15 噂の
サイノさんこと、イシン・ヲブザーヴ・サイノさんは、
今あるこの世界とは別の世界から訪れた、
異世界漂流者。
ひょんなことからサイリさんと知り合って、
今では家族、っていうかサイリさんの妹さん。
けんちゃん曰く、
この世界のことわりに縛られない存在。
普段はどう見ても、サイリさんにべったりのお兄ちゃんっ子なのですが、
言われてみれば確かに、容姿の方も浮世離れして綺麗ですし、
雰囲気も独特、っていうか呑気な不思議っ娘さん。
それでも、大丈夫なのかな、"亜空間ダイブ"なんて。
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おじゃましまーす。
サイリさん宅の、サイノさんのお部屋に連れて来られました。
このお部屋こそが、サイノさんが別世界人であることを証明する証拠にして、
"亜空間ダイブ"への一番の近道の場所なのだとか。
えーと、壁・床・天井一面、全てが真っ白な部屋。
いや本当、驚きの白さなので広さがよく分かりませんよ、
どっからどこまでが壁なのか天井なのか……
「流石は"愛の魔狩人"フォリスさん」
「初めて入った女の子のお部屋も念入りチェックに余念無し」
ごめんなさいっ、サイノさんっ。
でも、この可愛らしいテーブルとちっちゃなソファーくらいで、
クローゼットもベッドも何も無いのですが。
「さすがは"えっちっち狩人"フォリスさん」
「クローゼット覗きとベッドの匂いハアハアは欠かすことの出来ない習性」
まことに申し訳ございません……
「こらっ、サイノっ」
「フォリスさんをいじめちゃ駄目でしょっ」
「ごめんなさい、お兄さま」
「そう、フォリスさんのためなら普段の優しさを脱ぎ捨てて熱い男にもなれちゃう、それがサイリお兄さま」
「これが、最近ちまたで噂のカップリング」
「"サイ×フォリ"」
「生で見ちゃうと少々刺激が強過ぎる、かも……」
「あー、ネルコさんでしょ、ソレ」
「サイノにはあんまりアレな本を貸し出さないよう、モノカさんから釘を刺してもらわなきゃ」
「あと、お兄さま呼びも禁止」
えーと、ご兄妹おくつろぎのところまことに申し訳ありませんが、
僕のへそくりの件も、ぜひ……