手を重ねた。


「エイジさ__」

「だが、レナに会えた」

「!」

「世界がこんなに綺麗だなんて知らなかった、レナがいなければきっと何も知らずにいただろう」

「……っ」


その言葉に、鼻の奥がツンとして泣きそうになってしまった。まさか彼からこんな言葉を貰えるなんて


ぐっと泣くのを我慢すれば、それを見たエイジさんはフッと顔を和らげて___少し微笑んだ。


「!エイジさんっ今____」

「…産まれて初めて、俺は今生きてる」


金色の綺麗な瞳がキラキラと揺れた。まるで夜空にある星のようで、吸い込まれそうだ。


「お前がいれば、俺は__」


そう言いかけた彼は、ぐっと何かを我慢するように重ねられた手に力を込めた。

私が首を傾げればエイジさんは目をゆっくりと閉じて小さく息を吐く。

そして名残惜しそうに重ねられた手が解かれた。


「……いや、……もう遅い。今日は休め」

「!今日はエイジさんがしっかりと休んでください……!」

「ダメだ。魔石に力を感じられない」

「えっ……あ、」


ポッケに入れていた魔石を取り出す。

ヒビの入ったそれにはやはり何も力を感じない。


「そうだ…これ、さっきの戦いで…もう力はないのでしょうか?」

「…ああ、魔力を感じない」


これがなければ今の私には身を守る術がない。

せっかく彼を休ませられると思ったのに…

何も出来ない自分にしゅんと肩を落とせばエイジさんは目を細めた。


「……俺は大丈夫だ」

「!」


頭をクシャリと優しく撫ぜられる。


「……明日には神殿に着くはずだ。もう休め」

「__……」


神殿に着く。その言葉を発した彼は何故か、切なそうにしていて…その時のエイジさんの目が瞼に焼き付いて暫くの間は眠れなかった。


読みにくいにも関わらずブクマしてくださる方がいて泣きました。本当にありがとうございます。


良ければモチベ向上のためにもご感想やいいね頂けたら嬉しいです……あと誤字脱字やらアドバイスも……ぜひ……

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