癒しの女神
「…わっ、危ない…転ぶ所だった…」
あれから暫くの間真っ暗な道を進む。壁に手を付くも暗すぎて平衡感覚がなくなる……結構歩いたと思うんだけどな…そう思っていればフワリと温かい風が頬を掠めた。
「?」
あれ、今何か上から落ちてきたような…
上を向けばヒラヒラと天使の羽のようなものが落ちてくる。淡く光っているそれは次第に数を増やして地面を埋め尽くすと光の絨毯のようになっていった。
「な、何これ…!?」
驚いていれば何かの気配を感じて視線を前に向けた。そこには綺麗な白い蛇が1匹、こちらをじっと見ている。不思議な雰囲気を放っていて…まるでいつかのファングにあった時のような感覚を思い出した。
えっ…あれ…へ、蛇だよね…?何でここにって言うかこの羽も……えっ、何これ…??
訳がわからず戸惑っていれば蛇は地面の羽を掻き分けながら私の足元へとやってきた。
危険な感じはしないけどやはり怖い、毒とかないよね…?恐る恐る蛇に近付けば何故か頭を下げた。まるで首を垂れるようなその挙動に困惑する。
「貴方は…?」
声をかけるとゆっくりと顔をあげる。蛇は綺麗なエメラルドグリーンの瞳をしていて目が合った瞬間、ブワッと強い風が吹いた。
目も開けれない強い風、一瞬の出来事に瞑っていた目を開ければ温かい光に自身が包まれていた。とても温かくて優しい光に安心する。
「?」
一体何が起こっているのだろう…?この光は…
さっきとは一変、白い空間をキョロキョロしていれば透き通るような綺麗な声が聞こえる。
〈愛しき子よ〉
「!…だ、誰…?」
声のした方を向けばとても綺麗な女性が立っている。なんだかアステナ様と似たような雰囲気…しかし、でも何故か懐かしい気がするその人に不思議な気持ちになった。
〈我、パナケアの祝福を〉
あれ、パナケアって確か____…
キラキラとした粒子が私を包みクルクルと身体の周りを回った後、こっちだよ…とそよ風に乗るように私を誘う。一歩、また一歩と足を動かす、それはまるで無意識に…動かされるような不思議な感覚。
「…___そっちに何があるの…?」
漂う粒子の後を追っていれば目が眩む程の光に襲われる。光が収まると同時にギュッと閉じていた目をゆっくりとあけた。
「ここは…?」
目の前に広がるのは海外で見た事ある教会のような場所。あ、もしかしてここが礼拝堂…?
え、…あれ?今まで暗い道歩いていなかっただろうか?なぜ急に。呆気に取られていれば粒子が目の前を通り上へと移動した。それを目で追っていけば粒子は私の後ろにあったキラキラと光るステンドガラスに吸い込まれるように消えていった。
「…わぁ……凄い大きくて綺麗…」
大きな羽を生やした女性が描かれたステンドガラス。天井まで届く程の大きさだった。キラキラと光ったガラスが私を歓迎してくれているようだった。
あれ…?このステンドガラスに描いてある女性ってさっきの……
「あ、あの…貴方は…?」
考え込んでいた私の背後から突然声が聞こえて慌てて振り向く。目の前には祈っていたであろうポーズで座り込む綺麗な女性がいた。目を丸くし驚きで固まっている。
綺麗なブロンドの長い髪を三つ編みにしている女性、その顔に私は見覚えがあった。
…アリスちゃんの持っていたペンダントに写ってた女性だ…!!と言う事は…
「あっ、あの、アリスちゃんのお母さんですか…?」
「!アリス…?あなたっ、…あなたアリスを知っているの!?アリスは今どこにっ……」
立ち上がった瞬間にふらつく女性に慌てて駆け寄る。凄く顔色も悪く今にも気を失ってしまいそうな程で…
それはそうか、夫が不治の病に倒れて愛する娘とも急に会えなくなり消息も不明…閉じ込められ探しにもいけない、自分に出来ることは神に祈るしかないなんてどれだけ不安でどれだけやるせなかった事だろう。細い肩は今にも折れてしまいそうで…ご飯も喉を通らなかったのだろうことが予想出来てしまった。
「アリスちゃんは無事です。大丈夫ですよ、今はマーサさんと一緒にいます。アリスちゃんはとっても強い子ですね」
「!…そう、そうですか…よかっ…た…、」
ポロポロと涙を流しながら掠れた声でお礼を言うアリスちゃんのお母さん。安心して力が抜けたのかぐらりと揺れる身体を支えた。
やはり体調が悪そうだ…
「少し、元気になるおまじないをしますね」
「え…?」
私の身体から温かい光が溢れて彼女の身体を包む。驚き目を見開くアリスちゃんのお母さん。
早く元気になりますように、そう祈りながら魔法を使えば少し元気が戻ったのか先程よりも彼女の顔色は良くなった。
「どうですか?」
「凄いわ…身体が楽になった気がするの、ありがとう…えっとその…貴方は…?」
「私はレナと言います。アリスちゃんにお願いされてあなた方を助けに来ました。」
「…まぁ…!私はシェリルです。アリスをここまで連れて来てくれて本当にありがとう…」
何度もお礼を言うシェリルさんに、よく1人で頑張りましたね。と笑いかければまたポロポロと涙を流した。…良かった、顔色も良くなったし早くアリスちゃん達の所に……
と思っていれば、とんでもなく大きな音でドゴォ!!っと真横の壁に突然穴が空き私達の目の前を何かが通り過ぎた。
「きゃっ…!!」
「っな、何!?」
シェリルさんを守るように抱き寄せるも飛んできた無数の瓦礫で数箇所身体を切ってしまう。
「シェリルさん大丈夫ですか!?」
「……っ、一体……」
砂埃が落ち着き音の正体を見れば壁に減り込む巨体の男性を軽々押さえつけるエイジさんがいた。すぐにこちらに気付くと彼が驚いたように声をあげる。
「……何故ここにいる」
「エ、エイジさん…?」
ひぇぇ!その壁に減り込んでる人って例の魔術騎士ですよね…!?その人の身体ボロボロになってますけど…!!
