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求めていた言葉


勢い良く背中に当たる衝撃、ベッドのスプリングが鳴り私は驚きで目を真ん丸に見開いた。


……ど、どう言う状況…?これは…?


頭が真っ白になるとはこの事か。そんなどうでもいい事ばかりが頭に浮かび、目の前の事実を受け入れられないでいる。


目の前には相変わらず美しい顔のエイジさん、ただ表情が驚く程に無表情…それが相まってなんだか少しだけ怖く感じた。

ハラリ、彼の綺麗な金髪が私の顔に落ちる。


「____、っ!?」


それを見て状況をやっと読み込めて顔が一気に熱くなる。どうしていいか分からず、とりあえずこの近い顔を何とかしたくて少し身を捩れば頭の上で押さえ付けていた彼の片手に更に力が入る。


「エ、エイジさっ…」

「……絶対に渡さない」

「な、何をっ…」

「…元の世界も、この世界も、人も神も全て…何を敵にまわしても俺は絶対にお前を誰にも渡さない」


真っ直ぐな目に、押し潰されそうになる。

彼は…今、きっと怖いのだろう。初めての色付いた世界に迷い込んだまさに子供、雛鳥が巣立ち出来ずにいるままだ。

私は彼がいてくれたら心強いと思うし素直に嬉しい、でもそれは彼の自由を奪う事になる。恩義を感じて巣立てずにずっと巣の中にいるなんて勿体無いし可哀想だ。

優しさの皮を被って自分の幸せを願う浅ましい人間が彼の近くにいてはいけない…いや違う。私が彼にそんな自分を知られたくないのだ。


「……、エイジさんはもう昔の悲しい貴方じゃないです…もう誰にも囚われずに自由に生きていいんです。それなのに私が居るせいでエイジさんが自由になれないなら離れるべきだと思います」

「…っ」

「…だから…帰れる方法があるのなら元の形に収まる方が良いです、私は…この世界の住人じゃない…異端者ですから」


彼の声にならない声が聞こえたと同時にパリパリと何かが音を立てた。驚いて音のする方を見れば窓には無数のヒビが入っている。

彼の周りがピリピリしているのがわかる。殺気でも威圧でもない、それはなんだか怒りと悲しみが入り混じった彼の悲鳴のようで…思わず開いていた口を閉ざした。


「………なら、どうしたらわかる」


そう独り言のようなうわ言のような小さな声を発する。顔の横、耳元近くからギリギリと軋む音が聞こえて、彼が空いてる片方の手でシーツを強く握り締めたのがわかった。


「…人を数多く殺すことより、色のない世界より、お前がいない世界が何よりも怖いんだとどうしたらわかる…!!」


聞いた事のない彼の悲鳴のような感情の爆発に驚いて声が出せない。こんな彼を見るのは初めてで、あの死の森で追い詰められてる時でさえこんな彼は見た事はなかった。


「……、エイジさ…」

「何故、俺の気持ちを決めつける」


……エイジさんの、気持ち…?


「…助けられたから?もうそんなこと関係ない。お前が…レナであるから俺は一緒にいたいと思う」

「!」


……彼は私に恩義を感じていたから、雛鳥のそれと一緒だったから…一緒にいたいと思っていたんじゃないの…?


っ…私、彼の気持ちを一方的に決めつけてた…?


「……レナは俺の唯一で、女神で、誰よりも世界よりも優先すべきものだ」


彼の真っ直ぐな金色の瞳、とても綺麗な色。輝きは変わっても綺麗な瞳なのは出会った時とかわらない。……そうだ、彼は出会った時からずっと嘘は言わない。裏表も、ない。かわらないじゃないか。

