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妖精社会  作者: 創作
一章_王国立中央魔術学院

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15/55

15_魔眼を持つ少女

「ダメだ。さっき鐘が鳴っただろ。中央魔術学院の新入生とはいえ規則は守ってもらう」


 僕らは城下町の首都『天誅』の門兵に文字通りの門前払いを受けていた。

「それになあ。聞けば、田舎の彫刻専攻の中学に通ってたって話だろう。ここの魔術学院のそれも普通科だって言われても信用に欠けるんだ、わかるな?」

 門兵は左手の親指を城のある方に指しながら痛いところをついてくる。

 そう、総合中学に入ることすら出来なかった人間が魔術学院に入学試験をパスするというのは前例が極めて少ない。総合中学に入れないということは魔術が不得手であることを露呈しているようなものである。それにもかかわらず、最高峰の魔術教育機関たる『中央魔術学院』に入学が決まるのは星銀暦の始め、人が魔術に触れた時から考えても稀らしい。少なくとも師匠はそう言っていた。

 そもそも事前に聞いていたのだ。「絶対に時間厳守だ。閉門時刻を過ぎるとほぼ確実にお前は入れない。それくらい珍しいんだ」と。

「で、でも馬車の御者はもう少し遅い時刻を指定していたような気がしますが…」

「御者を含む業者はな。通行証を持っているから何時でも問題ない。でも、個人はダメだ。もう自由に往来できる時間は過ぎているだろう」

 奇跡的に想起される記憶もまったく役に立たず、門兵は平手を前に突き出して首を左右に振る。

 …はあ、森で野宿するか。蒼葉と見張を交代しながらで。

 最寄りの都市の『万灯』までも十五キロはあったはずだ。流石にそこまでいくのは現実的ではない。それ以外でも手持ちで入れる小規模の宿があるにはあるが、ある程度治安が保たれている場所となるとやはり、万灯まで戻らなければならないだろう。

 今回は少数なことを加味すると野営の方が安全性は高い。

 そこまで思考が及んだところで門に背を向けて歩き出す。ことの発端が自分にあることを考えると仕方がない。全ては馬車に乗り遅れたところからだ。

「蒼葉、ほんとに……。今日、野営になりそう」

『しょうがねえな。そうなるんじゃねえかと思ってた。なに、明日入りゃ一緒だろ。入学式までは時間がある』


「待って」


 トボトボと歩いているとすれ違い様に声をかけられる。声の主の方に目を向けるが夜の帳が下りているからか性別は愚か、容姿さえ判別できない。地に着きそうなローブ、それにフードを深く被っていて声が篭るのもあるのだろうか。

「……短髪で背が高めの少年。……しゃべる狼。……間違いない」

 なにやら呟いているが声が小さくてこちらには聞こえなかった。

「……ついてきて」

 ローブの人は僕らに近づき、耳元でそう言って門の方へと足早に歩いていく。小さいけれど、有無を言わさぬその声色に導かれて再び城門を訪れる。

「……守人さん。通してあげて」

 ローブの人はそう言って、何やら複雑な紋様が彫られた金属板を門兵の前に掲げる。すると彼の顔色が変わり、たじろいだ。

「⁉︎…いけません。貴方様がいいと申されても…。規則は規則です。貴方の身分は証明できても、この者のそれが担保されるわけではありません」

 門兵はローブの後ろに立つ僕らに目配せをしながらそう答える。…早くどこかにいけ、とそういう意思を感じた。

「……そう」

 徐にローブの人がフードに手をかけ、白髪の肩ほどまである髪が露わになる。

『……通して』

 その透き通った声と共に周囲のごく自然な空気の流れが一瞬乱されたように感じた。

「……どうぞ」

 先ほどまで頑なに僕らを通そうとしなかった門兵がローブの人の声に遅れる形で了承した。

 門兵が開門するための装置の方へ向かい、それのハンドルをガラガラと回すとチェーンが巻き取られていき、門が上へと上がっていった。

戻ってきた門兵に「……ありがとう」とその人がいい、平然と城下に入っていく。

 これは不法侵入にあたるのでは、と考えが浮かぶが入れるに越したことはないと思い直して、小さくなるローブの人を追った。


「あ、あの。さっきはありがとうございました」

 追いついた僕は後ろから声をかけた。いつの間にかフードを被り直していたようで後ろ姿は白一色だ。

「……縁、宿舎はあっち」

 数拍置いて言葉が返ってくると同時に、首が横に向き、フードが揺れ横顔が町の明かりに照らされる。その肌は白く、目は緋色。それに先も見た透き通った白髪の髪が揺れている。その光景には現世と隔絶されたような美しさがあった。容姿に見惚れているとフードを両手で深く引き寄せて少女はいった。

「…目を見ちゃダメ。貴方も魅了してしまう」

 その言葉に反射的に目を伏せる。

…さっき、門兵に使ったのは魔眼の一つに数えられる魅惑の瞳だろうか。

 そんな思考がふと湧いた。

「…私は魔術高校、二年のハク。……またね、縁」


 突然、始まり終わった自己紹介に釣られて顔を上げるも上級生の少女の姿は忽然と消えていた。


——まるで初めからなにもいなかったかのように。


 夢幻かを確かめるために城門の方を向くと僕が乗ってくる予定だった馬車が検問を通って入ってくるのが見えた。

 そこではたと思う。

 なぜあの上級生は僕の名前を知っていたのだろうか。


 *       *      *


記録

 星銀暦四百七年。三月三十一日。守護対象と接触。門兵と問答をしている際に助太刀し、天誅へ招いた。…蒼葉を枕にして寝てみたい。もふもふしてて気持ちよさそう。


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