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02 雨上がり


 にわか雨も小降りになった、しっとり落ち着いた雰囲気の中、


 フェリシルスさんが静かに語り始めました。



 孤児院育ちのフェリシルスさん。


 幼い頃からお勉強大好き。


 イチを聞いて十を知り、その知識を十二分に知恵として活かす、


 まさに生まれついての才媛。


 その才能をもっと育むべきと、


 みんなの後押しで学びの道へ。



 大変に優秀だったこともさることながら、


 その人柄の良さで教授たちからも厚く信頼され、


 このまま研究者人生を順風満帆に歩む、



 はずだったのですが、


 ひょんなことからエルサニアの貴族さまに見染められて、


 いわゆる玉の輿街道まっしぐら。




「お庭での花壇のお世話くらいでしたら、今後も許されるでしょうか」


 ……それでよろしいのですか、ご自身の人生。



「孤児院の方を支援してくださるそうです」


 今日会ったばかりの僕なんかがどうこう言うのもあれなのですが、


 何だかもったいないのです。



「ありがとうございます、フォリスさん」

「皆が良き人生を送れるよう、私なりに頑張ってみます」



 むう、雨上がりっていうわけじゃないのだろうけど、


 しっとりと言うよりも、


 何だかじっとりした雰囲気に……




「…………(じっとりとした眼差し)」



 アレかよ……


 ちょっと、何やってるんですか、そこのストーカーお姉さん。



「浮気者……(非難の眼差し)」


 誰が浮気者ですかっ。


 ってかロージュさん、お仕事をほっぽり出してまでこんなところに来るなんて、


 リスト爺ちゃんからがっつり釘刺し案件ですよ、コレ。



「そちらの方は?」


 あー、フェリシルスさんにも気付かれちゃいましたよ。


 えーと、なんと言いますか……



「初めまして、フォリスさんの愛の奴隷を務めさせてもらっております」

「ローガンフージュという可哀想な精霊乙女です」

「お気軽にロージュって呼んでくださいね、お綺麗な方」



「初めまして、アルセリア王立総合自然環境研究所で研究員をしております」

「フェリシルスと申します」

「精霊さん、ですか」


 あー、訳あって知り合いにならざるを得なかったと言いますか、


 いろいろありましてお世話せざるを得なくなってしまいましたが、


 あんなのでも精霊さんなんです……



「大変なのですね、フォリスさん……」


 ご理解いただけてとてもうれしいです。


 いや本当、この一瞬でとても大変であることまでお分かりいただけるとは、


 さすがは才媛フェリシルスさん、


 感謝感激雨上がり。



「時と場所を選ばず種族を問わずの乙女ハンターっぷり」

「さすがはマイマスターフォリス様」

「ロージュ感激で濡れ濡れ……」


 そんなとこでストーカーすればずぶ濡れも当然でしょ、まったく。



 えーと、アレは無視して構いませんよ、フェリシルスさん。


 そもそも今日の森の案内とは、


 一切全く何の関係も無いはぐれ精霊さんですから。



「よろしかったらお話しでもいかがでしょう、ロージュ様」



「ロージュさんって呼んでくださいね、フェリシルスさん」



 あーもう、さっきまでのしっとり落ち着いた雰囲気が即効でどっか行っちゃいましたよ。


 いいですよ、乙女ふたりがゆったり語らえるよう、


 お茶の支度でもしてますよ、僕。



 天気はスッキリ晴れたのに、


 何だか大荒れ注意報ですよ、この流れ……



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