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向かって進んで
カゼ将軍の館が異界にあるという。そこに向かう人間がいた。風に向かって進めば、そこに行けるという。
寅之助が気がつくと、そこは何もないような空間にいた。ただ、女子が少し離れて座っていた。
「やっと気がついたよ」
「君はいったい……いや、君はユキ?」
「何で知ってる? アンタ誰?」
「あ、いや、勘違いのようだ。何でというか、古い知り合いに似ていたようだ」
「似ていて名前も一緒だ? アンタも変なヤツだね。最もこんなトコに普通マトモなヤツはこないだろ。で、何て言えばいい」
「寅之助と言う。ここはどこか知ってるかい? 君は何でここに」
「異界と現実の狭間の、エアーポケットみたいなもんだろ。異界に用があって行こうとしたら上手くいかず、ここに捕まっちまった。アンタもかい」
「まだ朦朧としていてよく思い出せないが、確かに異界と何度か往き来していたようだ」
「そりゃ刀かい?」