少女との出会い
「…あれ、…私また……」
目を開ければ木造の天井。
私あの後また寝ちゃってたんだ。
むくりと起き上がれば先程よりも幾分か軽くなった体にほっとする。良かった、動けそう。
「……それにしても、」
辺りを見回すも物音のない部屋に私の声だけが響く。
エイジさんいない…?どこに行ったんだろう
。そんなことを思っていたらふと腕に見た事のない金色の装飾がされたシンプルな腕輪がされてる。
あれ?私こんなのしてたっけ…?
自分の目線まで持ち上げて見ればキラキラと光っている金色の腕輪に、彼の綺麗な瞳を思い出した。何だか似てるかもしれない。
私こんなのいつ付けたんだろう…記憶がないけど…
「…っあ、あれ?この腕輪…」
ピッタリとはまっているからなのか、抜けそうにないのと同時におかしい事に気付く。
これ付けはずしの金具も見当たらない…?え、ならこれどうやって付けたんだろ…いやそもそも付けた記憶が……
「……」
まぁでも取れないならどうしようもない、考えても仕方ないしそのままでもいいか。
「エイジさん、どこかにお出掛け…?」
机の上に彼が身につけてたホルダーもあるしまた帰ってくる…よね?
辺りを見回せば開かれた窓。さやさやと入り込む風と共に賑やかそうな外の音が聞こえた。
…そう言えば私この世界に来てはじめての町なのでは?見た事ない植物とか動物はいたけどずっと森にいたし人にもエイジさんとあの軍人以外には会っていない。
ここの世界はどんな感じなんだろう。
そわそわしながらベッドから開いていた窓の外を見る。そして目を見開いた。
「わっ…!す、すごい…!」
活気溢れた市場のような光景、人が行き交っていて見たことのない物が沢山売られているのがここからでも伺える。
すごい…!物語で見た事ある景色…!まさに異世界。
「あそこのデカいお城みたいな建物は何だろ?」
街の中でも奥の方に見える一際目立つ建物。日本では見た事がないようなお城のような造り、教会?まさかお城とか……?
…気になる、下で賑わう街もあの大きな建物も。
一体ここはどんな場所なんだろうか。
いやでも…何もわからない私が外に出て迷子にでもなってしまったら、もしかしたらエイジさんにご迷惑かけてしまうかもしれない。
大人しく待っていた方がいいよね…
「あれでも…よくよく考えたら私これから1人で生きて行かないといけない訳だし仕事も探さないとだよね…?」
そうだ、早く仕事を見つけて住む場所も見つけないといけない。この世界にまず慣れることも必要だ。
助けてくれた彼にも、お別れをする前に何かお礼をしたいし…そのためにはやっぱりこの世界でのお金も必要……
「うん、やっぱり少し外見に行ってみよう」
心配かけないよう早めに戻ってくれば大丈夫だよね。
少し不安だけど正直な所ワクワクした気持ちもある。せっかく異世界にいるんだし外の世界を満喫してみよう!
_________
「うわぁ…あのトゲトゲしたやつなんだろ…」
出店のような、屋台が連なる道をそわそわしながら歩く。見た事ない色の食べ物が沢山。目の前にある緑のトゲトゲした長細い物体。きゅうりっぽい物だけどトゲトゲしてる部分が黄色だ…なんだか身体に悪そう…いや、でも沢山売ってるあたりこの世界ではよく食べられる物なのかな?それにこの値札?プレートに書いてある記号みたいなのがこの世界の文字?
リュートって書いてある…と言うことはこの世界での通貨はリュートなのか。1リュートいくらなんだろ…
「ってあれ…」
そういえば私見たことのない文字なのに読めてる…!キョロキョロと見回して見ても見た事のない文字なのにしっかりと読めた。
良かった…、書く事は出来ないけど読めるだけで大分助かる。でもこの先仕事をするなら文字は書けてた方がいいよね…見た事ない物も沢山だし勉強していかなきゃ…
色々とどうにかしないといけない事が沢山ある。それにもう一つどうにかしなきゃ行けない事、それが…
「……なんだろ、何だか、周りからの視線が…」
チラチラと道行く人に見られているこの視線だ。凄く居心地が悪い。
えっ…何でこんなに見られてるんだろう?私何か変?
「あの子、見た事ない格好してるわねぇ」
「何処から来たのかしら」
悩んでいたがすぐに理由がわかった。
なるほど…そう言うことか。私この世界に来た時の格好のままだったの忘れてた…!
確かに街の人が着てる服と私の服、生地からデザインまで全く違うかも。これは流石にまずい。悪目立ちしちゃうのは良くないし…とりあえずパッと見ただけだが色々と収穫はあった。
「この格好のままじゃよく無いだろうし、そろそろ戻ろうかな」
宿屋に引き返そうとして踵を返したその時だった。ドンっと後ろからの衝撃、足に何かがぶつかったようで何とか倒れそうになった身体を立て直す。
「な、何…?!」
「……っ」
後ろを振り返ればそこには身長的に小さな子供かな?目深くフードを被っていた為顔は見えないけど……何だか私フード被った人とのエンカウント率高くないか。
そんなことを思っていれば私にぶつかった反動で相手は尻餅をついてしまったようで。「わっ」と聞こえたのは高めの子供の声。小さな子供を転ばせてしまった事に慌てた私は急いでその子に駆け寄る。
「あ、あの大丈夫ですか…?」
動かないその子が心配で目線を合わせるように屈めば上を向いたその子と目が合う。動いた為か被っていたフードが取れた。
綺麗なブルーのガラス玉のようなクリっとした大きな瞳に綺麗なプラチナブランドのサラサラした髪の毛をハーフツインにしている。
目の前にいた女の子は誰が見ても絶世の美少女だった。
(かっっ、可愛い……!!!!)
