04 察し
なんだか普段より粘着気味なはぐれ精霊乙女を、なんとか『転移』させることに成功。
今回の森の案内人は、ギルド経由の依頼でしたので、
一度アウド村に戻って依頼完了の報告を済ませます。
そして、アウド村に一泊する予定だったフェリシルスさんを、
我が家にお連れすることに。
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「おかえり、フォリスさん」
「本日もfps向上に余念無し、だな」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「突然の素敵なお客様に、メイド魂も燃え燃えですよっ」
あー、連絡できずにすみません。
かくかくしかじかですので、よろしくお願いします。
「突然お邪魔することになって申し訳ありません」
「フォリスさんのご好意に甘えさせていただきます」
はい、好意は好意ですが、お間違え無きように。
特にシュレディーケさん。
ゴツリ
いてぇっ。
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その後、乙女3人、滞りなく打ち解けまして、
本日の家族会議は、もちろんフェリシルスさんの件について。
「まさか例のカブトムシ王国の一件がこのような繋がりを持とうとは」
本当にまさかの事態なのですが、
こうなった以上、フェリシルスさんの平穏な人生を守るためにも、動かざるを得ないのです。
どう動けば丸く収まるかは皆目さっぱりなのですが。
「そのエルサニアの貴族様は、どのような方なのですか」
そういえば、ルルナさん、
マーモセット伯爵様って、聞いたことあります?
「はい、温和で世話好きな、爵位を鼻にかけない人物として、エルサニアの貴族様方のみならず、広く王都の皆さまからも親しまれている御方ですね」
「御長男様のお祝い事のお噂は伺っておりましたが、まさかご主人様やフェリシルスさんが関わっていらしたなんて」
つまりは、御当主様は悪い人では無い、と。
フェリシルスさんは御長男さんとお会いになられたことは。
「はい、とても穏やかでお優しい方で」
「でも、深い理由も無いまま、こちらからお断りするわけには……」
いえいえ、乙女の人生の行く末以上に深い理由など無いでしょう。
それで、僕が間に立ってお断りの方向に話しを進めても、本当によろしいのですか。
何より大切なのは、フェリシルスさんのお気持ちだと思いますから。
「一度先様とお話し合いの機会を持とうかと思います」
「これまで流されるままだったのは、私の不甲斐なさゆえでもありますし」
「今の私の気持ちを、しっかりとお伝えしないと」
分かりました。
その席には、僕も同席させてください。
しかし、カブトムシの件がこんな方向に進むなんて、
人生の諸々って、本当に不思議なものなんですね。
「いや、多分フォリスさんだからこその諸々なのであろう」
「カブトムシやら貴族様やら精霊乙女やら……」
もちろん、その諸々にはシュレディーケさんも含まれているのです。
ゴツリ
イテェ
「いつもこうなのですか、ルルナさん」
「いつもこうなのですよ、フェリシルスさん」
「フォリス家のメイドは、どんなにご夫婦熱々でも涼しい顔でお仕事に励んでいるのですよっ」
「心中、お察しします」
えーとどなたか、僕の心中も察していただけるとうれしいです……