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Psychic×strangers   作者: さがっさ
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第二話 中立魔導保全都市、迎撃戦 /ミドルフェイズ9:森の流星群

今回も遅れ気味で申し訳ありません……


「前方、異状なし……向こう二十メートルにモンスターはいないな。そこから先は何体かいるが……無理にかち合う必要は無い、このまま迂回を提案するが……?」


「異議なし」


「戦わないことに越したことは無いしね……今の所は道に迷ってないのよね?」


「はい。大丈夫だとおもいますよ。今は……ここにいますね」



 木々が無造作に生える森の中、落ち葉と乱立する木々から生える木の根、虫の死骸それらが積みかさなってできる腐葉土からなる安定しない地面を踏みしめながら進む五人の人影。

 その一行は列を前に軽装の斥候らしき者を一人、中央には魔法使いである後衛を三人、最後尾には背に身の丈ほどもある大剣を背負った剣士を置いた隊列を組んで森の中を進んでいた。


 一定距離を進んでは立ち止まり方向を転換し進むということを繰り返し、およそ森の中で迷っているのではないかとも思える移動を繰り返す一行はここまでの間で一度もモンスターと遭遇することなく森の中を目的地に向かった着実に進んでいた。


 一度も障害となるモンスターに行き当たることは無くモンスターから察知されない際を縫うように最短距離で進むその様子はまるで森の中の様子を完全に掌握しているその森の住人しかできぬ芸当であり、冒険者とみられる彼らでは到底敵わないものであるにも関わらず、彼らは当然のようにその芸当を確かなものとしていた。



「しかし、この組み合わせというか、タダでさえ佐助の《接触感応(サイコメトリー)》だけでも十分なのに、ここまで視界が開けない森の中も見通せるような目を持ってる奴がいるのは怖いもの無しだよな……」


「私にはモンスターの影の形も分かんないのに大したもんよね。私もそういう《超能力》の方が良かった」


「お褒め戴いて恐悦至極といった所ではあるが……お前たちもそうかも知れないがこの目を使うのも限界はある。帰りの分の使用も考えれば、あまりモンスターを割けてばかりはいられないぞ」



 苦言を呈す白衣の少年は時折木々により閉ざされた森の暗闇へと視線を向けて周囲を警戒していた。

 


「そうっすよ。俺の方も限界はあるんすからね。今日だけでこの森を全部調べるなんてことも絶対に不可能なんすからね。限界は誰にでもあるということをはっきりと認識しておいてもらいたいっす」


「まあ、それはしょうがないとしても、しっかりと仕事はしろよ。能力が使えなくてもお前が忍者で斥候の役に自分からついたんだからな」


「それは勿論。モンスターを事前に避けて通るのは難しくなるっすけど、例え深い森の中でも完全な不意打ちを食らうようなへまはしないっすよ」


 

 一行の先頭を行く黒を基調とした軽装の男は絶えず地面や近くの樹に触れて何かを探りながら、自信ありげにそう話す。

 風が突き抜けて木々と土の匂いが彼らの間を通り抜ける。その中には当然、野生動物を思わせるようなモンスターのものも含まれており、否が応でもこの森の中にモンスターが生息し闊歩していることが分かってしまう。

  


「嫌な空気よね……私の近所の裏山でもこんな雰囲気じゃあなかったわよ」


「当然だろう。ここは日々の糧を主に他の生物を狩ることで得るモンスターが生息する森の中だぞ、どんな辺鄙な裏山であろうとも野山の獣はタヌキが精々だ、比較にはならんだろ」


「一重に同じ獣道でも、こっちは隠れ潜むような奴だけじゃないっすからね。文字通りの森のカースト制度の上位は我が物顔で歩いてるっすから、単純に匂いはするっす。マーキングとかで縄張りを表してるのはどこの世界でも一緒っぽいっすけど」



 斥候の男が指し示す先には木の皮が抉られた跡や地を這う根が途中から削られた跡、或いは示されるまでもなく明らかな存在感を周囲に発し、一行の女子勢は顔をそちらに向けることはできず、男子勢の方も顔を顰めるもの、つまりは()()()()()()()()()()であった。



