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変化(寺島)

 目覚めたら月曜日。

 この一ヶ月ほど僕は金曜に真夜中のドライブに出かけ、ラジオを聴いて土日は眠りの中だった。

 

 週末のラジオを聴いた後は必ず僕の頭はスッキリとし体には力が漲っていた。


 何も変わらない何も起こらないつまらない日常。それを僕は淡々と過ごして週末を待つだけ。そう、今日も。


「をうっおはよう! 寺⋯⋯島!?」

「おはよう谷内。なんだよ人の顔見て驚いて。失礼な奴だな」

「いや、だって、お前⋯⋯」


 言葉を濁す同僚の谷内に僕は内心舌打ちする。僕とはあまりにも違う。彼は明るくて優しくて誰にも好かれる好青年。僕には彼の光が眩しすぎるのだ。


「仕事始めても良いかな」

「あ、ああ⋯⋯なあ、寺島、ちゃんと休めてるか?」

「はあ? ここのところ週末はずっと寝ているし休めてるよ」


 谷内は僕と違う。彼は友達も知人も多い。休みの日にバーベキューをしただとかどこそこへ行っただとかよく聞く。

 谷内の方が休めていないんじゃないか。


 僕はまだ何か言いたそうな谷内に背中を向けて自分の仕事を始める。仕事が滞って週末に影響させたくはないのだから。



 昼。

 普段なら仲の良い同僚に誘われて昼に出る谷内が珍しく僕を誘って来た。

 仕事に来る途中で適当な栄養ドリンクを買って来ているからと断っても谷内は「栄養ドリンクは補助食品だ!」と強引に僕を連れ出した。

 定食をつまみながら谷内が一方的に話し、僕は黙々と食べながら適当な相槌を打つ。こんな事のどこが谷内にとって楽しいのか理解できないけれど、それでも笑顔で話す谷内の邪魔をする気にもなれなくて僕はただ聞いていた。


「なあ、寺島。本当にちゃんと食ってるか? 休めているか?」

「なんだよ。食べてるし休めているって言って──」

「嘘つけっ。お前鏡見ろよ」


 突然の言葉に僕は何故かイラッと来た。

 鏡なんて朝見て来た⋯⋯谷内のようにイケメンでも無い僕でも一応社会人なのだから身だしなみくらい人並みに気にしている、つもりだ。

 なんなんだ一体。谷内は何を言いたいんだ。


「お前さ、目の下にクマが出来てる。頰もこけてるし、顔色がどどめ色だ」

「はぁ?」


 思わず自分の顔を触ってしまった。谷内には僕がどう見えているんだ?

 僕は確かに深夜のドライブが趣味だ。けれどここ一ヶ月は週末のラジオの為に平日は控えているし、休日は途中覚醒もなくぐっすりと眠れている。

 深い眠りから目覚めれば頭はスッキリとして力が漲り、体が軽いくらいだと言うのに。

 それなのにどうしてそんな事を言われなくちゃいけないんだ。


 馬鹿にしやがって──。僕は谷内を睨もうと視線を上げて背筋が凍った。


 谷内は普段の穏やかな視線ではなく厳しい目で僕をじっと睨んでいた。

 

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