七
爺ぃと婆ぁはお互いの制空権をギリギリ保ったまま囲炉裏を挟み睨み合っていた。
最初に仕掛けたのは爺ぃであった。
爺ィの高速で動かす瞬きにより目からビームを放つ。
これで、婆ぁを殺せるわけではない。
ボクシングでいうジャブである。
婆ぁは一直線に来るビームを避けようとせず喰らったのだ。
婆ぁは消滅した!
かに見えたがしかし、
胡座をかく爺ぃの後ろに瞬間移動したのだ!
婆ぁは智略に秀でた猛者であり、川から最短でルーラで帰ったのは爺ぃを殺す準備を念入りにする為であった。
もうすでに爺ぃの座る後ろに移動式転移呪文を施していたのだ!
そして、四次元巾着から一尺五寸の名刀、マグロ包丁を取り出し、首を跳ねようと迫らんとしていた。
しかし、婆ぁのマグロ包丁は空を切ることなる。
爺ぃは胡座をかいたまま、宙を舞ったのだ。
武で秀でた爺ぃは胡座をかいたまま放屁で飛ぶことなど容易い事であった。
婆ぁもこの程度の智略で爺ぃを殺せるとは思っていなかった。
両者の力は拮抗している。
囲炉裏を挟み先程の攻防で変わったのは爺ぃと婆ぁの場所だけである。
お互い笑みが溢れる。
爺ぃと婆ぁにもう殺気はない。
「久しぶりに婆ぁさんの味噌汁をのみたいのぅ」
「そう言うだろうと思って作っておきましたよ」
今日は月が綺麗だ。
だからなに?
つづく