「アンタ、ホント、さいってー」


「い、いえ、すみません。折角ご教示して頂いたのに……冒険者たるものこんなことで動揺していてはダメですよね……」


「これは単純にアイツにデリカシーが無いだけだと思うぞ」


「先ほどから存在感はあったからな態々指し示す必要も無かったしな……」


「いや、これは真面目な場面だったじゃないっすか……!! 訴訟も辞さない……!」



 張りつめた空気が一気に霧散してしまう彼ら、恭兵達"迷人まようど"の一行は現在、マナリストを騒がしている"盗み屋"を手引きしていると思われ人物の手がかりを探していた。



「けど、入ってみればこれだけモンスターが蔓延ってるのに隠れ家とか作れるものなの? 私の考えが甘いとしてもそう簡単にモンスターの巣窟に出入りできるとは思えないんだけど……」


「確かに……ここまで私達が来るだけでも困難ですからね……今もこうして通った所をマッピングしていますが……いかにこの森が広いと言っても、モンスターを割けて行き来できるのには限界がありますよ……」


「お前達のいう通り、確かに容易ではなく相手は当然相応の手練れであることは当然の前提ではあるが……それでも不可能では無いだろう。ここはこの大陸に三つしかない魔導都市の一つ、マナリストと最近接している森だ。何らかの魔法という言い方は好まないが……兎も角、方法や手段は豊富に存在する」



 実は早速、自分の見解をここぞとばかりに語りだした。



「例えば……事前の調査という観点であればモンスターに関する研究やこの森の生態系を調査する研究がある。或いは俺やそこの忍者のように広く情報を収集することができる感知系統の魔法や《アーティファクト》を用いることで俺達が今やっているようにモンスターを避けて通ればいいだろうしな」


「或いは、あれだろ、野々宮が持ってるけど使えないっていう《瞬間移動(テレポート)》とかの……なんていわれてるかは分からないけど」


「転位、転送、或いは。ワープと呼ばれる現象を引き起こす魔法か……一瞬の内に遠距離を移動することができる類の魔法、それも確かに考慮の余地には入るだろうが……優先順位は低いだろうな」


「それは……単純にそういった魔法を使える人が少ないとか?」


「……いることにはいるそうだ。最も、その人物がマナリストにいるかどうかは分からない。俺も詳しい事情を知っている訳じゃないが」


「過去の《対魔十六武騎(たいまじゅうろくぶき)》の《魔法使い》や《勇者》の仲間は自在に扱うことができたということのようなのですが……詳しいことは神殿でも限られた人にしか教えて貰えないんです。後は、聖魔暦の前、八百年程まえの神聖大陸にはそのような技術があったとされているんですけど……」


「大陸の北西の秘境にいると言われているハイエルフなら何か知っているかも知れないが……今は関係ないか。兎も角、今回はそんな魔法を扱うような輩が犯人である可能性は低いだろうな」



 そう二人が話すのを聞いて犯人、マナリストで幾人も諭し"盗み屋"をやらせていた挙句その手引きを行っていた人物、について恭兵は考えていたが現状、与えられた情報が少ないこと以上にマナリストに住んでいる住人などろくに知りもしないのでは犯人を絞り込むなどということはそれこそ不可能であると考えた。

 

 先ずは目の前の依頼をこなすのが最優先である。


 改めて周囲の警戒へと戻ろうと考えたが、現在は先頭を行く佐助が《接触感応》により周囲の状況や環境を読み取ることで把握しているが、それに加えて、実は自信の能力である、《透視能力(クレヤボヤンス)》により遠くのモンスターを見通しており、周囲の警戒は十分であった。


 《透視能力》、暗闇の中でさえ昼間の如く視界は鮮明となり、常人の数倍以上の視力により遠くの物体を正確に把握、森を自らの庭であるといってはばからないモンスターの動きすら把握する動体視力が備わる超常の眼、それが真辺実の超能力であった。

 恭兵との初対面であった時に、その状況を正確に把握していたのもこの視力故にだろう。

 

 そして、恭兵は志穂梨の方を見る。

 自ら買ってでて地図に一行の通ってきた道筋と佐助と実がえた情報からモンスターのおおよその位置を書き記していくマッピングを行っており、手元の羊皮紙に描かれた方眼上に綺麗な円をフリーハンドで書き込みつつ、その円と円の間を縫うように矢印となる線を継ぎ足していた。



