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妖精社会  作者: 創作
〇章_邂逅編
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07_第二の災害

「やっくん、起きる!」

「いつまで寝てんだ」

「ほぁ…」

 未だ微睡の中にいる俺の腰の何者かが蹴りを入れてくる。複数人がいるようで騒がしく感じる。

「ああ!陸やリすぎ!」

「後少し…」

 二度寝をするために明るい光から逃げるように俺は体の向きを変える。

「弥彦、お前。今日、現状についての説明をやるって翔さんに言われてただろ」

 昨日、父に後でと言われていた情報伝達は再会の宴に取って代わり、昨日はそれで終わってしまったのだった。


「そうだったけ」

 そう惚けながら重い体を起こし、朧げな意識のまま仮住居を出る。木漏れ日を肌で感じ、段々と頭がはっきりとし始める。そういえば、昨日の宴で翔さんと言葉を交わしたような気がする。確か海上都市で森林科学の研究を行っていたとか、なんとか。詳しくは思い出せない。

「もうリーダーたちは揃っているのか」

「他の人たちは朝の狩りとか採集とかを手伝ってからくるみたいだから、もう少し遅くなるはず」

「な、なんで起こしてくれなかったんだよ」

 この集落にいる以上は生活を維持するために働かなければならない。一人のんびり寝ているのは申し訳がない。微睡から覚めた俺は犯した失態を悔いた。

「『昨日、からかい過ぎた』って言ってたぞ」

 昨日は再会を祝した宴をやっていた。その中で春菜との馴れ初めを根掘り葉掘り聞かれて…住居に戻る頃にはすっかり疲れ切っていたような気がする。よほど大変だったのか、何を聞かれたかが断片的にしか思い起こせない。

 どうやら、気を使ってくれたらしい。

「あの昨日の大きな家に行けばいいんだよな」

 父が住んでいる家を思い浮かべて陸に訊く。

「ああ、そうだ。あの家は会議場を兼ねているからな。多分『流火』の話だと思うぞ」

「りゅうか?」

「流れるに火って書いて流火だ。この山火事の元凶で…」

 話をしていると昨日の家までいつの間にか来てしまっていた。

「詳しいことは翔さんから直接聞くといいぜ」



俺たちが着いていくらか時間が経ってから俺たちの班の人と見慣れない頭の良さそうな雰囲気をした人物が会議場にやってくる。

「さあ、始めるか」

父さんの声を合図に現状報告と俺たちの今後の生活についての会議が始まった。

「それじゃあ、まずこの山火事について話すか」

やっぱりか、と陸が呟く。

 そういえばこれまで逃げることばかりで全く火事について追求してこなかった、と生活を振り返る。

「結論だけ言うと、こいつは人為的なものだ。確実にな」

 その場の俺たちは驚いた。確か噂によれば火事は全く火の気がないところから始まったはずだ。人も近くにいなかったはずだしそもそも日々の生活だけでも大変なのになぜ火事を起こすのかが謎だ。

「そりゃないだろ。だってやる必要がないじゃないか」

 班員の一人が訝し気な顔を向ける。しかし、その不信感を無視して父さんは話を続けた。


「まず、火種だがここから北東の方角から無数に放出され続けている。発生源から火が放たれるとそれは頂点に達するまで見えなくなり、音もなく地上に到達した瞬間に周囲を燃やし始める。俺たちはそれが空に流れるような軌道を描くであろうことから『流火』と呼称している」


 ただ燃えるだけなら山火事となんら変わりがないじゃないか。その北東の方角で何らかの異常が起こっているだけではないか、と俺は思考を巡らせる。人為的であるとは断定できない。

「それにただの火じゃないんですよ。流火って」

 父と先ほど一緒に入ってきた人物がそう告げた。おそらくこの人が翔さんだろう。

「火は本来、風向きや燃料のある場所に広がります。今回のような森での場合は燃料が豊富ですから同心円上に広がるはずなんです。けれど実際、火は森を囲い込むように…まるでそれ自体が意思を持つかのようにうねりながら進行しています。通常ならありえないです。それにあの火は多少の水では消化できません」

指を左右に揺らしながら説明をした賢そうな人は一区切りしたのか一息ついた。

「まぁ、そうゆうことだ」

「…ちょっと待ってくれ。それじゃあ、あくまでその流火っていう特殊な火があるってだけじゃないか。どこか人為的なんだ」

ふと思ったことが口から零れる。

「やっくん、すごーい」

「確かにさ、そこ引っかかるよねー」

「俺もそれ思った!」

 班員一同がさまざまな反応をする。瞬間、陸が突然大きな声を上げた。


「そう、そうなんだよ。そこで『影ビト』つーのが関わってくるわけだな」


 確か、昨日騒動になる前に父さんから聞いていたような気がする。それが「人為的」を裏付ける根拠になっているわけみたいだ。

「『影ビト』は文字通り、影の人だ。体は全く光を通さず、顔を含めて真っ黒らしい。らしいって言うのは…目撃者が陸しかいないからだ」

 父さんからそれを聞いた陸は胸の前で腕を組み「俺、すごいだろ」とアピールしてくる。確かにすごい事なのだが一切、褒めようとは思わなかった。ひと時の静寂が陸の機嫌を損ねる。

「陸、もう何度目かわからないが、あの話もう一度頼めるか」

 父さんに頼まれた陸は「わーったよ」と鬱陶しそうに振る舞いながら、口には笑みを含ませていた。


「あいつに会ったのは、ここに住み始めた時だった」

 しかし、それはあまりにも荒唐無稽で。けれど、そういうことにすれば全てに合点がいく話だった。

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