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初めての拒絶


「何だか…警備が手薄すぎませんか…?」

「誰も居ないね」


アリスちゃんと2人でキョロキョロと辺りを見たけど人の気配はない。


「…中からしか気配はしてない、大丈夫だ」

「こちらとしては都合良いですけど何ででしょうか…?」


今回の計画としてはこうだ。

裏手から潜入し、なるべく敵にバレずアリスちゃんのご両親の無事を確認…そしてマーサさんや警備隊の人達も見つけて保護する流れだ。とても簡単、話する分には簡単ではある。きっとそう上手くは行かないかもしれないけどエイジさんもいるし、大丈夫。まずは敵に気付かれずに中に潜入から…

と思っていたのだけど…何か拍子抜けしてしまう、何で誰もいないのだろう??


「……なるほど、小者だな」

「え?」

「いや、それよりも行くぞ」


エイジさんはアリスちゃんに目で合図を送った。アリスちゃんはまるで了解!っと言うようにびしっと敬礼をすると何もない壁をぺたぺたと触り出す。一体何をしてるのだろう?


「アリスちゃん?」

「んっとね、ここら辺にあるの…あ!あった!」

「え?」


アリスちゃんが一箇所壁を押し込んだらゆっくりとドアが出て来た。隠し通路って言ってたから洞窟みたいなとこ想像してたんだけど隠し扉だったんだ…!!元の世界にはまずないであろう仕掛けで少し感動してしまった、何これ凄い…!


「大丈夫だ、このまま中へ進むぞ」

「は、はい!」


はしゃいでる場合じゃなかった。これから敵陣の中に突入するんだからしっかりしなきゃ…

アリスちゃんの小さな手を離れないよう握れば応えるように力がはいる。

中に入り狭く暗い道を数分歩けば壁にぶちあたった。アリスちゃんが一歩前に出て壁に手を置くも反応なし。アリスちゃんが何度も手をペチペチするも何も現れない。


「っあ、あれ?」

「アリスちゃん?どうしたの?」

「…と、扉がひらかなくなってるの…!」

「え!?」


涙を浮かべながらどうしようと嘆く。私もどうしていいかわからずとりあえず壁を触ってみる。…うーん、何もならない…。

どうしたものかと考えあぐねていれば私の後ろからエイジさんが徐に壁に手を当てた。


「レナ、壁から離れてろ」

「えっ…あ、はい…!アリスちゃんもこっちに」

「うん!」


私達が離れたのを目だけで確認すると彼はギリギリ聞き取れる声で「姿を表せ、解除魔術…」と呟いた。

次の瞬間壁一面埋まるほどの大きさがある魔法陣が浮かびあがる。何処からか風が舞い私達の髪を靡かせた。


「やはりな」

「えっ?」

「全ての扉に侵入出来ないように魔術がかけられている」


その魔法陣はまるでエイジさんを拒絶するかのように徐々に光だすとバチバチと火花を散らした。離れてろと言われた以上無闇に近づけずハラハラしながらその様子を見守る。


「破壊は俺の得意分野だ」


エイジさんのその言葉と共に黒炎が魔法陣を飲み込むように広がると光が徐々におさまり魔法陣が消えていく。


「…魔法陣が、消えた…?」

「解除した、もう扉が開く」

「わっ!本当だ!お兄さん凄い!開いたよ!」


早速アリスちゃんがカコンと音を鳴らして壁の一部を押すと扉が開いたため嬉々として中へと入った。

本当だ…!流石エイジさんだ…!もう黒炎何でも出来る気がするけど!味方ならこれ以上心強い人はいない、これでやっと中に侵入できる!


「まぁ…今ので中の奴らには気付かれただろうが」

「えっ……」


「侵入者だ!!捕えろ!!」


長い廊下の先からガシャガシャと鎧の重たい音と共に数人の警備兵が私達目掛けて走ってくる。

ひぇぇ!!警備の目を欺く為に隠し通路から来たのに結局バレてしまった…!いやでも魔術かけられてたなら仕方ないもんね!?


「…別にバレてようがなかろうが関係ない」 

「えっ!?」

「レナがいるから出来るだけ安全を選んだまでだ。どちらにしろ守ることに変わりはない」

「っエイジさんっ…!」


さらりとイケメン発言をする彼に思わず頬を染めつつも突っ込んでしまった。こんな時にっ…!

と言うか全ての基準が私になってる気がするんだけど大丈夫だよね…!?


「なっ、なるべくアリスちゃん達の家族もいますし無駄な争いは避けましょう…!ね!?」

「………そうか」


何だか全ての人間をどうにかしてしまいそうなエイジさんを宥めつつどうするかを考える。彼には協力をしてもらってはいるがやはり殺しはして欲しくない。だから出来るだけ戦闘は避けたい。そう思いアリスちゃんの手を引くがどうやら足がすくんでしまっているようで顔を青くしたまま動けないでいる。それなら…っと咄嗟にアリスちゃんを抱っこした。少し重いけど走れない訳ではない、これなら行けると改めて逃げるべく走ろうとした。


「きゃっ!?」


あれ、これ前にもあったような。


「2階まで走るぞ」

「エ、エイジさっ…」

「アリス・スカーレット、わかってるな」

「レナお姉さんを離さない!!」

「何か合言葉みたいになってませんか!?」


最近お馴染みになりつつあるがまたもエイジさんに片手で抱えられる。いや確かに私が走るよりも絶対的に速いから仕方ないけど!!これの方が効率いいけど!!それでもやはりこれは慣れない!!

