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君と恋人(タメ)になりたい!  作者: 神鳥居真亜夢
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第1話 隣に君が降ってくる

初投稿です。王道恋愛ものから少しずれた気がしますが、読んでいただければ幸いです。

 

少し肌寒さを感じながら窓を開けると、庭先に桜が咲き始めていた。身支度を手短にすませ、軽めの朝食を食べ、着慣れた制服に袖を通す。季節は春、二年目の新学期を迎えていた。俺の通う創造促進高等専門学園、通称創進学園では学科ごとに授業内容が異なる。そのため毎年のクラス替えは行われない。

  今年から二年生になる俺、雪村燈(ゆきむらともる)もいつもの教室で代わり映えしない新学期を迎えるはずだったのだが。


「今日物理あるじゃん!最悪なんだけど!」

「まぁ気持ちはわかりますけど、なぜ俺の家の前にいるんです?」

「今年からともくんと同じ教室だから?」

「それ理由になってます?」

「じゃあ家知ってるから!」

「ストーカーですね、通報します」

「ちょっと待って!回想!回想入るからスマホ出さないで!」


 ~始業式当日~


「おっはよー!!今年もよろしくっ!!」


 新学期とはいえ代わり映えしない教室に柔らかな春風が舞い込む。教壇の傍には異彩を放つ女子生徒が一人。教室中の生徒が一斉に視線を向けている。


「あれ?なんかまちった?」

「どう考えても第一印象最悪ですよ」

「え、明るい方が話しかけやすいじゃん」

「周り見てください、満場一致であいつ誰?って思われてますよ」


 俺はため息をつきながら自分の席につき鞄を下す。落ち着きのなかった生徒たちも担任の教師が来るやいなや、いそいそと席につきだす。先ほど衆目を集めた女子も俺の右隣の席に掛ける。…嫌な予感を抱きつつ、特に顔を合わせることもなくHR(ホームルーム)が始まった。


「おはよう。君たちも今年から二年生か、早いもんだな」

「今年は岡本先生が担任なんですね、なんか安心しました」


 この学校の特徴である生徒の独自性、独創性を培う放課後活動、通称課外活動。岡本先生はそのサポートを行う課外担当教員の一人。勉強会などで成績のサポートも積極的に行ってくれることもあり生徒との距離も近く、よくお世話になっていた。


「燈たちとは二年目、(めぐみ)深月(みつき)は三年目の付き合いになるな」


 何気なく発した先生の一言により、和やかな雰囲気の教室はピリピリとした緊張感に包まれる。…嫌な予感は当たってしまったらしい。


「おかぴー先生公開処刑はひどくない!?」

「なんでこうなるんだ゛…」

「遅かれ早かれ分かることだろ?まあ話のついでだ、二人から先に自己紹介…この場合は事故紹介か?」


 恵と呼ばれた女子生徒は頬を膨らませて抗議し、深月と呼ばれた男子生徒は俯きながら頭を抱えている。岡本先生はしてやったりと満面の笑みを浮かべているが完全に滑っている。まぁ、いつものことなのでみんなは軽く受け流している。


「仕方ないですね…では改めて。私は船岡恵(ふなおかめぐみ)、ひとつ年上だけど気軽に接してね」

「俺は浅野深月(あさのみつき)。よろしく頼む」

「深月はしばらく入院してて出席日数が足りなかったんだ、恵は…まぁ成り行き上だな」


 不満げな恵を尻目に、岡本先生が説明を終えると同時に始業式開始五分前を告げるチャイムが鳴った。

 クラスのみんながテキパキと体育館へ移動を開始するなか、俺は机に突っ伏して思案していた。みんなはまだ知らない、恵先輩のわがままから逃れるすべを。


「ともくん寝てるのー?早くしないと遅れるよ?」


 顔を上げると鼻が触れるほどそばに恵先輩の顔が接近していた。さらりと伸びた髪の毛からシャンプーの甘い香りが漂う。美少女、という言葉がこれほど似合う人も少ないのではなかろうか。

 クラスに二人取り残された俺が立ち上がろうと椅子を引いたとき。


「…今日から同級生(タメ)だね、ともくんっ」


 恵先輩は怪しげな笑みを浮かべながら耳元でささやき、一人先に体育館へ向かう。バクバクと高鳴る心臓は彼女への警戒を高く引き上げる警報のようだった。


「…今年一年、平和でありますように」


 俺は一人教室で手を合わせ、これから先起こるであろう出来事に神の救いを求めた。

幸村君の健闘を祈りましょう。

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