5話
夕食を食べた後、パルジオ君と話をした。
今日言っていた魔術を教えることと、魔物のことだ。
正直教えるのは私に向いてないって分かった。
「だから教本を貸すから、パルジオ君が教えてあげて?」
「いいんですか?これかなり貴重なものだと思いますけど、お借りして。」
「いいのいいの、天界に何冊かあったし。そもそも私のじゃないし、勝手に借りてきたから。」
「ん?え、これエリシアさんのじゃないんですか?それなら尚更まずいと思いますけど。」
「気にしない気にしない!で、私はパルジオ君が言ってた魔物を倒してくるから。それじゃお休み〜」
「えっ!ちょっと?!エリシアさん今なんて言いました!?」
眠ろうとした私をパルジオ君が揺すってくる。
やめて〜夕飯が胃のなかで揺れる〜
仕方なく体を起こして、説明する。
「だから、追い払った魔物を倒すって〜まだ生きてるんでしょ?」
「…ええ、まあ…魔術師さんを警戒してるのか村には来ませんが、森の奥の方にまだいると思います。」
「ならサクッとやってくるよ。これで心配事が減るでしょ?」
「でも危険ですよ!あんな大きな魔物…この家ぐらいありますって!」
「大丈夫だって!これでも天士の端くれだから、負けないよー!それにさ、楽しみなんだよね〜」
「ん?楽しみ?」
「うん!今まで天界に押し込められてたから、強い奴と戦うのに憧れたたんだ〜。いやー楽しみ!それじゃお休み!」
「ええ…大丈夫かな…」
ベッドにもぐりこみ眠る。
パルジオ君は、なんでかいそに寝るのを嫌がってソファーで眠ることに。
いやー明日が楽しみだな〜。今からワクワクして眠れ…ZZZZZZ…
◇◇◇◆
うん!快晴!絶好の戦闘日和だ!
美味しい朝ご飯を食べて、パルジオ君を見送った後森に入った。
最初空から探そうと思ったけど、生い茂っていて見ずらいから歩いて探した方がマシだ。
さてどうやって探そう。
結構深い森だから、闇雲に探しても見つけられない。
かといって勝手に切り拓いたら怒られるかもしれないってパルジオ君が言ってたし。
…ん〜そうだ、前に本で読んだっけ。強い魔物は、強い力に興味を示すって。
よし、ひとまずそれを試してみよう。
私は周囲の魔力を取り込み、周りへと放つ。
魔力を放つ存在がここにいると知らせるためだ。まあ餌みたいなもの。
さて、うまく食いついてくれるかな。
そう考えながら森を歩き続ける。
鹿や猪などの動物は見かけるが、魔物は見かけない。
動物は帰りにでも狩っていこう。そうすればパルジオ君が美味しいものを作ってくれるはず…じゅるり…
そんな想像をしていると、動物達が逃げ出した。
ええ、もしかして食べられそうなことに気づかれた?…違う。
動物達が逃げる方向とは逆の方から何かが大きな音を立て向かってくる。
大きな体が木々を薙ぎ倒しながらこちらへ来ている。
確かに大きいけどそこまでかな。3mぐらい?
私が呑気に待っていると、勢いそのままに体当たりをしてきた。
なので、体に当たる直前に顎に蹴りを入れてあげた。
ぐきりと何か痛そうな音を立てながら、仰向けの状態で動かなくなった。
「…ん?あれ、終わり?」
ええー!!終わったぁ!?
ちょうどいい位置に顔が来たから蹴ったけど!ええー!これからじゃないの?
…えぇ…はあ、期待してたのに……帰ろ。
体を持ち上げ飛び上がる。
思ったよりも早く終わってしまった。この後何しよ…
それとこの熊の魔物…美味しいのかな。
パルジオ君なら料理できるよね?戦いは残念だったけど、料理が私を待ってる!
そうと決まったら、村へ戻ろう!
◇◇◆◆
村に戻ると、パルジオ君が人を集めて魔術を教えていた。
中には発動までできる人がいた。あれ、私より教えるの上手じゃない?
…ま、まあ師匠が優秀だから、弟子も優秀なはず!うん!絶対そう!
ひとまずこの件は置いておこう。パルジオ君に報告しないと。
「ただいまー!パルジオ君これって料理できる?」
「!エリシアさん無事だったんですね!よかった…心配してたんですよ。」
「そうなの?ありがと、けど思ったよりも弱かったんだよね。こいつで合ってる?」
「…いえ、違うやつですね。種類は同じみたいですが両腕揃ってますし…まさか、子供?」
「そっか…じゃあまた探してくるかな。それじゃ。」
「待ってください。やっぱり僕も行きます、少し気になることがあるので。」
「そう?なら一緒に」
そう言おうとした時だった。
森へと向かう村の入り口側から轟音が響いた。
地面が少し揺れているのを感じる。音のする方を見ると、大きな木がいくつも倒れていっている。
もしかして、本命がきた?
嬉しいけど、ここで戦ったら周りに被害が出る。
それは困る。ここにくる前に倒さないと!
「ちょっと行ってくるね!パルジオ君は後から来て!」
「わかりました!よろしくお願いします!」