出会う
初めて書く小説なので読みずらいヶ所もあるかと思いますが最後までお付き合いくださると嬉しいです。
顔にくすぐったさを感じ目が覚めると視界に入るのは緑。頬に感じる擽ったさはどうやら草のようで、都会にはない自然の匂いが鼻を掠めた。
あれ……私さっきまで買い物してたはず……
なんで草が目の前に…
「……えっ…!!」
バッと起き上がれば、どうやら私は気を失って倒れていたようで急いで起き上がる。
周りを見渡せばそこは森の中。色鮮やかな草花見た事のない植物。何処を見渡しても連なる大木。奥は薄暗くて何も見えない。そこはまるで迷いの森のような、神聖さを感じながらも不自然なまでの静けさが不穏な空気を漂わせている。
「っ……、ここは…一体……っ痛っ…?」
頭痛がする。ずっと座ってる訳にもいかずに起き上がろうとすればフラつく足。力が入らずにまた座り込んでしまった。
ガンガンと鳴り響く頭を咄嗟に抑えれば急に頭にフラッシュバックする映像。
【誰か轢かれたぞ!救急車を!】
【こんなグチャグチャならもう助からないわ……】
「っ……そ、うだ……私……確か、」
信号で、トラックに轢かれそうになって……いや、轢かれた?私、それで、それで……
あれ?轢かれたのは私だけ…?
違う、轢かれそうになっていたのは私だけではない。
そうだ、私は買い物帰りに横断歩道で何かを助けようとして
___「何か」って、なに……?
訳が分からずに混乱する頭で必死に今起きてることを整理しようとした。
(ダメだ、頭が回らない…)
自分の手を見ればカタカタと震える手。
「っ!」
思い出そうとすれば轢かれた瞬間の感覚を思い出して身震いした。私、何で生きてるんだろう……?確かに、私は轢かれたはず、感覚も残っているのに___
わからないことだらけで頭を抱えていれば視界の端に何かが映る。
「?……あれは……」
そこには何やら黒いものがあり。私は目を凝らした。
な、なんだろう…あれ…
力の入らない足を引きずるように四つん這いで恐る恐るその黒いものに近付けばそれは傷だらけで血を流した「何か」がいて、私は目を見開く。
「!!っ……この、子…!」
トラックに轢かれる前の記憶が鮮明にフラッシュバックした。
あの轢かれた瞬間私は何かを抱き寄せた、やはり轢かれたのは私だけじゃない、きっとこの子だ。
倒れて血を流すその子は猫のようなフォルムをしている。ただ、爪と牙は長く首元にはモフモフとした毛があり尻尾の先は3つに分かれていた。額には赤い宝石のような物が埋め込まれている。
でも何で、私は無事だったのにこの子はこんなに血だらけなのだろう。
私はこの子を助けられなかった…?
震える手で血だらけのその子にそっと手をあてる。
まだ温かいのに呼吸がない…
「私…助けられなかった、?」
(っ……これじゃああの時と一緒だっ…!)
女手1つで育ててくれた母を幼い時に事故で無くしていて、目の前でおこったそれに無力な自分を恨んだ。助けたかったのに、でも幼い自分には何も出来なくて……
だから今度こそはって…なのにまた助けられなかったのか。
ぐったりした黒い生物をゆっくりと抱き寄せれば微かに息をするようにお腹が動いた。
「!まだ生きてる…!」
まだ、何とかなるかもしれない…!
しかしキョロキョロと周りを見渡すもそこはどこかもわからない森の中。
何故自分が急にこんな森の中にいるのかなんて考える余裕等無くて、震える足に力を入れて立ち上がり目を凝らして先を見ても薄暗い森が広がるばかり。不気味な雰囲気を放つ場所に1人いることに足が竦む。
どうしよう…!まだこの子に息があるのにっ、怖くて足が動かないっ…
気付けばポロポロと自分の非力さからこぼれ落ちる涙。なんで動いてくれないの自分の足。
悔しい、悲しい、ごめんね、ごめん。助けられなくて。弱くて、ごめんね…!
「……っお願い……動いて私の身体…!」
この子を助けたいの…!
