許された彼女、許さない彼
あれ…私どうしたんだっけ…。
何だか身体がふわふわしてる。浮いてるみたいに軽い。不思議に思いゆっくりと瞼を開ければ一面綺麗な青に包まれていた。
上も下も透き通る綺麗な青……ここは…海…?
「あ…空が反射してるんだ…」
だから一面の青。綺麗……あれ、そう言えば水の上なのに私浮いてる…?足元を見れば水面に浮く自分の足。あれ?私裸足だ……よくよく自身を見てみれば真っ白なワンピースに身を包んでいた。いつの間にこんな服に………
恐る恐る足を動かしてみれば水面が静かに揺れるだけ、沈む気配はない。
………凄い、私水の上に浮いてるの…?
「これは夢…なのかな……、あれ?」
何もなかったはずの目の前に突然大きなステンドガラスが建っている。綺麗な女性が描かれた虹色に光るそれは見た事あった。これって…
「パナケア様…?」
ピチャン___と水面に水が落ち揺れた瞬間、先程まではいなかった人がステンドガラスの前に立っていた。
「!」
不思議な雰囲気を放つその人は綺麗な女性で、後ろに描かれた女性にそっくりだった。
「……こんにちはレナさん。2度目ましてですね」
「…も、もしかしてパナケア様…ですか…?」
「ふふ、みな私をそう呼びますね。」
私の言葉に、女性はニコリと微笑む。
その笑みに同じ女性であるのに顔が赤くなる。す、凄い美人な人だ…。いや本当に、この世界の人々は顔が良すぎる。
「あの時は精神干渉が浅く、こうしてゆっくり話することが出来ませんでした。」
…あの時とは隠し通路で会った時の事だろうか。
「今は精神の深い場所で少し繋がれたのでこうしてレナさんとお話出来ます」
「え、えっと…?」
「ふふ、そうですね…ここは貴方の夢と私の精神の中、合わさった場所とでも言っておきましょうか」
そう言うとパナケア様はゆっくりと私の方へと歩き出した。
「!わっ…」
水の上にも関わらずパナケア様が歩いた道の跡には綺麗な草花が咲いている。そして私の前まで来ると歩みを止め優しく微笑んだ。
「……私の愛しい子」
「…えっ?」
私の頭に手を置くと優しくて温かい光がパナケア様の手から溢れ出る。何故か懐しく感じるその光はまるで私が白魔法を使う時に現れる光にそっくりだった。
「私はずっと待っていました、白魔法を使う愛しい子が現れるのを」
「…ど、どうしてですか…?」
それに愛しい子ってどう言う意味…?
「ふふ…白魔法の起源は…私の父でもある神、アスクレピオスが主となり私たち姉妹である女神の力が元になっていますから」
「……へ」
「その力を持つ貴方は私達の愛しい子なのです」
……えええ!?えっ、ま、待って…っと言う事は白魔法の起源がパナケア様になるってこと…!?
…あれ?そうなると、シェリルさんの私が「パナケア様の遣い」ってあながち間違いじゃないのでは…ってそうじゃなくて…!それが起源なら魔法の力は神の力と言う事になるのでは…?!じ、情報量が多い…!
「ふふ。…レナさん、今回会えたのはきっと偶然ではありません。」
「!」
「これから先きっと貴方は私達始まりの神と必ずどんな形であれ、相まみえることでしょう…きっと貴方の力にもなるはずです。…それこそ、貴方を元の世界へと帰す協力も」
「!!」
「ただ…」と困ったように眉を下げたパナケア様に首を傾げた。
「今回、残念なのが私の聖地ではない事ですね」
「……聖地…?」
「…聖地とは…そうですね、私達神の「家」と言えば伝わるでしょうか。私がここでレナさんに会えたのは私を信仰するこの家の強い力があったから…姿を保ち貴方に少し干渉することは出来ました。ですが聖地でないと貴方に力を授けようとしても微々たる力になってしまって…」
なるほど、シェリルさんやアリスちゃんが強くパナケア様を信仰していたから形を保てるけど普段の力はここじゃ発揮出来ないのか。となるとパナケア様の言うお家…つまり聖地に行けば……
もしかしたら元の世界へと帰れるかもしれない…?
あれ、でも前にアステナ様に力を頂いて私はこの世界の住人になった訳で…帰る事は出来ないんじゃ…
「レナさん」
「!は、はいっ…」
「私達は貴方の味方です、この先何があったとして貴方がどう言う未来を望んだとしても…私達は全力で貴方を支えましょう」
「……パナケア様…」
「もう時間があまりありません。だから今回、微力ながら貴方に力を分けますね。」
「力…?」
彼女は手の平を前に出しその上をふぅっと優しく吹いた。キラキラ輝くその優しい風はやがて花びらとなってそのまま私の身体を吹き抜けた。
「……何だか温かい…」
「ふふ、貴方の生命エネルギー量を少し回復させました。」
「?」
「レナさん、黒魔法の彼と"約束"していませんか?」
「約束……」
思考を巡らせ眠りにつく前のある1つの約束を思いだし顔を真っ青にさせた。
「3日目を覚まさなかったら大変な事に…」
どうして忘れて呑気に寝ていたんだろうか自分は…!でも起きなきゃいけないのに起き方がわからない!
…って待て、落ち着け自分。エイジさんはそんな見境なく誰かを傷付けたりはしないのではないか…?…そうだ、彼はあんなにも優しいのだ、それに誰かを殺めるのが嫌で軍を抜けた訳で…そんな彼が私が目覚めなかっただけで暴れまわるものだろうか?