 野々宮志穂梨にも、超能力は備わっている。しかし、本人の申告では《瞬間移動(テレポート)》であるその能力はこの森の中では到底生かせるものでは無いようであり、かつ何らかの事情によりその詳細は伏せられたままであった。


 超能力を暴走させないようにその力の制御に十分注意を払うのは当然であり、恭兵自身も能力の制御ということに関して言えばこれまで苦労してきたこともあり、そのことを知って以来、気がかりとなってはいるがその恭兵以上に気になっている人物がいた。


 恭兵はその後ろ姿をじっと見つめる。その人物とは明石都子である。


 本人はそのそぶりを見せまいと振る舞っているが、それでもその落ち着きの無い様は恭兵には良く伝わっていた。元の世界への帰還手段の一つとして《開かれた瞳の予言者達》の一人であるレネゲイズが言及していた《瞬間移動》の存在、それが導かれた先というにはあまりにも早く現れたことで何か作為的なものを感じずにはいられない。


 恭兵でさえそうなのだから、元の世界への帰還を強く望んでいる都子にとっては、例え成功の可能性が低かったとしても彼女が意識せざるを得ないのは当然であった。


 空間を飛び越える超能力である《瞬間移動》は実際にはどれほどの能力であるかは確かではないがしかし、森の中で扱えないということは相応に気を使わなければならないものなのではないか、とそんな事を考えつつ、恭兵は一行の後方を続いていた。



「あっと、もう、ぬかるみがひどいんじゃない?」


「足元気をつけろよ。結構簡単に転ぶぞ」


 

 異世界グゥードラウンダにコンクリートで舗装された道がある訳はないが、それを抜きにしても森の中のモンスターの縄張りを縫うように抜ける都合上、その道は獣道ですらないため非常に足場が悪いものとなっている。

 当然、そんな道を歩き慣れていない都子のフォローとして、二年間樹海の中で修行していた恭兵が後方に位置することになったが、それが早速いきていた。


 

「でも、志穂梨はよく大丈夫よね……手元で地図をみながらなのに足取りが全然違うじゃない」


「私も《巡回神官》となるために色々と依頼を受けたりしてますから、足手まといにならないように頑張ってるんです」


「でも、確か神官って引く手あまたなんじゃないの? 怪我を治せる神官がいるのは十分助かると思うけど」


 

 自信なさげに答える志穂梨に対して都子は素直な疑問を投げかける。

 冒険者の徒党を組むに際して必須とも言われるのが神官とも言われるのは冒険者に対して隔意を覚えている都子にも覚えがあったようである。

 


「そうなんですけど……私の場合は肝心の神聖魔法なんて三つしか使えませんし……例えば単純な切り傷や怪我は癒すことはできても……解毒とか汚れた水を綺麗にするとか、同じ冒険を共にする仲間に祝福を掛けるといったものもできませ――――」



 志穂梨の言葉が止まった。

 同時に、佐助は重心を落としてそのまま中衛の魔法使い組の三人の元まで一息で下がり、遠くを《透視能力》で見ていた実も息を飲む。

 恭兵は既に背から赤い大剣を包む布を解いて抜き放っていた。

 それらに遅れて、都子が咄嗟に掌を掲げる。


 変化が起きたのはその前方、一見無秩序に生える木々の群れの中の内、恭兵達の進行方向から()()()()()()

 樹海での生活が身に染みている恭兵には直ぐにその音を鳴らしたものが敵意をこちらに持っていることが分かった。

 モンスターの縄張りを縫うようにして移動しているために自分達以外の生き物の物音は聞こえる筈も無く、それが聞こえるならば既に補足されていることを考えていなければならない。

 佐助が地面伝いに位置を読み取り、実の視点は広く全体を通している故に樹上付近は死角となり、近づかれるまえに察知し避けることができなかったのであった。



「敵だ構えろッ!」

「相手は、木の上っすねこれは」



 恭兵の声が響くと同時に音が騒がしくなる。前方に並ぶ木々が激しく揺れるのが遠くからでもはっきりと見えた。佐助の言葉を聞いて樹上を見上げれば確かにこちらへと向かってくる影のようなものが日の光を遮るようにこちらへと向かってきていたのが分かる。



