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甘えると言う事


暗い道をエイジさんの手を引きながら歩く。

よくよく考えたらエイジさん居るんだし敵も居なくなったんだから上から普通に行けば良かったのでは…?と気が付いて苦笑いしてしまった。

そんなことを考えていれば目の前に光が見える。あ、多分これアリスちゃん達がいる部屋のドアだ。


…となると…あの変な光の空間は何だったのだろう…確か、パナケア…様だったよね?ステンドガラスに描いてあった人と一緒だったしあの人は本当にパナケア様だった…?でもどうして私の前に姿を現したのだろう。それにあの蛇も、不思議な雰囲気だったな…


そんな事を思いながら扉を開けると眩しい光に目が眩む。そして聞き慣れた声が私を呼んだ。


「レナお姉さん…!!!」


アリスちゃんがパタパタと駆け寄ってきて、更に後ろからマーサさんが「ご無事で…!」と涙ぐむも私の身体を見て顔を青くした。


「レナ様お身体に傷が…!」

「え?あ…全然大丈夫です!」


私は無事を伝えるために笑うと後ろにいたエイジさんを見る。


「ふふ、エイジさんとも合流出来ましたよ。」

「エイジお兄さん!!」

「それとアリスちゃん、お母さんも無事ですよ」

「!!」

「ああ、奥様…!!」


シェリルさんに駆け寄る2人。

ぐったりしてるお母さんを見たら心配になるよね…でも安心して欲しい。気絶してるだけだから暫くしたら目を覚ますはずだから。


「ママっ…!!ママどうしたの!?」

「シェリルさんに怪我はありませんよ、気を失っているだけなのでベッドに寝かせましょう」

「ベッドはこちらです…!準備致します」


しごできなマーサさんが布団へと案内してくれるとエイジさんはゆっくりとシェリルさんを横に寝かせた。

先程俵担ぎした時の勢いがあったためハラハラ見守ってたけど良かった。とホッと息を撫で下ろす。


「ママ…!ママ…!!!」


布団の上からシェリルさんに抱き付くアリスちゃん。近付き震えるその背をさすった。


「…大丈夫です、すぐに目を覚ましますよ」

「……ほんとう?」

「はい!だって私は魔法使いですから!」


その言葉にアリスちゃんは目をぱちくりとさせると滲んでいた涙をぐしぐしと拭いてパァと笑った。うん、可愛い。やっぱり女の子は笑っていなくちゃね。


「レナお姉さん、ママを助けてくれてありがとう…!」


マーサさんもそのアリスちゃんの様子に安心したようにホッと息を吐くと深々と頭を下げた。


「ふふ、私1人じゃ無理でした。エイジさんがいてくれたので」


ね?っと彼に笑いかければ目を細める。

…あ、あれ?その顔は一体何の顔でしょうか…?


「……良い子にしてなかった事に関しては後程お仕置きが必要だな?」

「……ひぇ」


そ、そうだった…!私彼との約束破ってしまったんだった…!!


「黒狼もだ。レナの側を離れるなと言ったな?」

「…クゥーン…」

「!ち、違うんです!黒狼は止めてくれたんですけど私が無理を言ってお願いしたんです…!黒狼は悪くないので叱らないであげてください…!!」


耳を垂らして反省している黒狼をギュッと抱きしめて守るように彼を見上げれば何故か更に凄みが増した。…な、何で!?


「……黒狼」

「!!ワンっ」

「?」


低い声で黒狼を呼べば何かを察した黒狼がササッと私から急いで離れた。……だから何で!?

私が何かしてしまったのかと思いしゅんっとしていればアリスちゃんとマーサさんがエイジさんの前に立ちはだかり私を守るように抱きしめる。


「エイジお兄さん、レナお姉さんは悪くないの…!アリス達のためにしてくれたんだよ!」

「お、お怒りはごもっともですが叱られるならば私達も一緒に…!」

「ふ、2人とも…!」


感動して涙ぐんでいればエイジさんの凄みがもう2段階くらいあがった。

……ど、どうしたら許してもらえるのだろう…!


そんな私の思考を見透かしたような彼は「…はぁ」と小さくため息をつくとそのまま2人から私を奪うように抱き寄せ腰に手を回す。


…えっ、な、な、何で…!?

