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賢者のフィロソフィ  作者: らんたん
3/3

自覚無き傲慢

お待たせしました。最近リアルが忙しく、全く手が付けられない状態だったもので。これから投稿頻度は上がると思います。

「君はぁ、どんな目的で行動しているのぉ?あ、盗聴の心配は無いよ、私が細工してるから」


森のざわめきが静寂に包まれるような感覚。そんな不思議な空間。そこに白衣の賢者が問いかける。


「そうですね、私の為です。しかし、貴方達やこの子のように、"自分以外に目を向けれる方"は素敵だと思っています。自分に満足しているから、そんな『美徳』を遂行する事が出来る。素晴らしいではないですか」


賢者の問いかけに、そう答える。

絶えず微笑みを浮かべ、十字架のネックレスを下げ、修道服を着ており、しかしその見た目の雰囲気をぶち壊したような、悪魔のような黒い羽を生やした赤目銀髪の少女。その後ろにはぐったりと、眠っているように倒れている少女がいた。


「人間は悪くも欲に忠実です。ですが、その欲望のおかげで人を助けることだって出来る。しかし、悲しいことにそんな素晴らしい行動でさえ代償を支払わなければならない。なんて酷い事でしょう。だからこそ、他者に目を向けれる方は素敵だと思うのです。代償を気にしないという事は、自分がそれでいいと満足しているから、失っても良いと思っているから、素晴らしいと思います」


賞賛とも皮肉とも取れる"上辺だけのスカスカな言葉"。それは賢者の興味を引くには十分なものだった。


「ふうん、面白い『魔族』も居るんだね、仲間内の繋がりが強い種族でどうしてこんな思想の者が生まれたのか、とても興味深いなあ」


緑の瞳に妖しく光る魔眼。その目は黒い羽を持つ特異な少女に注がれている。


まるでこちらを値踏みするかのような、賢者の瞳に吸い込まれそうな不思議な感覚。


「キミの行動は見てきたけど、"彼女"は悪くないと思うよ?でもさ、キミのその活動は良くないなあ、おかげでアイツと、その後に私が『処理』する羽目になった」


「彼女は予想外でしたから。それでも生きようと頑張ったのです。たとえ記憶が消えたとしても、その行動は無駄にはなりません。だから彼女は素晴らしいと、思っております」


なんでもないように、またもや嘘としか思えないような薄っぺらな言葉を並べる。


「やっぱり、彼女は『特別』だったわけか。そうゆうの困るんだよねぇ。自分が一番と思っちゃうから、付け上がる。その点で言えば、キミも大分『特別』なんじゃない?」


「...私は『特別』な方などは存在しないと思っております。皆、自分自身で出来る事をやっているだけ。だから皆平等なのです。そして、平等だからこそ、"私達"が皆を引っ張っていかなければならない」


「それってさー、要は特別な生物が居ないと"思っているから"自分が皆にとっての『特別』になろうとしてるんでしょ?...へぇー"思い込み"、ねぇ」


おもむろに、白衣の賢者が"腕を地面に叩きつける動作"をする。その瞬間、目の前に"血飛沫"が飛び散る。

その場所に、修道服の少女は居らず。


一瞬の静寂の後に、はあ、とため息が響き渡る。


「"思い込み"って怖いよねぇ、だって、"出来ると思ったら"何でも出来ちゃうんだもん。あーやだやだ、何時からこの世界には平気で復活するような奴らがのさばるようになったのかなあ?」


後ろを振り向く、そこには五体満足の、悪魔の羽を生やした少女。しかし、絶えず微笑みを浮かべていた顔とは一変し、真剣な、こちらを睨むかのような感情の発露。


「人殺しはいけませんよ、許されざる行為です。博愛の心を持ちましょう、私は助けたい一心でここまで来ました」


「露骨に話を変えるんだねぇ。..."思い込んじゃった"んでしょ?じゃなきゃ、キミは殺されていなかった。想像力が豊かなのも考えものだよねえ?普通は、腕を振り下ろしただけで"潰される"なんて想像しないもん。でもキミはそう『認識』してしまった。私とは相性が悪いみたいだねぇ?」


より一層、修道服の少女の感情が露になっていく。


「もうバレてるよぉ?キミの能力と、その『自分だけが特別でそれ以外は全て下』っていう自己中心的な内面も」


手の通されていない袖で口元を隠しながら、そう言い放つ。まるで全て知っていると言うような顔で。


「...私は私の為に動いてきた。そう、私だからここまで来れたのです。私でなければ貴方のような偉大な方に()()ことも無かった。貴方達は皆自由に人生を謳歌している。だから私も自由に何かを成すのです。私ではなく、世界がそうさせた。だから『私は悪くありません』。だって魔王様でさえ自由なのです。皆がそうあるべきなのです。だから私達は『正義』の為に、崇めなければならないのです」


「その歪んだ正義なんて知りたくもないや。それと、崇めるって、何を?」


だが、その少女はこてんと、首をかしげ、


「さあ?何でしょうね?」


そう言い切った。対面の賢者は豆鉄砲を食らったかのような呆れた顔をしていた。


「はあ、もういいや。あっそうだ。キミが悪くないならそこに倒れてるお嬢さんは誰の所為でこうなったの?可哀想に」


今まで全く触れられて居なかった影の薄い少女に焦点が移る。まだ目覚める兆候はなく。


「存じ上げませんよ、そんなの。この方は恐らく"そこで亡くなっているおじ様"の娘様でしょうね。私が彼と話をしていた所、いきなり彼を刺してしまいましたから」


指さを指す。そこには血みどろの、見るに堪えない惨殺死体が転がっている。もはや、本性を隠す気などなく、平然とそう言ってのける。


「いや、いいよ。そっちには興味無いから。あくまでキミだからね、調べたかったのは。この人間がどうなろうと関係ないからね。どうせ似たような人間は腐るほど居るし」


袖をぱたぱたと揺らしながら、そう言った。全く考えが分からない、賢者のその掴み所の無い雰囲気に少女は少なからず困惑していた。


「はあ、そうですか。この子は私が引き取ります。私の為に立派に育ってくれるでしょうね。それと、貴方の目的はなんなのですか?私は生憎悪い事をしていませんが」


「...平気で嘘をつくのも良いね。もう目的は達成してるよ。おめでとう、キミはテストに合格した。自覚のない『虚飾』が決め手だったよ」


「テスト..ですか?それは一体何の?」


だがもう賢者は興味を無くしたようで、背を向け、最後にこう言い放った。


「それは近い将来分かるよ。...私が直々に選んだんだから、精々"都合のいい踏み台"になってね?」


そして、何も無かったかのように彼女は消えた。


「...近い将来ですか、出来ることなら、もう彼女には逢いたくないですね。賢者は災害の様なものなのかもしれません」


修道服の少女も、倒れた少女を持ち上げ、誰もいない、誰も認識できない森から飛び立った。

露骨に伏線を貼っていくスタイル。実は倒置法の所は逆から呼んでも意味が通じるようになってる所があるっていう小ネタを仕込んでみたり。

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