………それなら、今言った事も、今まで言ってた事も全て本当で……


「それでも、元の世界に帰ると言うなら……良いだろう。神を殺してやる」

「!」

「…それでお前が俺のそばに居るのなら」


……彼のこの狂気じみた私に対する執着は…きっと、この世界の誰からも人として見られていなかった、信用出来る人が誰も居なかった中で私と言うこの世界の人じゃない異端が現れて彼を助けたから……信じられる人が私しかいない、そんな心から信用出来る人間だから。だってそうじゃなきゃこんなにも強く…必要としてくれる理由がない、……また決めつけているのだろうか?彼の気持ちは確かに彼にしかわからないのだから。

…もし…恩義じゃなく、彼の本心で一緒にいたいと思ってくれていたのだとしたら……


「っ……」


そんなに嬉しい事はない。


「……っ、わ、たし…でいいんですか…?」

「!」


私の言葉にエイジさんは身体を揺らす。縫い付けられていた両手が解放されると彼が少しだけ身体を起こしたため私も釣られて起き上がった。…少し背中が痛い。それ程に余裕がなかったのか、それ程に……彼は私と居たいと思ってくれたのだろうか。…でも、それでも私は貴方が思うような人間じゃない。


「私……、貴方が思うほど信用出来る人間じゃないです、」


目の前にある彼の顔が見れない。


「わ、私…本当は狡い人間ですっ…!だって!……っ自分が幸せになりたいからっ…誰かを助けるなんて、自分の事しか考えていないそんなっ浅ましい……人間、でっ…!」


こんな自分、彼に知られたくなかった。


「………っ」


怖い、軽蔑されるのが。




「……お前は、俺を助けた時何を思っていた」

「っ……えっ?」


思いもよらない問いかけに思わず彼の顔を見た。

エイジさんを……助けた、時…?


「俺のために怪我をして、介抱して、死にそうになっていたその時、お前は何を考えた?お前は少しでも自分の幸せを考えていたのか?自分の事を考えていたのか?」


私は目を見開いた。


………あれ、私、


「あ、なたが、辛くないようにと必死で…エイジさんにっ、笑って欲しいと思って…」


そうだ、ただ…ただ彼が笑ってくれたら嬉しいとそう思ったんだ、見ず知らずの私を助けてくれた優しい人に、生きて…ほしくて。


「ならそれがレナが俺を助けた理由、自身の幸せよりも俺の幸せを願っていた。その時お前が思ったそれが紛れもないお前の気持ちだ。」

「で、も…」


「……今まで助けたくて行動してきた事に嘘はないだろう」

「!」

「俺はお前以上に優しい人間を知らない」


アリスちゃん達家族を見て、私は1人なんだと再確認させられた気がした。元の世界でも大切な人を亡くしついには誰も私を知らない…1人ぼっちの世界に来てしまって、誰かに認めてもらいたい、誰かに必要とされたくて…とそんな気持ちが奥底にあったと思う。だからこそ私がして来た行動が自分のためだと思ったし、なんて浅ましいのだと思った。


……彼に言われて、気付いた。

私は…誰かのために動いている時、自身の幸せを考えた事はないと。でも今はそれが重要なんかじゃない、彼が…エイジさんが私と言う存在を認めてくれた気がしたから…本当に心から自分を必要としてくれた事が今すごく嬉しいのだ。



"人に甘えると言う事を覚えた方が良いでしょうか。"


フッと、とある記憶が頭の中で再生される。

「誰のためでもない、レナ様自身が願った事ですよ」とマーサさんが言ってくれた時の会話を思い出す。


……わがままも、甘えるも、良くわからない。これで合ってるのか、わからないけど……私の素直な今の気持ち。




「……っ、わ、私…、貴方と一緒に、いていいの…?」

「____…」


目を見開いた後、彼はそのまま自身の顔を覆うように片手で顔を隠し俯いた。

…っえ?もしかしてダメだったの…?え、でも一緒にいたいって言ってくれてたよね…?あれ…?


