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第三回 まだ起きてない殺人事件 解決編

 私は頭を悩ませていた。対象は目の前のこれだ。

「……ですが宮園警部補、彼の言うことは本当です!」

「知らん! そんなもの、信用できるか!」

 宮園警部補。今年4月に七河警察庁に転勤してきた29歳の警察官だ。

 彼は横暴すぎるという事で警察内でも有名だそうで、1年ごとに転勤させられているらしい。だが本人は、『優秀過ぎて扱いきれない』とおめでたい解釈をしているようだ。だが実際、彼の関わった事件・問題は9割以上が即日解決しているので優秀なのは間違いない。問題は能力ではなく、性格なのである。私も何度かそう忠言したのだが、全く聞く耳を持たなかった。

 そして彼に振り回されているのが中川巡査。所属3年の中堅になろうかという彼は、まだ21歳。位も年齢も上の宮園警部補に逆らうことが出来ず、振り回されまくっている。

 おっと、自分の紹介が遅れた。私は未河瀬(みがわせ) 来佑(らいすけ)。ここ七河市で探偵をやっている21歳の男である。中川巡査とは高校時代以来の友人で、今も友人として付き合いをしている。

 私の家系は『名前に応じた特殊な能力を持つ』という不思議な力を持ち、私の名前に『未来』が入っていることから、『三日後の出来事が箇条書きで分かる』という能力を持っている。例えば、今日から3日後には


・パンが焦げる

・浮気調査依頼の解決

・殺人事件発生・解決

・財布を拾う

・馬券の的中


 という事が分かる。どうやら基準は『普段起きない事』のようで、日常であまり起きない事のみが見えるようだ。

 そしてその中から、見えたものの個数×0.2+1個のことを詳しく見ることが出来る。例えば、『馬券の的中』だが、今回は『桜花賞 ④-⑨-⑰の三連複が的中 配当率35.4 購入金額5,000円 獲得金額177000円』という事が分かる。そしてこれだが、見えたことをなぞらないと必ず外れる。先ほどの例の場合、5,000円を3連複に賭けたのだが、これを20,000円にしたりすると外れる。5,100円でも4,900円でも外れる。という、便利なようで難儀な能力なのだが、これで重大な事件が発生するのを察知した際には警察庁に報告するようにしている。それで今回も来たわけだが、宮園警部補が信じてくれないのであった。いくら先輩方や他の職員たちが口をそろえても一向に信じない。

「わかりました。では、こうしましょう」

 私はため息をついてから、そう切り出した。

「今回だけ、私の言うように動いてみてください。それで外れたようならば、私を公務執行妨害で訴えてもらっても構いません。それでどうでしょう?」

「いいだろう」

 即答!? さっきまでの疑いは何処に行ったのやら、即答が返ってきた。

「先に忠告しておきますが、被害者の方と加害者の方には一切接触してはいけません。じゃないと、犯行時刻がずれたり、被害者・加害者ともに変わることもあります。また、その事件が無くなることは絶対にありません。うかつに接触した場合、数日ずれることもあります。いいですか、絶対に接触しないでくださいね」

「わかった」

 即答。本当に分かっているのだろうか? まあ、分かっているとしておこう。

「それでは。今回の被害者は秋山加奈子さん37歳。そして加害者は村田志龍さん17歳。犯行動機は課金のし過ぎで金欠に陥ったことです。鞄をひったくろうとしたところで失敗して、ナイフで手を切って手を離させようとしたところで謝って胸に刺さり、心臓破裂によって死亡。場所は七河市久良田町21-5付近。犯行時刻は19時52分です。さて、今回の事件ですが、村田志龍さんを銃刀法違反で逮捕できるので、犯行時刻ギリギリで捕まえれば被害者の方が刺されずに済みます」

「つまり、我々はその時間に張り込みをしていれば良い訳だ」

「ええ。ただし、何度も言いますが、直前まで絶対に接触はしてはいけません。未来が変わってしまったらもうそれでお終いですからね。顔が分かっている訳ではないので、直前まで誰がそうなのか分かりませんから」

「わかった」

 やけに素直に聞いていますが……大丈夫なのか?


 ◇ ◆ ◇


 時は飛んで3日後の19時50分。現在私たちは犯行予定場所の周辺で張り込みをしている。メンバーは私と中川巡査、宮園警部補、そして秋本巡査という女性警官の4人だ。

「そろそろですよ。一人で歩いている女性に気を配りましょう」

「そんなこと、言われなくても分かっている」

 こんな調子で本当に大丈夫だろうか?

 だが、一人の命が懸かっているのだ。ここでやめるわけにはいかない。

「あ、あの人でしょうか」

 秋本巡査の声が上がる。国道の方から女性が歩いてきた。

「その後ろに……男の人もいますね」

 中川巡査が言った。女性から30メートルほど離れた後方にメガネの男性が歩いている。その男性は速足で歩いていて、徐々に女性との距離を詰めていっている。

「中川さん、予定どうりにあの男性に職務質問をして下さい」

「分かりました」

 中川巡査が男性の方に近づいていく。そして男性を引き留めた。ここからでは声は聞こえないが、とりあえず犯行は防げたようだ。


 そのあと、コンバットナイフを所持していて逮捕されたこの男性の名は村田志龍で、私の予言が正しかったことを証明できたのだった。

どうも、四季冬潤とかいう者です。


今回も綿飴なごみさんからのお題『まだ起きていない殺人事件 解決編』でした。

割と初期段階で構想は決まっていたのですが……あまり時間が取れなかったです。


一応、続編を書くことのできる形で終わらせてはいますが……多分書く事は無いです。


まだお題は募集中です。あまり投稿ペースは速くありませんが、どしどしお題を出していただいて構いません。

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