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妖精社会  作者: 創作
三章_第二次巨人大戦編

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35_開戦前夜sideA

 学校が急に休みになった。期間は未定。僕らは先生から出された大量の課題に追われていた。

「はあ…。薬草学はまだいいけど、『王国律』の暗記までやるなんて」

 僕は居間の机の上で頭をくしゃくしゃと掻きながら、教科書と睨めっこしていた。やはり長い時間やると集中力も落ちてくるようで、先ほどから碌に内容が頭に入ってこない。

 うまく進まないことにもどかしさを覚えた頃、都合よく合いの手が入った。

「ヨスガ、何か飲むか」

 目をやるとユウが部屋の左手に位置するキッチンの棚からコーヒー豆を取り出しているのがわかった。ついでにと声をかけてくれたのだろうか。

「僕もコーヒーで」

「了解」

 ガリガリと彼が豆を削り始めると部屋全体にあの芳しい香りが広がる。それが記憶を刺激し『バジリスク戦』後の特別休講期間に三人で出かけて買った時の光景が想起される。

 勉強に身の入らない僕は席を立ち、ユウの隣に行って声をかけた。

「それ……」

「そうそう。この前買ったやつだ。煎ってしまうと二週間くらいしか持たないからな」

 ユウは作業を止めずにそう答える。毎朝、飲んでいるがグラムが多かったのか、かなり残っている。それもそうだ。これを買った時はナオトもいたのだ。「後で取りにくる」と言ってすでに四日が経っていた。

 彼の部屋に行き声をかけたのだが、相部屋の人に「あいつはしばらく居ない」と突っぱねられた。そのあまりにも一方的な態度から何か事情を知っているように感じたが、人のプライベートに踏み込む気もない。特に追及もせずに僕らは自分たちの部屋へ帰ったのだった。

 コーヒーミルが一定のリズムで音を刻む。彼の目は真剣で容易に話しかけることは躊躇われた。

「……よし」

 自分の好みに挽けたようでユウは満足そうな笑みを浮かべる。ミルから粉砕された豆を取り出し、予め沸かしておいた湯の入ったケトルを手に取った。ドリッパーにはすでにフィルターが装着されている。粉をそれに入れ、湯を注ぐと二人分のコーヒーが作られた。

「ユウはなんでもそうだけど、手際がいいね」

 僕は受け取ったコーヒーを息で醒ましながら、音を立てないようにして啜る。

「癖がついているだけだ。別に大したことじゃない」

 戸棚においてある菓子を取りながら、ユウは応答する。

「いきなり大変だな。しかも今回は期末のテストがなくてコレの出来がそのまま評価になるから、手抜きもできない」

 彼は机に置いたままになっていた紙の一枚を手に取り、ひらひらと煽る。

本来、「この学校は課題がなく、テストのみで成績が決定する」方針を取っているのだが、今回は稀に見る事例で「課題提出のみ」らしい。

「僕もヨスガも成績重視の役職志望だから、手を抜くことはないだろうけど」

  ユウはそう口にするが、彼の将来の展望は今まで聞いたことがなかった。だから、興味の赴くままに聞いてみることにした。

「そういえば、ユウは将来どうしようと思ってるの」

「ああ、そうか。言ってなかったか…。僕はここを卒業したら、『上院』に進学するつもりだ」

 王立魔術学院『上院』。魔術、自然力の最高権威研究機関だ。魔術に関する見識は世間と三十年は差があると言われている。

「へぇ…どうりで頭がいいわけだ」

 僕はボソリと呟いた。ユウは「王国律」、「薬草学」、「兵法」、「旧世界学(星銀歴以前)」、「新世界学(星銀歴以後)」、「魔術論」の座学分野全般に通暁している。「実地」こそ平均的だが、研究職を目指すのであればそれも関係ない。つけいる隙がないと言っていいだろう。

 まあ、この全ての分野において好成績を叩き出す友達が既に二人もいるのだが…。あの二人は明らかに別格だろう。

 そういえば、どちらにも将来のことを聞いたことがなかった。今度聞こうと思い、胸の内に留めておく。

「それはそうと。僕はこの後少しなら時間取れるけど『王国律』やるか?」

「そうするよ。一人だとどこから手をつけていいか分からないんだ」

「アレはな、系統立てて分解しながら覚えるのがコツなんだ」

 羽休めを終えると僕はユウに『王国律』を指南してもらった。村にいた時は、同級生と一緒に勉強することもなかったので、すごく新鮮に感じた。


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