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とある侍女の嘆き(マーサside)


手当てを受けるまだ少女とも言える見た目のレナ様は突然私達の前に現れた女神のようなお方でした。


「ご迷惑おかけしてすみません…」


申し訳なさそうに謝る彼女はとても可愛いらしいお顔をされていて、その顔にそぐわない綺麗な白い肌に浮かぶ複数の傷。とても見ていて痛々しい…同じ年頃の令嬢がこんな傷をしたら癇癪を起こすか失神してしまうレベルだろうに…レナ様はみんな無事で良かったと傷なんて気にしてないように綺麗に笑ってくださいました。


最初こそ、アリスお嬢様が連れて来られた方ではあるけど謎多いお二方に少し警戒してしまった。

レナ様は詠唱なしの不思議な癒しの力を使っていますし…特にエイジ様のお力、魔獣を従え影の力を扱う青年。少し禍々しいにも似たその圧倒的なオーラに普通ではないと感じましたがアリスお嬢様が信じたお方だからと私も…お2人を信じる事にしました。


知れば知るほど、お2人は本当にお嬢様の助けをしようとしてくださっている事はわかりました。特にレナ様は私が出会った中では稀に見るお優しいお心をお持ちの方なのだと思う。


「……お2人は恋人同士なのですか…?」

「へ」

「ち、ちち違います…!!!そもそもそんなのエイジさんに失礼ですしっ…!!」

「えっ…」

「……えっ?」


まさかお2人ともあんなにお互いを思い合っているのが出会って間もない私でもわかると言うのに…いえ、レナ様が気がついていないだけ…?


「お可哀想に…」

「?」


いえ、でもエイジ様からしたらそんな所も魅力的なのかもしれません。

こんなにも優しくてまるで女神のような彼女、礼儀正しく笑顔も素敵でお顔立ちが綺麗なので…侍女としての血が騒いでしまいますね。ぜひとも落ち着いたら一度ドレスなんかも着ていただきたい。



そんなことを思っていればふわふわと笑っていた彼女の顔に影が落ちてしまって。


「…私は優しくなんてないんです」


驚き戸惑ってしまいました。そんな事を真面目に…いえ、苦しそうにおっしゃる彼女に。何故そんな事を?そんな苦しそうに言うのでしょう。

何処からどうみても自身を顧みず他人をお助け下さったレナ様は優しい…むしろそれを通り越した優しすぎる人である事は間違いないだろうに。よく考えてみても…もし私がレナ様の立場にいたとして…見ず知らずの子供に助けてと言われて危険に自ら飛び込む事ができるか。答えはNOであるだろう。口では何とでも言える…しかしそれを実行に移したのは彼女が芯の強い、そして他人を思いやれる優しい心を持っていないと出来ないことなのだから。


「っ…わ、私、…誰かのために、何かをすればっ自分も幸せになれるんじゃないかってっ…」


「誰かのためじゃない、結局は自分のために全てっ…気付かないふりしてた!でもっ、本当は浅ましい人間なんだとっ…」



……ああ、この方は頑張り過ぎてしまう人なのか。誰にも頼らず…いえ、頼る人がおらずに生きてきたのでしょうか。1人でずっと。

わがままを、甘える事をして来た事がないのですね。


レナ様はたまに孤独を知る者の目をしていて気になっていました。まるで昔の私のようで…

レナ様がどのような家庭で育ってきたかはわかりません。ですが…こんなにも人に優しくて、芯の強い女の子になるためにはそれ相応の人生を送ったはず。

年頃の普通の令嬢であれば、きっと彼女はとても素敵な人生を送っていた事でしょう。そんな事を言っても仕方のないことなのはわかっていますがそれでも願わずにはいられないのです。