見上げていた顔は少し怯えているようで、不安げに瞳を揺らしてる。今にも泣いてしまいそうなその顔に私は慌てた。もしかして怪我とかさせてしまっただろうか!?
なるべく女の子を安心させるように私は優しく声をかけた。
「あ、あのごめんなさい…!私もボーッとしちゃってて、怪我はありませんか…?」
「……!」
何故か女の子は一瞬驚いた顔をする。そんな女の子の様子に首を傾げていればドダダダっと聞こえる複数の走る足音と共に男が声をあげている。少し離れていて距離があったけど「見つけたか!?」と叫ぶ男達の声がしっかり聞こえた。なんだろう、向こうが騒がしい…誰かを探してる…?遠目から見えたその人達の格好はまるであのハーシュとか言う軍人が着ていた服に似ていて、一瞬ドキリとする。
え、もしかして私達を追ってきた…?
その仰々しさに周りの人達も何だ何だとザワザワしている。
「……っ」
「!え…」
逃げた方がいいのか、そう思っていれば袖を引っ張られる感覚。どうやらこの子供に引っ張られているらしい。
女の子は泣きそうな顔で私を見つめると私の袖を掴む小さな震える手に更に力を入れた。
「った、助けて…!あの人達に追われてるの…!」
「!」
まさかあの人達はこの子を探しているのだろうか…?私達じゃなかったことに少し安堵するもこの子が追われてしまっているならそうも言ってられない。
と言うかどうしてこんな小さな子を…
いや、今はそんな事を考えている場合じゃないよね。目の前で助けを求めているこの小さな子をとにかく助けなければ…!
「こっちに!」
女の子の手を優しく引き急いで建物の間へと逃げ込んだ。
「静かにしててね」
「…う、うん」
女の子を抱き込んで姿を見えないようにして息を潜めた。
余程怖い思いをしたのだろうか…彼女を見れば彼女の胸元にぶら下げていたネックレスを握り締めて小さく震えながら丸まっている。労わるように女の子を優しく抱きしめると小さな身体をピクンと揺らした。
「必ず捕まえろ!」
「建物の中もしらみつぶしに探せ!」
荒々しい足音が段々と通り過ぎていく。次第に足音と怒号のような声は聞こえなくなっていた
。
「…もう、大丈夫そうかな…?」
ひょっこりと表通りの様子を伺えば殺伐とした空気は消え市場にはいつも通りであろう賑やかな活気が戻っていた。
ふぅっと息を吐けば後ろから服を引っ張られる感覚。振り向けば女の子が不安そうに私を見上げている。…かっ、可愛い…!!本当にお人形さんみたい…
じゃなかった。
女の子に目線を合わせるように屈めば大きな瞳と目が合う。
「あ…えっと、もう大丈夫みたいです。怖い人達はもういませんから安心してくださいね」
そう出来るだけ優しく笑えば女の子は驚いたように目を見開き、急にボロボロと涙を流した。
「っえ…?!」
「うっ…」
とめどなく溢れる大きな雫。突然のことにあたふたしていれば女の子は小さな手で私の袖をギュッと掴んできた。
震えてる…。そうだよね、何があったかはわからないけどあんな沢山の大きな男の人達に追いかけられたらそれは怖いよね。
そんなことを思っていれば女の子はハッとしたように一度私を不安げに見ると目元をぐしぐしと拭った。
そして何か意を決したように小さな手で私の腕を掴む。
「わ、わたし…アリスって…言うの…!」
「!」
「っ、…っ…それで、あ、あの…」
辿々しく、その可愛らしい声を振り絞って出そうとしている。何だかその大きな瞳に不安と期待が込められているような気がして…何処となく神殿で見たエイジさんの顔と重なった。
ギュッと握られた腕、離さまいと必死で掴んでいるようでそんな姿に思わずまた頭を撫でてしまった。
「…アリスちゃん、可愛い名前ですね。
私の名前はレナと言います」
「!…レナ、お姉さん」
私の名前をどこか嬉しそうに呟く彼女に思わず笑みが溢れた。
とにかく何かしらの事情があるのは見て取れる。話を聞きたいけどこのままここにいるのは少し危険かも…あの男の人達がいつ戻ってくるかもわからないし…
そうだ、宿屋に連れて行けば…っていやっ、ダメだ。確か「建物の中も探せ」とか言ってたはず…このまま宿屋に行けば逃げ道がない。
頼りになるエイジさんが部屋に戻っている保証もないし…何処か隠れられそうな場所を探さなくちゃ。
そう思い私は彼女の手を優しく握った。
「良ければお話しお聞きします。何処か落ち着いて話せる場所に移動しましょう」
一緒に来ますか?と問いかければアリスちゃんは目を見開きキラキラさせ深く頷いた。
見てくださってる方がいるかわかりませんが…
久しぶりの更新でした、すみません。




