05話 レイドは笑う1
我の名はレイド。そう!レイドである!
今我は非常に気分がいい。
なぜか?
決まっておろう!つい数分前偉大なる御方から名を賜る栄誉を賜ったのだ。
あの瞬間、いや、もとより忠誠は誓っていたが・・、絶対なる忠誠を彼の方に誓ったのだ!
しかし、先程から妙に体が熱い。これが噂に聞く進化の前兆とかゆう奴か?
進化とは魔物がある一定条件を満たしたと天が認めた時起こる体の異常再編じゃ、
とか、叔父貴が言っていたような・・・・
しかも、体の内から力が漲ってくるこの感覚、やはり進化だな。
ちなみに、レイドは生まれた時からホブゴブリンだったため、未だ進化は経験したことが無い。いや、レイドが無能と言うことではない。進化なんて起こるのがそも稀なのだ。
そんなことを考えていると、いきなり奇怪なものが現れた。
これには、さすがの我も驚いた。
なんだ?コボルト?しかも、浮いてる上に半透明だと!
「あ、あの・・・これは何ですか?」
どうやら、ミアも同じことを考えていたようだ。
我はコッソリ耳を傾ける。
「あれは・・・侵入者だ!」
その言葉に我の体が熱くなるのを感じた。その感情が何なのか気づく前に・・・
「アクア様!ここはぜひ我に先陣を切らせてください!あのような雑魚一瞬で塵にしてまいりましょう!」
そして、我は立ち上がった。
ミアやシルクが恨みがましい目で
「一人では危険かもしれません。」とか
「俺達も同行しよう!」とか、言ってたが、我はこう返してやったわ!
「あの程度の雑魚に二人掛など、アクア様の顔に泥を塗る真似我には出来ぬわ!」
くくく、早い者勝ちじゃ。
そして現在に至る。
我は今通路を歩いている。
どうやら、侵入者と言うのは、あの半透明なコボルトではなかったらしい。
とんだ恥をかいてしまったわ!
我は少し赤面する。
いやいや、これは、あのような高度な透視魔法を使えるアクア様を褒める場面だ。
決して早とちりゆえの悲劇ではないはず・・・・
そんな言い訳をしていると、件の三人が目に入った。
うむ、魔法越しに見たときから思っていたが、こやつら、ただのコボルトではないな。
あの澄み切った目は一線を越えたものしか出せぬものだ。
それに、この雰囲気、アークコボルトっていったとこだろうな。
まあ、我の敵ではないがな!
この時、レイドはようやく、理解した。自身の心を熱くした感情、それは・・・
歓喜だ!
そうか!我は喜んでいるのか!
むろん、アクア様の御御所を土足で踏み荒らしたことへの怒りもある。
だが、それ以上に偉大なる御方より賜った力で忠義を示せる!
そのことが嬉しいんのだ!
レイドは笑う。
もはやレイドの頭には、この供物をどう殺し、アクア様に忠義を示すのか、それ以外は無かった。
コボルトは、吐き捨てたくなる気持ちを何とか抑える。
目の前のゴブリン、原因はそれだ。
体格から考えて、恐らくはホブなのだろう。
だが、所詮はゴブリン!
しかも、一線すら超えていない雑魚だ!
そんな小物が、このアークコボルトに牙を剥く。どころか、勝てると思いあがっている!
コボルトは自身の内に怒りと屈辱が渦巻いていくのを感じた。
****************************************
私の名前はレンカ、偉大なるコボルトの王、ザスター様により名を貰った存在だ。
ザスター様の手足たる八人将、その中でも三体しかいないネームドの一人、その自負はある、アークコボルトの中でも強者である自負もだ。
だが、これは何だ?
ゴブリン?
いや!違う!
これはゴブリン程度ちんけな存在が有せる魔力ではない。
レンカは連れの二人に目を送る。
その顔は屈辱にゆがみ、怒りに震えていた。
馬鹿が!分らんのか!この魔力が!
はあ~
落ち着け。無能のことなど考えても意味など無い。
この瞬間レンカは、二人のコボルトを切り捨てた。
だが、レンかにとっては、それは当然のこと。レンカの任務は、この二人のお守りをする事ではないのだ。
この脅威をザスター様にお知らせる、それが今のレンカの最優先事項だ。
もしかしたら、今も共有する瞳を使っているかもしれない。
だが、使ってない、その可能性が万に一つでもある限り、この情報を伝えなければならない。
そう考えレンカは足を下げ、逃げる準備をする。
「それは困るな。・・・逃げられては面倒だ。」
「・・・・・・っ!」
逃がす気はない、と言うことか。だが、
はい、そうですか!と受け入れられる事ではない。
それに、こちらは三人。あの二人を囮にすれば・・・・
そんなレンガの考えが分かったのか、レイドは心底馬鹿にしたような笑みを作る。
「無知とは哀れなものだな。」
レイドは無造作に横に手を振った。
「は?・・・・・」
何が起こった?
いや、分かってはいる、分かってはいるが、それを信じられるかと言えば、また別の話。
だってあり得ないだろ?
手を振った、それだけでアークコボルトが吹っ飛んだのだ。
自身と同格の存在が・・・・・
死神。まさに今のレンカにとってレイドはそれだった。
虐殺が始まった。
「いや、あり得ないだろ・・・・。」
これが俺の偽らざる本心だ。
明らかにゴブリンに許された力を超えている。
アークコボルトが雑魚に見えるほどだ。
てか、あいつこんな強かったの・・・
そりゃ、自信もあるは。
しかし、そうとも知らずに結構偉そうな態度をとってしまったような。
いやいや、大丈夫だ。なにせ俺はアクア様なんだからな!
アクア様って誰だよ?
そこら辺は深く考えないようにした。
そして俺は取り敢えず自分の強化でもしよっかなあと考えたのである。