「ふふ、レナさんは早く目覚めた方が良いでしょう」
「!」
私の思考なんてお見通しと言わんばかりに笑うと彼女はそのまま私の手を取り優しくステンドガラスの元まで誘導した。そこには先ほどまで無かったフカフカの赤いソファが置いてありそこへフワリと座った。水面に浮くソファー…濡れていないから不思議。
「どうしてソファーが…?」
「レナさんどうぞこちらに」
そう言ってソファーに座りポンポンと自身の膝を叩いたパナケア様は今日1番の笑顔を私に向けた。
こ、これってまさか…!膝枕!?
「え、……えっ!?そ、そんな膝枕なんて…!!」
「夢から覚めるには1度寝なくてはいけませんから、ね?」
うっ…そんな綺麗な顔におねだりされてしまったら断れないっ…!キラキラな瞳で見つめられ少し迷いつつも、恐る恐るパナケア様の膝に頭を預けた。
「っ…お、重たくないですか…!」
「うふふ、大丈夫です。とても幸せです」
本当に幸せそうにパナケア様が微笑むから、私も釣られて笑ってしまう。頭を優しく撫でるその指が気持ち良くて目が開かなくなってきた。
「……、パナケア様、私……」
「……愛しき子レナ、眠りなさい」
…ああ、視界がだんだんと…、
パナケア様が何か言っている気がするのだけど……
「……彼は……いずれ本当に神をも殺めるかもしれませんね」
突然の強い風、静かだった水面が激しく揺れた。
「彼は、______、なのだから」
私の意識はそこで完全にシャットアウトした。
_________
……、
________、
あ…れ、何だか温かい…
手、凄く温かい…何かに包まれてるような…
あれ、私どうしたんだっけ…?
確かパナケア様に夢で会って…、えっとそれから…あれ、これも夢……??
「………、」
……?何か聞こえる気がする。
…私の名前?呼ばれてるような…誰に?
優しく囁くようなテノールのいい声、私は知っている。この声はエイジさんだ…
…そうだ、早く起きなきゃ…って何で早く起きなきゃいけないんだっけ?
………
「っっそうだ約束…!!!」
私は勢いよく寝ていた身体をガバッと起こした。
「………レナ?」
ハッとして横を向けば驚いたまま固まってるエイジさんと目が合った。…彼がこんなに固まってるのは初めて見る。そのまま自身の手元を見れば彼の手が私の手を握っていて、ああ…温かったのはエイジさんのおかげだったのかと理解した。ふふ、起きるまで側にいてくれたのかもしれない。やっぱり彼は優しい人だ。
「……エイジさん、私約束守れましたか?」
「…っっ」
「っわっ!?」
彼に会えた嬉しさもあったし、ホッとした気持ちが溢れ出て自然と笑顔が漏れた。
次の瞬間には強い力で引かれて彼の胸にすっぽりと収まって抱きしめられる。痛いくらいの力に戸惑っていれば私の肩口で静かに言葉を発した。
「………もうすぐで3日目だった」
「…ギ、ギリギリでしたね……」
戯けてみせるも彼は全然離してくれずむしろ抱きしめる力は強くなる一方で、戸惑う。男性に免疫のない私は顔を赤くさせるしか出来ず…とりあえず彼の名を呼び優しく肩をポンポンするも全然離してくれなくて参ってしまう。
……部屋の中は静かで、私達2人しかいない。今は深夜なのか月の明かりだけが部屋を照らしていて…彼の金髪をキラキラと光らせた。
「………エイジさん、」
「……」
「……あの、」
「………」
……私が起きるまで、すごく心配してくれていたのかな。彼の手が少し震えていて……心配かけてしまったことは申し訳ないと思う、だけど…こんなにも心配してくれる人がいるのだと思うと涙が出そうになるくらい嬉しくて…胸いっぱいになる。
「……心配かけてしまって、すみません…」
「……レナ」
「!」
彼の息が首に当たってピクっと反応してしまった。擽ったい、恥ずかしい、嬉しい、申し訳ない、そんな感情で頭がショートしそうだ。多分今首まで真っ赤になっているかもしれない。いや、なっている。
「……、」
「?エイジさん?」
「……たまに、パナケアの名を呼んでいた」
「!」
もしかして寝言を言っていたのだろうか…?変な事言ってないよね私…。
「じ、実は…精神干渉?が出来たからとパナケア様と夢の中でお話していました」
そう私が言えばピクっと身体を反応させるエイジさん。そして1段階低くなる声。
「………言いたい事は山程あるが…とにかく今は簡潔に、何を話したのか聞かせろ」
「えっ、あ、えっと…白魔法の起源の話とか、パナケア様の家族のお話とか……それから、…その、」
「元の世界へ…帰れるかもしれない、お話とか…」
その言葉を口にした瞬間、勢い良く彼にベッドへと押し倒された。
ここら辺の話はずっと執筆したかった回なので楽しんで書きたいと思います。エイジくんの加速したヤンデレデレデレ(そしてヤン)が始まります。笑
中々自分が思い描いている文が書けなかったり、伝わっているか、読みづらくないか、とか不安いっぱいですがご感想頂けたりで何とか頑張れています。本当にありがとうございます。マジ泣きました。
そして誤字脱字もありましたらご報告宜しくお願いします。