私が目を白黒させていればマーサさんが何かを察したように「なるほど…」と呟いてアリスちゃんに耳打ちした。何かを聞いたアリスちゃんがキリッとした顔すると「パパとおんなじだ…!」と言っていて更に意味がわからなかった。そんな私の様子を知ってかしらずかエイジさんは黒狼に目配せする。


「下にいる警備兵で最後だ」

「ワン」

「…それから下に転がってるやつは厳重に地下牢に入れろ」

「ワン!」

「転がってる…?」

「…ベイグ・スカーレット…今回の首謀者だ」


アリスちゃんが「叔父さん…!?」と驚き声を上げた。彼は当たり前のように頷く。

…さすがエイジさんだ。いつの間にか首謀者を捕まえてたのか…!あの巨体の人も追い払って警備兵も全て捕えた。


「もうここに敵はいない」


その言葉にホッと息を吐いた。アリスちゃんとマーサさんも肩の力が抜けて笑い合っている。

良かった……終わったんだ…



…いや、まだ終わってない。私のやるべきことはこれからなのだから。


「…後は、アリスちゃんのお父さんですね」

「………」


そう小さく…無意識に出ていた言葉。それが聞こえたのか、腰に回っていた手に力がはいる。隣にいるエイジさんを見ても目が合わない。いや彼が故意的に合わせないようにしているのがわかった。


「…?エイジさん?」

「……レナの手当てが先だ」

「!…レナ様こちらへ!手当てさせていただきます…!」

「え?あ、私は大丈夫…」

「ダメだ」

「えっ?エイジさん、でも…」

「いえ!ダメです!!しっかり治しましょう!!」

「は、はい…」


あれ、何だか最近こんなことばかりな気がする。何故だろう。



_______


「レナ様こちらにお座りください」


あの後シェリルさんをアリスちゃんに任せると別室に連れて行かれて窓際にあったソファへと座らされる。ちなみに心配でついて行くと聞かなかったエイジさんを宥めてアリスちゃん達をお願いした。納得いっていない姿に心配してくれるのが嬉しいのと同時に少し笑ってしまう、大した怪我じゃないのにな…


対面にマーサさんが座り擦り傷に消毒液を優しく付けてくれた。…うう、少し沁みる。


「……レナ様は…」

「?」

「…癒しのお力をご自分の傷には使われないのですか…?」


彼女の言葉にキョトンとしていれば慌ててすみません、失礼な事をお聞きしてと謝るマーサさん。いや、そうだよね…普通はそうやって思うもんね。


「えっと…あの、私…自分の怪我とかはその、治せなくて…」


お恥ずかしながら…と困ったように笑えば彼女は目を丸くさせた。


「それなのに…こんな危険な事をしたのですか…?」

「えっ?あ…そ、そうですね…?」


正直、自分に力を使えないって忘れてたと言うか…そんな事頭から抜けてしまってたし…目の前の人を助ける事に精一杯だった。それに…


「…エイジさんも居てくれたので、大丈夫かなって…何かあれば彼がきっと助けてくれると…」


彼はとても強い、そして約束は必ず守ってくれると。だからこそあの時怖い気持ちもあったけど勇気がでたのだと思う。


「……お2人は恋人同士なのですか…?」

「へ」


っこ、恋人…!?そんな風に見えてたの!?


「ち、ちち違います…!!!そもそもそんなのエイジさんに失礼ですしっ…!!」

「えっ…」

「……えっ?」


エイジ様…お可哀想に…と呟くマーサさんに首を傾げる。そんな私を見てマーサさんはくすくすと肩をすくめた。


「…ならそう見えるくらいにお2人はとても信頼し合っているんですね」


そう言ってもらえると純粋に嬉しい。彼はきっと私を親鳥の様な感覚で見ているからだろうけど信頼してもらえるのは嬉しいし私もそれに答えたいとも思う。


「ですが…心配は尽きないでしょう、貴女様はとても優しくて他人を優先する人に見えますから」



‘’優しい‘’


……これは、私には当てはまらない言葉だ。


「……レナ様?」

「……マーサさん、エイジさんはとても優しい人です。」


彼は元から優しい人間なのだ。

過去して来たことは変わらないけど…それはそうするしかできなかったから、それしか知らなかったからで。環境が違えば彼はきっと人から愛される人間であったはず、彼は今があるのは私のおかげと言っていたけど…それは違うと思うのだ。