「……私…甘え方がわかりません…」

「簡単です。今までこれを言ってしまうと迷惑かけてしまう、と思った事を言う様にすれば良いのです。…ふふ、エイジ様なら喜んでくださると思いますが」

「……、?エイジさんに、甘えるんですか…?」


そうですとも、エイジ様以外にいらっしゃいません。


「で、でも今回の事だって彼に無理を言って…」

「いいえ。誰のためでもない、レナ様自身が願った事ですよ」

「…?」

「ふふ…さぁ、見えていた所の治療は終わりました。他にお身体に怪我はございませんか?」

「…あっ、えっと…」


そう、いつも人のためにと誰かにお願いしているのでしょう。自分のためではなく、それは誰かのための願い。そうではないのですレナ様。


あなたが貴女のために願うのです、それこそ…



_____エイジ様とただ一緒にいたいのだと



それを彼に願えば簡単に叶う願い…と言うかむしろ喜ばれるはず…それなのに…


「私は一度お嬢様の所へ行きますのでレナ様はお召し物を直してから来てください」



部屋を出る際に見えたレナ様のお顔はとても難しいお顔をされていて……きっと私が思ってるような考えにはいたっていないようなお顔でした。


パタンと部屋の扉を閉めるとため息が漏れてしまう。


「……もどかしいですね…」

「……」

「!…エ、エイジ様…」


壁に背を付けて腕組みしているエイジ様がいた事に驚き声をあげてしまう。

い、いつからいたのでしょうか…!?まるで気配を感じませんでした…


「…怪我の具合は」

「だ、大丈夫です…!跡も残らなさそうな傷でしたので……」

「……そうか」


エイジ様は表情に出ずらい方の様ですがレナ様の事に関してはしっかりとお顔に出る様ですね。

…難しい表情をされているのは、もしかして…今のお話を聞かれていたのでしょうか。



目の前にいる青年、エイジ様は世間一般的に見てとても整ったお顔立ちをされていて…それでいてこんなにも強い力をお持ちならば世の女性がほっておかれないであろう容姿をされています。ただ表情が出にくいようなので怖い印象を持たれてしまいそうですが…私は知っています、レナ様に向ける微笑みは凄く優しく…愛おしい者を見る目だと。こんなお顔で自分にだけ微笑まれたら勘違いしてしまいそうですが…と言うか好意を持たれているとわかると思いますが…どうやらレナ様はそう言った事に鈍感でおられるようで。全く気付いておりませんでした。エイジ様が可哀想になるくらい……


「……エイジ様…、その、聞かれておりましたか…?」

「……俺の前で、レナはあまり自身の感情を見せない」


あ、


「お前の前では吐き出したのか」


…私はエイジ様に殺されるのでしょうか。


凄味が強い顔で見下ろされて冷や汗が流れる。目が泳ぎながらも精一杯の震える声で出た言葉は蚊の鳴く様な声でした。


「……ぃ、いえ……どうでしょうか……あはは、」



「…レナの事をわかっているのは俺だけでいい、あいつが頼るのも、感情を見せるのも…全て」

「……っ、」


エイジ様の目は、私を見ているようで見ていない。瞳孔の開いた目は狂気を含んでいて…きっとレナ様しか見えていないのだろうと改めて思う。

汗が頬を伝う。ああ…この方はなんと恐ろしい方なのだろうか、レナ様を全て自身のものだと確信している。レナ様のお気持ちだとか…世間一般で言うとそれはおかしいだとか、そんなもの関係ないのだ。エイジ様には。


「…レ、レナ様が…貴女の側を離れたいと申したら…どうされますか」


震えた声。

彼と目が会えば金色であったはずの綺麗な瞳が暗い闇の色にのまれていて。ゾクリと身体全身が震えた。


「……全て壊す」

「っ……!」

「……まぁ、今のレナに俺から離れる選択肢は無い」

「……?」


一体それはどう言う意味でしょうか。遠くを見て薄く笑う彼はこの世の者ではないような気がした。


「……レナといれば、この気持ちもわかるからな」

「………えっ」


彼の言葉に思わず怖いとかそんな気持ちすっぽりとなくなり素っ頓狂な声をあげてしまいました。…今の言葉はどう言う事でしょう??


___この気持ちもわかる とは、


もしかしなくても……エイジ様も自身の気持ちに気がついていない…!?


「な、何てことでしょうか…」

「………?」


レナ様も、エイジ様もお互いの気持ちに気がついていない…!?な、なんてもどかしいのでしょう!!特にエイジ様!!こんなにもレナ様に対しての独占欲の究極版みたいな気持ちを向けていると言うのに…!!これでわからないだなんて…!!!


ああ…これは…大変です……。


私が頭を抱えていればそんな私を気にする事なく、そしてノックもせずに部屋へと入っていきました。


「……っきゃあ!?エ、エイジさん!?わ、わわ…!ま、待ってくださっ…」


ああ…レナ様まだお召し物直してなかったのですね……。


何も言わずにそのままズカズカと入って行かれたエイジ様。……ああ、私は何も見なかった事にしましょう。

そしてこれで少し、お互いに意識して頂けたら。


「……レナ様、大切なものはすぐ側にあるものですよ」



優しくて不器用なお2人が幸せでありますように。


修正入れました…!


見て下さる方いるかわかりませんが誤字脱字ありましたらご報告お願いします。

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