01話 もしかしてあれなのか?
暗い・・・・
狭い・・・どこだここ?
おいおいおいおい!これは拉致監禁ってやつか?
不味いんじゃないの?これもしかして不味いんじゃないの?
そこでふと、思い出す。
そうだったな。俺は真奈さんを暴走バイクから庇って引かれたんだった。
え?てことは、ここ病院か?
いや、それは無いな。不快的すぎる。
その近い線で考えるなら・・・・精神病棟か?
つまり、俺はバイクで引かれたショックで精神疾患をきたしたと。しかも、ここまでされる程の・・・
おいおい、勘弁してくれよ!魔法使いどころの騒ぎじゃないぞ!
いや、待て!手足の感覚はある。まだテンパる時間じゃないかもしれない。
俺は一先ず落ち着いた。
先ずは現状確認だな。
触覚・・・・・なんかごつごつしてるぞ。
嗅覚・・・・・埃っぽいな。
味覚・・・は分からんが、多分大丈夫なはずだ。
聴覚・・・・・これも大丈夫だな。
視覚・・・・・薄っすらと見える気がしないことも無い。
まあ、こんなとこだな。
ちなみに今俺はごつごつとした箱のようなものにいる気がする。
これらの事実を鑑みてギリギリのリアリティーを持って考えるとだな・・・・
棺桶だな。ほら火葬前のあれだよあれ・・・・・・・・・・
待て!少し待て!少し所間をくれ!
これは本気で不味いのではないか?
もしかして、焦る時間は遙か前に終わっているのではないか?
てか、御袋心肺停止ぐらい確認しろよ!
脱出を試みる。
開かない!全く開く気がしない!
なんか重い物で蓋をされてるみたいだ・・・・
これは非常に不味いぞ!勘違いで火葬とかたまったもんじゃないよ!
俺は試行錯誤を繰り返した。
あれから一週間ぐらいたった。
以前俺は箱の中だ。火葬されることも無く、無事生きているのだが、これはこれで辛いものがある。
人間は暗闇に72時間以上いると発狂すると聞いたことがあるが、そんな予兆も見られない。
代わりという訳だは無いが、俺は大変な空腹に苦しんでいた。
この箱食えるんじゃないか?
そんな危ない思考に染まりかけた時・・・・
ギギギ――
箱の開く音に俺の感覚が全て注がれる。
次の瞬間、俺の視界は強烈な光に白く染まった。
暫くして俺の視界が色を取り戻す、同時に俺の顔は色を失った。
視線の先にあるもの、それは・・・・・
全裸だ。全裸の者共が平伏している。
俺は後ろを振り返る。俺以外の者は立っていないようだ。
俺が崇められてるのは間違いなさそうだな。
何考えてんだこいつら?
自慢じゃないが、俺は人に崇められる様な人間じゃない。
それに、この空間も可笑しい。
ランプで照らされた薄暗い場所。俺がいた白い棺。祭壇の様な物がある。他はこれといって何も無い殺風景な場所だ。
邪神降臨とかやって喜んでそうな雰囲気である。勿論目の前の者は狂信者役だ。
しかし、それはいい。
こいつら、間違いない、この外見は――――――――
ゴブリンだ!
認めたくは無いが俺はゴブリンに崇められる存在になったようだ。
とはいえ、少し嬉しいのも事実。ゴブリンとはいえ、あの空間にいるよりは百倍ましだからな。
外見もそれを助けている。
いわゆる伝承で語られるこの世の全てを恨んでいるような顔では無く、もう少しプリティーな感じだ。
まあ、ゴブリンはゴブリンだが。
「それで、ここは何処なんだ?」
答えを期待してのものじゃなかったんだが・・・・
「おお!なんと!なんと神々しいお声だ!」
すごい流暢な日本語が返ってきた。いや、日本語なのか?
しかし、会話は出来るようだ。
俺は少し嬉しくなった。
ちなみに、一言にゴブリンとは言ってもその大きさは差異がある。
7人は1メートル前後。
しっかり食ってんのか?と、心配になるぐらいの体型だ。
残りの3人は少し大きい。
小さい方から140、140、150ぐらいだ。
顔?
ゴブリンの顔なんて分かんないよ。
性別はかろうじて分かる程度だ。
全く関係ないが、俺は140くらいの少年だと辺りをつけている。
「それで?ここは何処なんだ?誰でもいいから教えてくれ!」
答えが返ってこなかったので、俺が再び聞くと一番大柄なゴブリン、男?が恭しく礼をした。
「はっ!僭越ながら我が説明させて貰います。」
なるほど、・・・
ここは迷宮である。
俺はこのダンジョンのマスターらしい。
地理的に言えば森の中。
人間国家とは多少離れているが決して来れない距離ではないらしい。
こんなとこだな・・・・
これは・・・・もしかしてあれなのか?
いわゆる、あの・・・・・異世界転生!