「彼は、彼こそは本当の意味で優しい人なんです。」

「……本当の意味で、とは…」

「…私は優しい人間なんかではないんです」

「レナ様…?」


俯くと、マーサさんが心配そうに顔を覗き込んでくれる。


「っ…わ、私、…誰かのために、何かをすればっ自分も幸せになれるんじゃないかってっ…」


マーサさん、戸惑ってる。止めなきゃと思うのに止まってくれない言葉。私は誰かに吐き出したかったのかもしれない。


「誰かのためじゃないんです、結局は自分のために全てっ…気付かないふりしてた!でもっ、本当は浅ましい人間なんだとっ…」


ああ、そうだ、私は…


「それを、彼に…エイジさんに知られてしまうことが怖くて…、せっかく彼が「俺がいると」いってくれたのに怖くてっ…私に彼の手を取る資格なんて…、」

「……レナ様…」


そこまで言ってハッとする。


「す、すみません…!こんなこと言うつもりなんてなくって…そのっ、困らせて、しまって…」


すみません…と尻すぼみになりながら言えばマーサさんはフッと笑うと治療をする手を動かし始めた。


「困ってなんておりませんよ、麗奈様はもう少しわがままを言って良いかもしれませんね」

「……わがまま…?」

「人は1人では生きていけませんから。レナ様は……そうですね、わがままは性格上難しそうですし…言い方を変えましょう。…人に甘えると言う事を覚えた方が良いでしょうか。」

「甘える…」


甘えるって…、どうすればいいんだろう…?母が死んでからは1人でずっと生きてきたから、人に甘える事なんてした事ない。


「……私…甘え方がわかりません…」

「簡単です。今までこれを言ってしまうと迷惑かけてしまう、と思った事を言う様にすれば良いのです。…ふふ、エイジ様なら喜んでくださると思いますが」

「……、?エイジさんに、甘えるんですか…?」


彼以外にいませんよ。と微笑んだマーサさんはいつかの母と重なって、少し胸がぎゅっとなった。


「で、でも今回の事だって彼に無理を言って…」

「いいえ。誰のためでもない、レナ様自身が願った事ですよ」

「…?」

「ふふ…さぁ、見えていた所の治療は終わりました。他にお身体に怪我はございませんか?」

「…あっ、えっと…」


そう言えば…あの森で貫通した肩、全然痛みないから忘れてけど…どうなってるだろうか?

肩の服をずらして見てみれば傷口が既に塞がっていた。


「っえっ…」

「どうかなされましたか?」

「あ、いや……」


何でだろう…?結構深い傷だったよね?もう塞がるだなんてことある…?この白魔法は自身には使えないはず。この世界に来て体質が変わったとか?いやでも…かなり深い傷だったはずなのにどうして…


「お身体も大丈夫そうですね、私は一足先にお嬢様の所へ行きますのでレナ様はお召し物直してから来てください」

「え、あ、はい…!」


考えてもわからないし後でエイジさんに聞いてみようかな…。


「………」


マーサさんが居なくなった部屋で1人考える。

…それにしても…甘える、か…

そもそも甘えるってどう言う事なんだろう…?全然わからない…しかもそれをエイジさんにするって、絶対面倒がられない??マーサさんが言っていた私自身の願いってどう言う事なのだろう…今回の事だって私の願いに変わりはないのに……ううん、考えてもわからないや…


「……はぁぁ…」


でも、1つ確かなことは彼を自由にしなくてはいけないってことだ。恩を感じてくれるのは素直に嬉しい、だけどこれ以上彼を付き合わせてしまうのはダメだ。私を親鳥のように思っているならなおのこと。

……見返りなんて求めない、素敵な人と出会ってほしい。


「……お別れかぁ…」


お金もないし、お礼出来る物は用意出来ないけど…精一杯ありがとうを言おう。

小さくチクリと痛んだ胸に私は首を傾げた。


少し修正しております。

次エイジ視点にしようかと思ったんですが一度侍女のマーサ視点を挟むかもです…。見てくださる方がいるかわかりませんが頑張って執筆しますので宜しくお願いします。


それから誤字脱字も…あれば…ご報告ください…宜しくお願いします。

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