普段見ない彼の珍しい反応に私が不安そうな顔をしていればそのまま勢いよく抱きしめられた。そのため、彼がどんな顔をしているかわからない。


「………なぁ、痛いが我慢出来るか」

「えっ?何を…」


彼の声が耳元から聞こえた瞬間強い力で頭の後ろと腰に手を回され更に密着した身体。彼は私の髪の毛をぐしゃりと握り首元を露にするとその肩口に顔を埋め……思い切り噛んだ


「っっ!?ぃたっ___…っ」


驚きと痛みで身を捩るも離してくれる気配はない。痛すぎて涙が滲んだ。

なっ、何っ!?なんでっ…どうして噛まれたの?もしかしてやっぱり一緒にいるのは嫌だったとかっ…わからない、…首元が痛くてじんじんする。彼の意図がわからずに困惑していれば噛んだ場所をじっくりと舐めた。彼の舌から熱を感じた瞬間に顔が一気に熱くなる。


「っ…な、何でっ…」

「……居てもいいか、じゃない。俺と居たいと言え」

「っ…!」


掴まれた髪を引っ張られ強制的に彼と目線を合わされた。首元にいるため必然的に彼を見下ろす形になる。

私を見上げている彼は相変わらず美しい顔をしていて、それが今は何処か妖艶で色っぽくて目眩がしそうだ。噛まれた痛みなのか、彼になのか…もう何が何だかわからない。


ただ一つ確かな事は、


「………レナ」

「…っっ」


彼に強く、強く…私が必要とされていること。




「…っ、わ、私…エイジさんと一緒にいたいですっ…」


私の言葉に彼は満足そうに目を細め優しく微笑んだ。


「…良い子だ」


噛んだ場所を彼が優しく撫ぜるとピリッとした痛みが走りクラクラとする。

____あれ…目の前が歪む。倒れ、そう…

フラっと揺れた身体をエイジさんが優しく支えてくれた。


「……無理をさせた」

「…、エイジさん…、」

「まだ体力が戻っていないな」


彼は私を横にさせると手を取った。


「…大丈夫だ。俺がずっとそばにいる…俺もお前が隣に居る限り俺でいれる。…俺たちは運命共同体だ、世界の全てから必ずレナを守ろう」

「___…」

「どんな事をしても」


穏やかそうに口にした言葉の内容は全然穏やかではなかった。


何だかすごい事を沢山言われている気がするけど、頭が回らない。ただ、首元の痛みと彼に握られている手が熱い。

……首元、なんで噛まれたのかな…。

彼の吐息と舌の感触を思い出して、顔が熱くなる。恥ずかしくてかけてもらった布団を口元まで被して隠した。


「………どうした」

「…あ、あの……なんで、噛んだのかな、って……」


キョトンとしたあと少し何かを考えるエイジさん。暫くして噛み跡を指でなぞると少し首を傾げて口の端を上げて笑った。


「……言う事を聞かなかったお仕置きだ」

「っっ!」


ガバリっと布団を頭から被れば彼が笑う声が聞こえる。

っっ????な、何っ!?顔が熱いつ…!と言うかエイジさん今の魅惑的な顔は何ですか……!!!とってもとっても…っ…っ!!!


「……レナ?」

「……〜〜っ、は、はぃ…」

「…ふっ、取って食ったりしない」


半分、食べられました…なんて言えない。


「…お前の身体が治ったらすぐにでもこの国を出る」

「………え?」


国を、出るって……ええ!?


次のお話が終われば新しい章が始まります。

ここまで読んで下さってる我慢強い方々、いつも本当にありがとうございます。

またお付き合い頂けますと嬉しいです…!


感想や反応もめっちゃくちゃ嬉しいです、皆様が少しでも楽しんでくださるように執筆頑張ります。

誤字脱字ありましたらご報告も頂けますと嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
何回も読み返してしまって・・ さっき書いた感想に追加したくなりました。 波乱に満ちた新章かと思いますが、甘々な場面もてんこ盛りでお願いします。
まずは更新されていて、震えるくらい嬉しかったです。ありがとうございます。 エイジ君の想いが通じたし、レナちゃんも自分の気持ちに素直になれて 安心しました。もう悶えるほどわくわくして読みました。 新章も…
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