「あれは、ジャンガリアゴリラと、あれはバディスネークか!」


 

 モンスターを《透視能力》によって強化された眼で捉えた実が自ら蓄えた知識からその正体を割り出す。

 ゴリラと蛇、その正体は恭兵達にも覚えがあるものであった。

 迫るモンスターの正体を明かした上で実は習性を話始める。


 

「ジャンガリアゴリラは樹上を自在に動く大型の霊長類、つまりゴリラだ。その大きさは俺達の世界のものよも大きく、それに比例して凶暴であり―――」

「そんなのモンスターならどれも一緒でしょうが!」

「数は!? ゴリラと蛇で何体ずつだよ!」

「ゴリラの方は三体だ。そして、バディスネークは同じ生息域のモンスターと共生関係をとるモンスターで常に他のモンスターと共生関係を取った一組でくる! よって、蛇の方も三体ッ!」

「モンスターになんか付いてるあれか、蛇は面倒だぞあれ」 

「悠長に作戦立ててる暇はないっすよ。もうくるっす」 

 


 佐助の指摘通りにこちらへと真っすぐと向かってくる影が確かな姿となってここまで来ていた。

 遠目からも分かる巨体のゴリラの胴回りを太縄のように巻き付く蛇、それが三体、群れとなるようへと接近し、その敵意にあふれた眼が向かい合った。



「都子ッ!」

「やっぱり、ファンタジーろくでもないわよ、《念動火球》ッ!」



 恭兵に応じるように都子が火球を放つ、一直線に飛んでいく火の球は枝の間を縫って樹上を飛ぶように向かってくるゴリラと蛇に向かう。


 

「ゴゥアッ!?」


 

 先頭をいく大猿に火の球が着弾して、掴んだ枝から手が放れ樹上から落下する。しかし他の二体は落ちていく仲間を避けてそのままこちらへと隕石のように落下する体勢へと移った。



「あの落下はきついっすよ!」

「ご、ごめんなさい! わ、私の《聖盾》でも防げません!」

「一体仕留めるなら確実にいけるけど、もう一体のカバーにはいけねえだろ! 《念動力》打ち込んでも二体だと正直怪しい!」

「俺も一体引き受ければ何とかなるんじゃないっすか?」

「落ちた一体も直ぐに立ち直ってくる! こっちの三人じゃ持つとは言い切れない!」

「じゃあ、逃げるか?」

「その判断は攻撃する前に思いつけ! どちらにしろ、あちらの方が早いがな!」



 会話をしている内に二組のゴリラはその照準を完全に定めていた最早猶予は無い。



「ようし、分かった。俺に任せろ」

「ちょ、何を!」

「要はあの落下特攻を止めればいいんだろ!」


 

 ゴリラは枝から手を放し、一行へとその巨体の体重のまま強力な落下攻撃を仕掛けた。

 落下地点は既に定まり、退避する暇すら無かった。

 

 恭兵は既に振りかぶっていた。

 

 その目線は落下する大猿を意識しつつも、その傍にそびえる大木へと向けられている。



「《念動木こり》ッ!」



 木漏れ日を受けながら大剣は赤き一閃を放ち、彼が狙った大木の根元へと激突し、亀裂が走る音と共に根元から砕いた。


 根元から折れた大木は落下する二組の内の一つに横合いから激突し、その方向を僅かに逸らすが、完全では無い。このままでは落下の衝撃で一党に多大な損害をもたらすことになる。

 しかし、それだけで終わる筈も無かった。

 恭兵は倒れる大木に手をそっと添えて、その側面に沿うように《念動力》を走らせる。


 

「プッシュバントォ!」

 


 見えない巨人の一押しが加えられて、大木は激突した一組のモンスターを地面へと叩き伏せる。

 残り一体も、勢いが付けられて倒れる大木に接触してバランスを崩して、緊急避難のために他の木へと避難する。


 衝撃により地面が揺れる。大木の下敷きとなった大猿は落下の衝撃で痛手を負ったのかもがきなんとか這いあがろうとしていた。

 しかし、一組は緊急避難の為にしがみついた傍らの木を落下の勢いによりしならせながら、まだとびかかることは可能である。

 威嚇の声を上げて再び落下の体勢に移った瞬間、木にしがみついていた指の先に痛みが走る。



「そう何度もやすやすと落ちてはくれないっすね……」


 