ポタリ、私の涙が腕の中の生物へと落ちた。
__その瞬間、フワリと優しい風が吹くとともにブワッと光が私を包んだ。
「なっ、何…!?」
突然のことに涙が止まり驚くもその光は温かく何故かホッとするような光だった。
どうやら光は私の身体から発せられていて、キラキラと粒子のような物が取り巻いている。その光は私の身体から腕の中の生物へと移ると一際強い光を放った。
「っ……え、」
光が治まると腕の中にいた傷だらけの生物は傷1つなくなっていた。
「な、治った……?」
な、何で……唖然としていると腕の中の生物がゆっくりと目を開けた。黒い身体とは正反対のクリクリとしたビー玉のような綺麗な赤い瞳、額に埋め込まれているルビーのような宝石と同じ色で。
綺麗……小さく口から漏れ出た言葉と同時に腕の中からピョンっとその生物は飛び降りた。
ルビーの瞳をこちらへ真っ直ぐにむけ、私に向かい合うように座ると少し高めの音で鳴いた。まるでお礼を言われているようなそれに、肩に入っていた力が抜けへなへなと座り込む。
何が何だか全然わからない、わからないけどとりあえず…目の前の小さな命を助けられたみたい。
「よ、かった……、」
何故急に身体が光ったのか、今はの何だったのかわからないが……、何にしても目の前でこの子は元気にしている、良かった……そう思ったら安心からか、また涙がポロポロと零れてきた。
泣いているのを見た黒い生物は私の膝に片足を置くと大丈夫?とまるで心配するように顔を覗きこんでくる。
私が知っているそれとはだいぶ違うが、何だか行動が猫に似ている気がする。
大きい目が愛くるしいこの子が可愛いく思えた。
「ふふ、貴方は優しいんだね…ありがとう」
泣きながら笑っている状況におかしくなったが、私は目の前の子を優しく抱き上げると嬉しそうにミューっと鼻を鳴らした。しかし次の瞬間、耳をピクっとさせ後ろに視線を向ける。
「?どうした、の…」
釣られるように視線をそちらに向ければマントフードを目深く被った男性がこちらを見ながら立っていた。
「っあ……」
まさか人がいるとは思っていなかった。何故か一瞬、フードの隙間から見えた男性の目が見開いたがすぐにフードで見えなくなってしまった。……ずっと黙ったままこちらを見て動かずにいる。
私は慌てて涙を拭うと、見知らぬ人に泣いているところを見られた恥ずかしさと緊張で固くなった身体を少し動かし……
とりあえず会釈した。
「……」
「……」
思わず会釈しちゃったけど…
ど、どうしよう……!?何で黙ったままなのかな、会釈が返ってくる訳でもなく相手は喋らないし動かない。もしかしてここは入っては行けない場所だったとか……?そもそもここは何処なんだろう…
今更なことを思いながらおろおろしていれば、抱き上げていた生物がするりと私の手をすり抜け男性の足に擦り寄った。
(あ、あの子あの人に甘えてる…)
しかし男性は足元に目を向けるもピクリとも動かず黙ったままだ。
…っ、マントで表情も見えないし…なんで喋らないんだろう、、
(もしかして……喋れないのかな……?)
「……何故、こんな危険な場所にいる」
「!」
し、喋れたんだ!良かった……!
少し低めの、いい声が聞こえる。これは巷で言うとこのイケボと言うのだろうか。
なんにしても良かった、喋れるならここがどこだか聞ける…と思っていたのに…男性の質問に焦る。
危険な場所……?ここは危険な場所だったのか。確かに不穏な空気があるが…そもそもここは一体何処なんだろう。
…目の前にいる見た事もない生物、周りを見渡せば見た事のない植物、日本には存在しないだろう巨大な大木…。海外……?いや、だって私はさっきまで買い物をしていたのだ。
嫌な予感が脳裏を掠める。
___まさか、別の世界…?いや、まさかそんな……。
見た事のない黒い生物の赤い瞳が私を捕らえる。
その中に映る自分は頼りなく見えた。
少し震える口で私は口を開く。
「……ここは、一体何処なのでしょうか…?」
目深く被るフードから少し覗く口元からは表情が読み取れなくて。
思っていたよりも掠れた声が出てしまい余計に震えてしまったように感じる。
「……ベルク帝国から遥か北にある聖獣が住まう森、危険区域……ハーノルドだ」
全く、聞き覚えのない国。名前。
私はここで嫌な予感が確信にかわった。
__ああ、ここは私が居た世界ではないのだと。