風まかせの
ユキと寅之助は異界に出られたようだ。出られたが館らしいものは見当たらない。しばらく歩いた。途中、ユキの話しを聞いた。
「カゼ将軍と会ってどうする?」
「事と次第によっちゃあ、ヤツを倒す」
「無理だろう」
「アンタ、本当にへなちょこだねえー。合気刀は飾りかい?」
「いやいや、無理だろう。それに、敵とは限らないだろう。そして、これは攻撃の為ではなく、最低限の防御の為のものなんだよ」
歩いていると、誰かいた。
「オッサン誰?」
「風まかせの漂流シジンポージー、およそ風まかせの漂流シジンポージー」
「なんだコイツ」
「それはトトの剣ですか?」と漂流シジンポージー。
「トトロ?」
確かにこの辺りはトトロの森のようかも知れない。
「違います。これは合気刀といって、剣とは違います。守りを専門としたものです」「ところで、この辺りにカゼ将軍の館があるのかないのか分かりませんが、何か知りませんか?」
「風がみえるでしょ」
「みえねえよ。みえたらどうなるんだよ」
「ここや、あちらや、そちらや」
「だから、どこを見渡してもない …… 、いや、あれか?」
トトロの森の先の方にあるようだ。
二人は館へと向かった。
「回廊がみえるでしょ 遠い日々の」
「彼方の回廊を その剣とともに」
「嘗てみた景色 今はもう そして あなたを引き止めることはできない」