とは思いつつも私が落ちればアリスちゃんが危ないので急いでエイジさんに抱きついた。



相変わらずの素速い動きに追い掛けてきていた警備兵が遠くに見える。流石だ。

そのままエイジさんは2階の階段を駆け上がるとアリスちゃん達の両親が居るであろう角部屋へと目指す。…はずだったのだけど、


「………」

「っ?エイジさんどうしたんですか!?」


ピタリと彼の足が止まる。突然の行動に焦っていれば前の方向からもガシャガシャと兵士の走る音が聞こえ、アリスちゃんが「お兄さん前からも敵来た!!」と前方を指差した。

後ろからも音が近付いているしハラハラしながら彼を見ればそのまま目の前の部屋へと入る。

この部屋に入っちゃったらもう逃げ場がなくなっちゃうのに…!

どうするのかと思っていれば彼は自身の影に向かって突然「黒狼クロウ」と呼びかける。何をしているのかと思っていれば彼の影からにゅっと何かが出てきた。


「わっ!え…、狼…?」


そこには真っ黒の大きな狼。黒狼と呼ばれたその子は何処か不思議な気配を放っている。凄い綺麗…と見惚れていればエイジさんの目配せにコクンと頷くと部屋の影にトプンっと飛び込んだ。

…凄い、まるで影が液体みたいになってる…!


「…これで暫くは大丈夫だ」

「エイジさん、今のは…」

「俺の魔獣だ。…力が戻ったからか発動出来るようになっている」


エイジさん魔獣も従えてたんだ…!!え、本当に何でも出来ちゃうのでは…!?

感動していた私をゆっくりと降ろしてくれたので私も抱っこしていたアリスちゃんを下へと降ろした。と同時に彼はぐいっと私の腰を引き寄せる。

…っひぇっ、またこれ!っと思っていれば何かを見据えるように部屋の奥に視線を向けているエイジさんに首を傾げた。


「…敵意はないようだが…出てこい」

「?敵意…ですか?」


キョロキョロと辺りを見回したあとアリスちゃんが誰もいないよ?と声を発した。


「…そ、そのお声はアリスお嬢様…?」


震えた声、奥のデカい窓のカーテンからメイド服を着た女性がそろりと顔を覗かせた。外の月が雲から出てくると辺りが明るく照らされる。

そしてその声にアリスちゃんが一歩前に出ると目をまん丸に見開いてかけ出す。


「……っマーサ!!!」

「アリスお嬢様!よくぞご無事で…!!」


膝を折りアリスちゃんを愛おしそうに抱きしめた中年女性、お怪我はございませんか?っと涙を浮かべて心底安心しているその女性は見るからに優しそうな人だった。この人がアリスちゃんが言ってた侍女のマーサさん、まさかこの部屋にいるなんて思わなかったけど無事で…会えて本当に良かったねアリスちゃん。


「マーサ置いていってごめんねっ…」

「いいえ、いいえ、いいのです…!アリスお嬢様の無事をここでお待ちしておりました…!」


……誰かが心配してくれること、誰かが帰りを待ってくれていること、家族や友達…大切な誰かが傍にいてくれること…それって当たり前だけど本当に奇跡のような事なんだと私は知ってるから…1人は怖いのだと、寂しいのだと、全てがなくなってしまうのは怖いのだと知ってるから。

何だろう、アリスちゃんを私と重ねていたからか、何故だろう嬉しいのに、別の何かが込み上げて何だか泣いてしまいそうだ。


「……レナ」

「!」


ぐいっと引き寄せられ目の前が彼の長い指で遮られる。


「エ、エイジさん?あのっ…」

「泣かなくていい」

「えっ…」

「お前には俺がいる」

「!」


エイジさんにそう言われてこの涙は嬉しいから出ているのではないとわかった…いやわかってしまった。


私には誰も帰りを待ってくれる人はいないと…これは寂しくて出てしまった涙なんだと。羨ましいと思ってしまったんだ。

大丈夫だと、生きてさえいれば大丈夫だと何度も自分に言い聞かせて1人で生きて来た。誰かの役に立てれば嬉しいしそれが幸せだから、だから大丈夫と……そう言いながら誰かの幸せを願えば自分にも幸せが訪れるかもと。なんて浅ましいのだろう、自分は誰かのためと思いながらも結局は自身の幸せのために動いていたのだ。


ああ、気づいてしまった。そんな浅ましく卑しい私が彼のその言葉をもらって良いわけがない。


彼の手をゆっくりと解き微笑んだ。その言葉は私には勿体無いくらいの言葉だと、ありがとうを込めて精一杯笑った。


「!」


月が雲に隠れ辺りがまた暗くなる。

ピクっと彼の手が動いた気がするが月明かりが無くなったせいで彼の表情がどう言う表情だったかは見えなかった。



ヤンデレ加速していきます。

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