03 当事者
濡れ濡れ精霊乙女を乾かすために焚き火まで準備しちゃう、気苦労狩人な、僕。
いや、脱がないでくださいっ、ロージュさんっ
そのくらいだったら、焚き火ですぐ乾いちゃうでしょっ。
「…………(訴えるような眼差し)」
はいはい、風邪をひいたら僕のところで看病しますから。
ってか、精霊さんも風邪をひくんですね。
何だか最近、森の狩人らしからぬアレな知識ばかり増えてるんですけど。
えーと、乙女ふたり、焚き火を囲んで盛り上がっちゃってますけど。
しかし意外ですね、 おふたりは相性ぴったり。
すっかり意気投合して語り合っております。
タイプはあんなに違うのに、
これぞまさに乙女心の七不思議。
「それで、私のご主人様はどうなさるおつもり」
ちょっとロージュさん、
ご主人様呼びは止めて。
そもそもフェリシルスさんの件は、当事者以外が軽々しく口出ししてはいかんでしょ。
「いえ、思いっきり当事者ドストライク案件ですよ」
はい?
「リグラルトレイピアカブトムシを捕獲して事を進めたのは、他ならぬフォリス様」
「つまりは関係者どころか、フェリシルスさんの乙女としての運命をねじ曲げた張本人にして真犯人」
……アレかよっ!
なんすかその絡まり過ぎてる運命の糸はっ。
こんなのモルガナさんだって予測不能だっての。
「……」
うっ、フェリシルスさんのまなざしが……
あーもう、分かりましたっ。
どう解決すれば良いのかさっぱり見当もつきませんが、
張本人で真犯人な僕としては、
何とかせねばいかんのですよ。
「それでこそフォリス様」
「このロージュ、フォリス様の愛玩精霊乙女の名に掛けて、生涯お側にひっついて離れない事を誓いますっ」
憑いてくんなっ。
ってか、乙女関連なアレコレは本当に間に合ってますからっ。
「そんなにモテモテなのですか、フォリスさんって」
違いますって、頼みますからフェリシルスさんまで誤解しないでくださいよぅ。
僕は妻ひと筋が信条の新婚夫の鑑ですっ。
「そうですね、フォリスさんがシュレディーケさんひと筋なのは、精霊界でも超有名」
「ただ、それとモテモテであることとは、何ら矛盾しないのです」
「賢いフェリシルスさんなら、既にお分かりのはず」
「なるほど、興味深い事案ですね」
「まさに自然生物学の貴重な研究対象……」
……とりあえず帰りましょうよ。
このままだと夜営になっちゃいますから。
「乙女ふたりにテントはひとつ」
「まさにハーレムちっく外道」
早くジコハ山に『転移』しなさいっ、
このはぐれ精霊!