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05 さらり


 その後、この件はさらに予想外の方向へ。


 マーモセット伯爵様と親交のあったサイリさんにお願いして、


 間に入って取り成していただいたのです。



 会談の場、御当主様も御長男さんも、貴族様とは思えないほど腰の低い方々でした。


 僕とサイリさんも同席した話し合いの席で、


 何だか申し訳ないほど、事態はさらりと解決。



 えーと、元々の経緯はこうでした。


 ある日マーモセット家に、四男さんの祝い事の話しが飛び込んできました。


 家を出て自立しているとはいえ、貴族ゆえの諸々のしがらみ、


 御長男より先にそちらの祝い事を進めることはできず。


 さりとて、四男さんとフィアンセさんの幸せこの上ないらぶらぶっぷりには、あまり待たせるわけにもいかず。


 御当主様、急遽突貫花嫁候補探し。



 御長男さんは、そういうメンツ的なことは全く気にせずという、実に呑気な、


 失礼、人間のできた方だったそうですが。



 そして、御当主様のやたらと幅広い交友関係から、白羽の矢はフェリシルスさんに。


 容姿端麗品行方正たおやか穏やか才媛乙女、これまで浮いた話しも全く無し。


 何より、厄介な貴族絡みのしがらみとは全く無縁という、願ったり叶ったりの良縁候補。


 御当主様の古くからの盟友、アルセリア王立総合自然環境研究所の所長さんも太鼓判。


 所長さんの親友、アルセリア王立孤児院の院長さんも、良縁ににっこり。


 てな感じで、お話しはとんとん拍子に進行。



 急な話しゆえ一番の難題だったリグラルトレイピアカブトムシ問題も、凄腕狩人のおかげでスッキリ解決。


 さていよいよこれからというときに、僕たちからの物言いが。




 まあ、当人の気持ちを抜きにしての婚姻関係など有り得ませんと、


 御当主様は実に明朗なご判断、さすがは皆に親しまれている大貴族様、お噂通りの好人物なのです。



 御長男さんは、これほどのご迷惑をお掛けしたにも関わらず、


 終始にこにこ笑顔でひと言も語らず。


 こちらも大人物、なのでしょうね。



 ご迷惑をお掛けしましたと臥したフェリシルスさんを、


 優しく気遣う御当主様と御長男さん。


 この件が上手く一件落着して、本当に良かったです、



 おっと、もしかして落着していないですよね、


 四男さんの祝い事の方はどうするのでしょう。



「実は既に同居と言いますか同棲と言いますか」

「あちらの方はとっくになるようになっておりまして」

「後は孫の顔を見る日を楽しみに待つばかりなのです」


 それはおめでとうございます、


 でも御長男さんの方は。



「これの呑気な事はもう致し方無しかと」

「それで是非とも、"愛の魔狩人"との誉れも高いフォリス様の方から、良縁のお裾分けなどございましたら……」


 ……噂に踊らされてはいけませんよ、伯爵様。


 良縁と奇縁とは、全くの別物なのです。


 若輩ながらもひと言言わせていただきます。


 運命の人との出会いは、僕なんかの小細工などお呼びもつかない方面から訪れます、と。



 それと、ひとつだけ、質問よろしいでしょうか。


 あの時からずっと気になっていたのですが、


 婚儀にカブトムシが必要な理由を、是非お教えいただければ、と



「それは、マーモセット家の身内となる覚悟がお有り、という事ですな」


 大変失礼致しました……



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