 佐助が投擲した手裏剣が大猿の指先へと飛来し、突き刺さっている。しかし、それでも皮膚の表面に突き立てられたのみで肉を裂くには不十分な一撃だったようであり、大猿の握力を僅かに鈍らせるだけだった。

 だが、十分にその注意を逸らすことができている。



「もう一回! 《念動木こり》ィ!」



 落ちないようにしっかりとしがみついたのが運の尽きであった。

 赤き一閃は再び木の根元を砕くように折り、そのまま大猿を圧し潰すように倒れる。

 三度目の衝撃が走る。



「これで、三体。何とか三連大猿流星群は防がれたな」

「そのネーミングは置いておいて……まだ奴らは死んで無いぞ、まだ地面に降ろしただけで寧ろここからが厄介だ。ジャンガリアゴリラだけならまだしも、バディスネークもいるのはまずい……」

「今のところは腰巻にしかなってないみたいだけど?」

「それで済むなら共生なんてする訳ないだろ。志穂梨、今の内だ!」 

「は、はい! 《大いなる白き光、主神アーフラ=レアよ。我が意に答え、隣人を守る光を与えたまえ》、《聖盾セインズ・プロフェジヨン》ッ!」



 志穂梨が唱え終わると同時に、一行とモンスターを遮るように白い光でできた半透明の幕のようなものが形作られた。

 その幕は自ら暖かい光を発し、向こう側を見通すことができる一見頼りない半透明ではあるが、どこか頼もしさを感じられるものであった。



「相手の攻撃は通さず……こちらの攻撃は障害も無く通過します! 射線は気にせずに撃って下さい!」

「どういう仕組みかは分からないけど、取り敢えず撃ちます、か!」



 間髪入れずに都子が一番初めに落ちた大猿へと火の球を放つ。

 既に立ち上がっていた大猿は胸を両の拳で叩く威嚇行為、ドラミングを行うが、そこに火の球が飛来し直撃する。

 大猿はひるみ、その場で転げまわって体毛に付いた火を消そうとしていた、その度に胴に巻き付く蛇は地面と大猿の下敷きとなり引き伸ばされている。



「あれ、本当に共生してんのかよ」

「あの程度じゃ、ダメージにもならないということだろう、いずれにしろろくにダメージ入って無いぞ」

「私の火の球、一応ゾンビ熊を吹き飛ばす位はあった筈なんだけど」

「あの時はゾンビ熊に蓄積してたガスに引火しただけだろ、数を撃ってそこに釘付けにしといてくれ!」

「おい、こっちも来るぞ!」


 

 一喜一憂する暇も無く、地面に倒れた二組が立ち上がった。

 そして、その二組もドラミングの体勢に入り、同時に胴に巻き付いている蛇がその首を伸ばして、口を大きく開いた。



「クソ、来るぞ! バディスネークの()()()()だ!」

「おい、毒持ちなら流石に言っておけよ!」

「あれ? 解毒はできないって先ほど言ってたっすよね!?」

「うう、申し訳ないです……私がこの一党の神官なばかりに……」

「今その事を言ってる場合じゃないでしょ! さっさと打開策!」



 口早に話す一行の目前に向かって、蛇は一斉に吐息を噴射する。薄紫色の煙のようなものはゆっくりと一行の方へと向かってきていた



「風! 風を送るのは!? 恭兵、アンタの《念動力》で!」

「叩けても、風を吹かせるのはまだ無理だ! 大剣振り続けて風を送っても俺の手が塞がる!」

「慌てるな! 暫くは《聖盾》で毒は防がれる! それに」



 実が言葉を溜めて自身の持ち物を詰めた革の袋を開ける。

 一党の危機の中、彼はひたすらに自らができることを自身の仕事を果たすべく動く。



「志穂梨が解毒できない事を知りながら、俺がなにも対策を打っていない筈はないだろう。少しまて! 対策はある! 俺達魔法使いの役割はこういう危機的な状況を覆すことだ!」




最近遅れ気味ですが何とか一週間以内に更新していきたいです……

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