「………良い子で待ってろと言っただろ」
「す、すみません…!!!」
彼の声が低い…!!これは約束を破ってしまったから怒っている…!すみませんっ…でもまさかこんな登場すると思ってなくって…っ!!ボロボロの相手とは対照的にエイジさんにはかすり傷1つなくてホッと胸を撫で下ろした。さすがだ…
「…よ、良かった…エイジさん怪我してない…」
その独り言のような言葉にピクリと反応すると彼は巨体の人を放り投げると(!?)私の方へ歩みより身体にある擦り傷を見て眉を寄せた。
「傷が増えている」
「えっ…あ、私は大丈夫です…!」
「俺が大丈夫ではない」
さらに低くなる声に慌てて元気アピールをするも更に眉間の皺が増えた。腕の中にいたシェリルさんがエイジさんを見て怯えてしまいそれにも慌てて「エイジさんは私達の味方ですから…!」と言うも顔を青くしたままのシェリルさん。
…え、これどうしたらいいの…?
「……もしかしてそいつが報告に載っていた女か」
そんなことをしていれば放り投げられていた男は巨大をヨロリ…と動かしながら私を品定めするように見てくる。
「まさかあの殺人兵器がこんなに取り乱すとは…」
…ほ、報告って何?何の話…??
訳が分からないけど間違いなく女、とは私の事を言っているようで困惑して思わず身を引いた。それを見たエイジさんが一歩前にでて声を発する。
「………レナに手をだしてみろ、殺すぞ」
ザワッ!!と一瞬で建物までもがビリビリとひりつき振動が伝わる、鈍い私でもわかる。これは殺気だ。とんでもない、息をするのも憚られるような。
私の横でシェリルさんが更に青い顔で浅く呼吸している。これはまずい…!
「っ…エイジさん…!」
「……、」
私の呼び声でこちらに顔だけ向けた彼の瞳は瞳孔が完全に開いていた。
「…わ、私が見えますかっ…?」
「………、見えている」
「…私の声聞こえてますか…!」
「………ああ」
「…私、ここにいますよ…!」
「………レナ、」
フッと空気が和らぐ。彼の瞳が正常に光出した。はぁっと息を吐く。
…よ、良かった…いつものエイジさんだ。
ホッとしていればドサッと音がしてそちらに目を向ける。自身に向けられた殺気が消え力が抜けたのか巨体の男は冷や汗を流しながら膝をつく。そして私と同じように…いやそれ以上にドッと息を吐いた。
「っ…お前の相手だなんて死にいくようなものだ、今は引こう」
エイジさんが私に気を取られてしまっていた為に大柄の男は魔法陣を発動させて姿を消した。
「…い、いなくなっちゃった…」
「……逃げられたか」
「す、すみませんっ…私のせいで…」
「いや」
エイジさんは深追いするつもりはないようで刀をしまう。
「お前がいなければ殺していた」
「!…そう、ですか…」
と、とりあえずよかった…のかな…?
ハッとしてシェリルさんを見れば驚いたように私を見ていた。
「…大丈夫ですよ、彼も私達の味方でエイジさんって言います。凄く強いんですよ!」
シェリルさんは少しの間の後コクンと頷き、先程まで男がいた場所に目をやった。
「……今の男に、閉じ込められていたんです…」
「!…そうだったんですね、それならもう大丈夫です。エイジさんが追い払ってくれました!」
気分が紛れるようにと優しく喋りかければ幾分か震えが止まった。良かった…立てますか?と言えば困惑したように足元に目をやる。その座り込んだ足からは血が出ていて慌てて魔法を使った。
「この光…凄く温かくて安心するわ…」
「ふふ、良かったです。早く治してアリスちゃん達の所に戻りましょう」
「で、でもまだお祈りが…夫の顔色も凄く悪くて……」
「大丈夫です、あなたの旦那さんもきっと私が治しますから。」
その言葉と共にシェリルさんの足の怪我は綺麗に治った。驚いたように声をあげる。
「!足の怪我が…」
「これでもう大丈夫です、全て私が治します」
「!」
「エイジさんもいますから安心してください!さぁ行きましょう。」
彼女に手を差し出す。
「_____…」
___と、何故か目を見開くシェリルさんに首を傾げた。
「あのシェリルさ…」
「羽が…」
「え?」
「もしかして……」
「あ、あの…?」
「パナケア様…」
「へ?」
「貴方はパナケア様なの…?」
「え……」
「私のお祈りが届いたのね…!?」
「えっ、いや違っ……」
嬉しそうに涙を浮かべて私の手をギュッと握る彼女は期待の眼差しで私を見つめてくる。
ど、どうしてこうなったの…!?
次からエイジのターンです。
読みにくさ満載ですが少しでも楽しんでくれますように…。誤字脱字、何かアドバイス等あればぜひ御意見ください…反応も頂けると励みになります……




